|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
民主党政権樹立直前になってメディア各社の「八ッ場ダム」詣でが始まっている。報道内容はNHKから民報各社までほぼ同じ、民主党の「中止」政策に対する一方的な批判、逆に言えば、自民党の広報的な内容となっている。 ・既に3200億円が支出されている。 ・完成までに必要な予算は1400億円程度であり、止めた方がもっとお金がかかる。 ・関係自治体の知事がすべて推進賛成である。 ・中止すればこれまでに支出した分についての返還請求をすると言っている。 ・工事はほとんど7割方できあがって「完成寸前」なのにもったいない。 ・地元は56年間、国に翻弄されてきてやっと新しい生活ができると完成を待っている。 ・推進協議会が結成された。 ・三世代に渡り振り回され、今更戻れない。すでに地元を出て行った人もいる。 ・・・などである。 TBS JNN 2009.9.10 しかし、八ッ場ダム計画に当初から反対してきたグループもあり、すでに各県の市民団体が裁判を提起し、現に争っている最中である。その中で水需要、過去の災害との関係など必要性、妥当性の問題など具体的な根拠、データをもって指摘されてきた様々な問題点については、一切触れられていないし、それらの運動を支えてきた中心人物、弁護団などへのインタビューも一切無い。第三者的な立場からの学者の意見も聞いていない。 各社が持ち出している「これから完成までの費用は1400億円程度」は、何を根拠にしているのだろうか。出所はどこか。この事業の当初の予算はおよそ2110億円だったが、結局事業が長引いた結果、二倍以上の巨費が投じられ未だに完成していないという体たらくである。七割方の工事が終わったと言うが、終わりかかっているのは道路と鉄道の付け替え工事であり、ダム本体はこれからが本番でまだ着手したばかりだ。 表1 当初予算がその後大きく修正された事業のリスト
批判されるべきは56年間もずるずると工事をひきずりその間に甘い汁を吸ったのはどれほどの土木工事業者であったのか、そうした政策を無責任にも地元に押しつけ一部の産業や事業者にのみ利益を与えてきたのはいったい誰なのか、まさに今回こっぴどい批判を受けた自民党そのものなのである。 民主党は「地元の生活再建はセット」で中止を訴えている。当然である。ふるさとがダムの底に沈まずにすむし、新しい土地に移転して生活再建すればいいし、伝統ある温泉も今のまま再建していけばいい。それくらいの手当は当然考えているし、するのが当然の義務でもある。 民主党政権が実現しそうになるまで、どれほどのメディアが地元の苦悩や代々の闘いについて現場で取材し報道してきたというのだろうか。怠慢そのものである。こうした一方的なメディアの報道姿勢こそ厳しく問われなければならないだろう。およそメディアとか報道とは言えない、浪花節的なアプローチは国民を惑わすだけでなく間違った方向に誘導することになり、まさに害悪そのものである。 |