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瓦礫処理費用の検証は不可欠

池田こみち
掲載月日:2012年9月9日
 独立系メディア E−wave


 3.11から1年半を目前に、9月9日、NHKスペシャルは「追跡 復興予算19兆円」と題して、復興予算に群がる各省庁の火事場泥棒ぶりの一端を暴き出した。その中で、瓦礫処理費について、時間を割いて調査した結果も報告された。

 その内容は、夕方7時のニュースでも以下の通り、詳しく報じられていた。NHKスペシャルの中から、ニュースとして取り上げた部分は、この間、広域処理をめぐり、全国的に関心が高かかった瓦礫処理費の部分である。

 このニュースのポイントは、図に示したように、岩手県及び宮城県が瓦礫処理を業者に発注した際の処理コストが被災市町村ごとにどれほど違うかに注目し、最も処理費が高かった岩手県大槌町(97000円)と最も安かった宮城県東松島町(9600円)では、10倍もの差があったという点である。


図 岩手県・宮城県内の被災地域別 トン当たり瓦礫処理費用の比較
出典:NHKニュースよりERI作成

 震災瓦礫の処理は復興の長い道のりの最初にやらなければならない重要な仕事であるとして、環境省は23年度及び24年度の2年度で1兆円以上の予算を確保し執行してきた。しかし国の補助金を実際に現場で執行する自治体によって、税金の使い方に対する意識、対応が大きく異なり、最終的に10倍もの差が生じたと言うのである。

 筆者らは瓦礫の広域処理の問題点を指摘する中で、コストの問題は極めて重要であり公正かつ合理的な税金の使われ方が為されているかどうかのチェックが必要であることを繰り返し指摘してきた。

 以下のニュースでは、瓦礫の広域処理に拘わるコストの問題(ゼネコンへの発注が瓦礫推定量の大幅な見直しが行われる前に行われたことや、北九州や東京、静岡など関東、それ以西に輸送される際のコストの問題点等)には触れていないものの、ようやくメディアとして瓦礫処理のコストにも注目し始めたことを示している。

 NHKスペシャルでは復興予算19兆円の四分の一は復興とは直接関係のないところで使われている実態を浮き彫りにしたが、瓦礫の処理においても税金で行われる事業である以上、どのような発注の仕方、処理の仕方をすれば最も効率的に処理ができるのか、について予め自治体、地元企業、国などがしっかり協議し必要なルールを作るべきだったではないだろうか。

 既に1兆円以上が支出されているが、増税を伴う復興関連事業である以上、今からでも徹底的な瓦礫処理コストの精査、検証が行われ、不正や違法が明らかになった場合にはその責任を明らかにし、取り戻すというプロセスが不可欠なのではないか。

NHK がれき処理費用 自治体間で10倍の差
9月9日 17時44分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120909/t10014896001000.html

東日本大震災からまもなく1年半がたちますが、復興の妨げとなる震災で発生した大量のがれきについて、処理費用が分別方法の違いなどによって自治体の間で大きな差が出て、最大で10倍の開きがあることがNHKの調べで分かり、国は、「改善すべき要因があるかどうか検証は必要だ」としています。

震災で被害が大きかった岩手、宮城、福島の3つの県の沿岸部では合わせて2758万トンのがれきが発生したと推計され、先月末までにおよそ73%に当たる2014万トンが仮置き場に運び込まれて処理が進められています。NHKは、原発事故の影響でほとんど処理が進んでいない福島県を除いた、岩手県と宮城県の沿岸部にある27の市町村で、すでに使われたり、今後、見込まれたりする費用などから、がれき1トン当たりの処理費用を調べました。

その結果、1トン当たりの処理費用の平均は4万5000円余りと、およそ2万2000円だった阪神・淡路大震災の2倍を超えていました。各自治体ごとの処理費用を見てみますと、岩手県大槌町が9万7000円と最も高く、次いで岩手県田野畑村が8万5000円、宮城県石巻市が7万1000円でした。

これに対し、宮城県東松島市では9600円と最も安く、最も高かった大槌町と比べて10倍の開きがありました。費用が高くなった理由について23の自治体では、震災直後に大量のがれきを一刻も早く撤去しようと、解体現場などから十分に分別しないままがれきを集めたことで、仮置き場での分別が必要になり人手がかかるうえ、新たに機械を導入しなければならず、多額の経費がかかったということです。

