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基地返還跡地で繰り返される
化学物質汚染問題


池田こみち
掲載月日:2013年6月22日
 独立系メディア E−wave


 沖縄は、現在、ヘリパッドの建設をめぐり、ヤンバルの森に囲まれた東村高江地区で連日、住民と行政(沖縄県、国)が緊迫した状況となっている。戦場を想定した実地訓練のため、低空飛行するヘリコプター、オスプレーによる離発着訓練は地域住民から静穏、安全な生活を奪うとして大きな問題となっている。

★やんばる東村 高江の現状
http://takae.ti-da.net/e4722154.html

 そこは、第二次大戦後の占領期に、ベトナムを想定した実地訓練として、枯れ葉剤を散布し、密林の中に建設された民家をねらい打ちする訓練も行われたところである。最近になって、ヤンバルの森だけでなく、沖縄の各地の基地内及び周辺の谷や海浜に、枯れ葉剤(Agent Orange等)がドラム缶ごと投棄されたり、流されたりしたことが明らかになり、大きな問題となっている。これについては、既に報告した通りである。私は地元の依頼を受け、現地を視察した上で市民団体との協議を踏まえ、意見書をとりまとめた。

◆池田こみち:米軍による沖縄県内における枯葉剤問題への適切な対応についての意見書(2012年3月14日)
http://www.eritokyo.jp/independent/ikeda-col1118...html

 さて、今回の本題だが、去る6月13日、沖縄市内の嘉手納基地返還跡地でサッカー場を整備中、ゴールポストの設置のために地面を掘ったところドラム缶が15本発見されたというニュースが在沖メディアが一斉に報じた。以下、琉球新報・沖縄タイムスの記事と琉球朝日放送の報道を紹介する。

★琉球新報・地中からドラム缶 異臭、米軍遺棄物か 沖縄市2013年6月15日
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-208046-storytopic-1.html

★沖縄タイムス・サッカー場地中に異臭のドラム缶 沖縄市
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-06-16_50532

★琉球朝日放送報道部:沖縄市ドラム缶発見 今週中にも土壌汚染調査へ 2013年6月18日 18時35分
http://www.qab.co.jp/news/2013061844071.html

 このニュースを知った地元NPO(沖縄生物多様性ネットワーク)の河村雅美さんは直ぐに動いた。以前、北谷町で同様の事件があったが、北谷町や沖縄県が適切な調査も行わず、情報も開示しないまま焼却処理したことがあり、同じ轍を踏ませないためにも、すばやく市民の声を行政やメディアに届ける必要があったからだ。

 新聞には当初報道されていなかったが、そのうち1本にはベトナム戦争当時、化学兵器の枯れ葉剤を作っていた「ダウケミカル社」の社名が書かれてたこともあり、周辺住民は、発見されたドラム缶以外にも米軍が投棄した薬剤や枯れ葉剤が土壌に残留しているのではないか、また、PCBなどその他の化学物質の混入も考えられるとして、事前に第三者機関や市民参加を得ながら十分調査計画を練り、調査を行うことが必要であると訴えた。また、沖縄市議会もすぐに動き、適切な調査と原因究明などを求めた。

 筆者も電話やメールで河村さんと連絡を取り合い、調査についての基本的な考え方についてアドバイスを行った。以下は、最終的に21日にNPO側が記者会見を行い関係機関に提出した要請書である。

★沖縄・生物多様性市民ネットワーク:
 沖縄市諸見里サッカー場工事現場のドラム缶の件について
 -専門性と透明性を備えた調査の実施を求める要請- 2012年6月20日(PDF)


★琉球朝日放送:沖縄市ドラム缶 問題次々に…第三者調査求める声も 2013年6月21日 18時31分
http://www.qab.co.jp/news/2013062144184.html

 一方、沖縄市議会などの要請もあったためか、沖縄市と沖縄県は早速週明けの24日にも調査に入るとの連絡が現地サイドから入った。このままではまた北谷町の二の舞となるため、調査を発注した仕様書などの提供を求めるように連絡したところ、市議経由で以下の情報が得られた。

<調査項目>
1.件名:土壌分析費 内訳明細書
  A土対法溶出試験25項目 四塩化炭素他第一種指定項目
   第二種指定項目、第三種指定項目  各3検体

2.件名:土壌分析費 内訳明細書
  B土対法含有試験9項目  カドミウム及びその化合物他全9項目 各3検体
  Cその他含有試験4項目 ダイオキシン類、油臭、油分、油膜  各3検体

3.ドラム缶(内容物/付着物)
  分析項目 油分
       油臭
       油膜
       ダイオキシン類
       2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)
       2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸(2,4,5-T)

 しかし、これらの情報は、業者が行政に提出した見積書の一部であり、最終的にどのような業者選定手続き(指名競争入札か随意契約か)が行われたか、また、コストはいくらかについては、伏せられていた。仮にも公金で行う事業であれば、これらすべてを明らかにする必要があるのは言うまでもない。

 このままでは、再び、北谷町でのドラム缶発見時と同じ「お茶濁し」「アリバイ作り」の調査に終わってしまう可能性が高い。こうした事態に際して、専門的な知見や経験を持たない市町村に対して、適切なアドバイスを提供できる体制の構築が必要であり、何よりも地域住民や要請書、意見書を提出しているNPOの参加の下で議論や検討が行われるようなルール化がまずは必要なのではないだろうか。そうでなければまた公金が無駄に支出されることになる。住民はなんども騙されることはない。

 今回のような調査方法では、汚染があった場合でも、ほとんどの項目がND(不検出)となるか、検出されても微量であり、法律で定められた基準値(指定基準)を超過しなければ、汚染なし、問題なしとされるおそれがある。

 調査の目的や方法、分析項目などの検討については、改めて、一定の時間をかけて協議の上実施されることを望みたい。