エントランスへはここをクリック!  

沖縄の森:やんばるを訪ねて


池田こみち 

環境総合研究所副所長
環境行政改革フォーラム副代表


掲載年月日:2009年2月25日 無断転載禁
独立系メディア「今日のコラム」


 本特集では、2009年2月13日(金)から15日(日)に行った武蔵工業大学環境情報学部(この4月より東京都市大学環境情報学部)の青山研究室と株式会社環境総合研究所による合同沖縄県現地調査についてその概要を報告する。   

 私にとって沖縄本島を訪れるのは二度目、といってもほとんど初めてと言っても良い。

 一回目は、宮古島の産廃処分場が違法操業により火災を起こした事件(沖縄県宮古島産廃処分場損害賠償事件)に関連して、沖縄県庁と沖縄地方裁判所に原告側住民のみなさんと一緒に訪れた時である。

 今回の視察は短時間にほぼ沖縄本島の全島を周り環境面はもとより、沖縄が現在抱えている様々の問題を目の当たりにすることができ、非常に貴重な機会となった。

 その中で、はじめて見た沖縄本島北部国頭村に広がる「やんばるの森」は、沖縄の青い海よりも私の心にしみわたり、強く引きつけられるものがあった。

 私たちは沖縄本島東側の県道70号線を辺戸岬に向かって北上し、途中から国道58号に繋がって辺戸岬を経由して南下するというルートを選択した。


本地図は2009.2.13−15の現地調査で訪問した箇所を地図上に示しています


出典:グーグルマップ

 特に東側の県道は、これまでにも多くのヤンバルクイナが路上に飛び出し交通事故にあった地点が多いと聞き、心の底では「絶対に引かないからひょっとして飛び出してくれないかな」などと期待を抱いたりした。


やんばるクイナの写真
出典:環境省やんばる野生生物保護センター


やんばるの森
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10


県道周辺の森には飛び出し注意の標識がある、
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10


県道周辺の森には飛び出し注意の標識がある、
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10
本写真は2007年2月現地調査時に撮影したものです

 予想通り飛び出しはなかったが、道路の両脇に広がる亜熱帯の緑の森は深く、時々車を止めると、いろいろな鳥の声がにぎやかに聞こえてきて森の息吹が感じられた。

 今回は時間の制約がありじっくりと森を探索することが出来なかったが、次回は是非、森の生物に会いに行ってみたいと思っている。


クイナが交通事故で倒れている写真
出典:環境省やんばる野生生物保護センター


やんばるクイナ事故が起きた箇所
1997年〜2007年
出典:環境省やんばる野生生物保護センター

 辺戸岬で海の眺めを堪能して国道を南下していると、「やんばる野生生物保護センター」という看板が目に入り、さっそく訪れてみることにした。



 国道から少し山側に入った森の裾にその施設はあった。


環境省やんばる野生生物保護センター
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10


環境省やんばる野生生物保護センターの看板の前で
左が筆者(池田こみち)、右は青山貞一
 撮影:鷹取敦

 中にはいると、女性職員が奥の事務室から出てきて、「何か用?」といった表情で私たちを迎えてくれた。見学者だとわかると、カウンターに置いてあったパンフレットを1部(三人なのに)だけくれて、「勝手に見れば」という態度を示した。

 冬のこの季節、訪れる客も少ないようだったが、せっかくの来訪者への対応としてはあまりにもそっけなかった。


 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10


 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10

 仕方なく、私たちは、非常に時代遅れな感じが否めない展示物を一通り見て回り、ヤンバルクイナやその他のやんばるの森の生き物たちの剥製にも会うことができた。

 ヤンバルクイナの交通事故死や野良猫から守るための啓発活動などが行われている様子だった。

  ■パンフレットデジタル版(もらったもの)
   

 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10


 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10

 私たちはこれまでアメリカやオーストラリアの自然保護センターを多数訪れているが、これほど素っ気ないというか、やる気の感じられない施設はなかったように思う。国内にはこの種の野生生物保護センターが8カ所あり、沖縄にはやんばる野生生物保護センターと西表野生生物保護センターがあるようだ。

 ※青山貞一氏は大学の調査研究で3月下旬に石垣・西表島を視察予定

 やんばる野生生物保護センターはヤンバルクイナだけでなく、やんばるの森の生物や生態系の保護を担い、調査研究とともに広く地域住民や来訪者に対して情報提供、教育を行う拠点となっているはずである。こうした施設のあり方について、地域との連携、NGOとの連携、情報発信のあり方や来訪者への接し方など改善すべき点が多いと感じた。

−−以下関連情報

◆各地にある環境省の野生生物保護センター
釧路湿原野生生物保護センター
北海道海鳥センター
猛禽類保護センター
佐渡トキ保護センター
対馬野生生物保護センター
奄美野生生物保護センター
やんばる野生生物保護センター
西表野生生物保護センター

◆国立公園・野生生物ライブ映像
 地図上の見たい地点をクリックすると今の現地の様子が定点カメラの画像で見られます

◆ようこそやんばるへ
このホームページは、沖縄本島北部3村(国頭村・大宜味村・東村)、いわゆる「やんばる」と呼ばれる地域についての紹介や環境省が行った調査の概要、それから現在行っている調査(やんばる地域保全整備計画策定調査)による「やんばる地域住民ワークショップ」の概要報告を行うものです。 人も自然も元気な「やんばる」をどうぞご覧下さい。

◆ヤンバルクイナ
ヤンバルクイナは,1981年に新種の鳥として発見され世界中の学者の注目を集めましたが,地元では,それ以前から「アガチャー(せかせか歩く人のこと)」と呼ばれ,その存在が知られていました。世界的にクイナの仲間のうち飛べないものは,人間が他の地域から持ち込んだ移入種等によって,絶滅したり絶滅の危機に瀕したりしています。やんばるでも近年マングースやノネコの姿が目立つようになってきており,ヤンバルクイナもその存続が心配されています。環境省では現在,ヤンバルクイナの効果的な保護対策について検討しています。
http://www.sizenken.biodic.go.jp/pc/live/camera/41/kanren/2/kanren.html