さらに、震災発生当初、27のすべての自治体が業者の選定に入札を行わず、随意契約を結んでいて、業者に対し、適切な処理費用が支払われたかどうか多くの自治体で十分チェックできていなかった可能性があるということです。このため、27の自治体のうち15の自治体では、業者の選定に入札を導入し、透明性を高める取り組みを進めています。

がれきの処理について、震災の復興に向けた予算として、昨年度と今年度でおよそ1兆円が充てられていて、がれき処理を監督する環境省廃棄物対策課の山本昌宏課長は「どういう差が出ていてどういう要因によるのかは十分把握できていない。改善すべき要因があるかどうか検証は必要だ」と指摘しています。

費用の違いはどこから

被災地で最も多い426万トン余りのがれきが発生した宮城県石巻市は、1トン当たりの処理費用が7万1000円と3番目に高くなっています。石巻市では、解体現場などから十分に分別しないままがれきを集めたことで、多額の費用がかかったうえ、分別を待つがれきから発生した大量のハエを駆除する費用などもかかり、がれき置き場の管理費用だけで昨年度、およそ40億円がかかっています。

さらに震災発生直後、入札を行わず、処理業者と随意契約を結んでいた石巻市は、業者からの請求を十分、チェックできていませんでした。業者が費用を請求する際に、市では、がれきの処理が間違いなく行われたことを確認するため、現場で撮影した写真や作業員の名前が書かれた資料を提出するよう求めていました。しかし、別の現場にもかかわらず同じ写真が提出されていたり、名前が書かれていないなど、多数の業者でずさんな報告が見つかりました。

市では、震災の混乱のなか、資料の内容を細かくチェックできず費用が適正に支払われなかった可能性があるとして、業者の資料の見直し作業を進めています。石巻市災害廃棄物対策課の三浦智文課長は「正確なチェックだったりあるいは不備を見つけて業者を指導するといういとまもなかった。時間もかかるし通常業務から手は割かれますけど欠かせない仕事だ」と話しています。

これに対し、27の自治体の中で最も低く費用を抑えていた宮城県東松島市は、419万トン余りのがれきが発生しました。東松島市は、9年前に起きた震度6強の地震の際、がれきの分別を後回しにしたことで処理費用が当初の予想の1.5倍に膨れあがったということです。

このため、解体現場で分別を済ませたことで、がれき置き場の管理にかかる費用が、およそ5億円と石巻市の8分の1に抑えられています。さらに東松島市では、各業者が請求書をいったんすべて建設業協会に提出し、協会が請求内容をチェックしたうえで市役所に提出し、費用を抑える取り組みを進めたということです。

東松島市の大友利雅市民生活部長は「全国の皆さんがご負担しているということになるので、われわれは1円でも安く処理を終わるせることが使命というふうに考えている」と話しています。

自治体別の処理費用
▽岩手県大槌町が9万7000円で最も高く、
▽次いで岩手県田野畑村が8万5000円、
▽宮城県石巻市が7万1000円、
▽岩手県大船渡市が6万9000円、
▽宮城県気仙沼市と宮城県南三陸町がいずれも6万円、
▽宮城県塩釜市と岩手県山田町がいずれも5万5000円、
▽宮城県亘理町が4万9000円、
▽岩手県宮古市が4万8000円、
▽宮城県七ヶ浜町が4万5000円、
▽岩手県陸前高田市が4万3000円、
▽宮城県名取市が4万2000円、
▽宮城県多賀城市が4万1000円、
▽岩手県洋野町が4万円、
▽岩手県野田村と宮城県女川町がいずれも3万8000円、
▽岩手県普代村が3万7000円、
▽仙台市が3万5000円、
▽宮城県岩沼市が3万3000円、
▽岩手県久慈市と宮城県山元町がいずれも3万1000円、
▽宮城県松島町が2万9000円、
▽岩手県釜石市が2万7000円、
▽岩手県岩泉町が2万2000円、
▽宮城県利府町が2万1000円、
▽そして、宮城県東松島市が9600円

と最も低くなっています。