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沖縄県にみる
産廃安定型最終処分場の課題


池田こみち

2008年5月21日 無断転載禁


 沖縄県読谷村にある民間の産廃処分場から有害物質であるクロルデンが検出された。この調査は、地元住民からの依頼で私たちの環境総合研究所(本社、東京都品川区)がラボに依頼して分析したものである。

 クロルデンは、1986年、今から20年以上も前に製造・輸入が禁止されている。しかし、沖縄ではシロアリの被害も多いことから、依然として使用されているという話も聞く。

 また、沖縄本島のテラピアやボラから国内調査の中では突出して高い濃度のクロルデンが検出されたことが、愛媛大学と琉球大学の共同調査で分かったというニュース(琉球新報)も昨年報道されている。

 実際、環境省がとりまとめている「化学物質環境実態調査(平成17年度版)」(最新版)から、全国の底質の測定結果を見ると、那覇港の底質中のクロルデンの濃度が特に高いことがわかる。

 ちなみに、平成17年度調査では、底質を測定した全63地点(河川と港湾を含む)の内、那覇港がトップの濃度である。ここでは、cis体とtrans体について見てみよう。

単位:pg/g-dry

               検体1   検体2    検体3

cis-クロルデン      6,400    18,000   32,000
trans-クロルデン    4,000    11,000   44,000
----------------------------------------------
  合計          10,400    29,000   76,000

 単位を変換すると、それぞれ、10.4μg/kg、29μg/kg、76μg/kgとなる。今回の土壌の測定値は検体を上回る93μg/kgであったのだ。(但し、底質と土壌の違いは考慮する必要があるが。)

 今回の調査から、安定型処分場に本来持ち込んではいけない廃棄物が持ち込まれている可能性があると、周辺住民の間で不安が広がっている。仮に、埋め立てられた廃棄物が安定5品目であったとしても、それらの中に、少なからずシロアリ駆除剤を含む廃棄物が混入していたことは容易に想像される。

 住民の要請により、事業者も調査に乗り出し、県もその成り行きを注視しているが、今回の事例は、操業の違法性の問題とは別に、そもそも安定型処分場という埋立そのものが非常に不安定かつ危険であることを裏付けるものである。

 沖縄という地域特性からシロアリ駆除剤の使用が他の地域に比べて多いことが把握されていれば、当然、建設廃棄物にはそうしたものが付着したまま埋め立て処分されるい可能性が高いことを考慮した処分場の監視・指導が必要となる。

 沖縄県内には海に隣接して立地している安定型処分場も多数あることから、沖縄県は処分場の許認可権者として、まだ指導監督責任者として、こうした問題に一層の注意を払っていくことが問われている。

 以下は、この問題を大きく取り上げている沖縄県内各紙の記事。


沖縄タイムス 2008年5月20日(火) 朝刊 1面
処分場に高濃度毒物/読谷村 全国平均の1150倍
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805201300_02.html

 【読谷】読谷村座喜味で民間業者が経営する安定型産業廃棄物最終処分場で採取された水から、環境省が調査した化学物質全国平均値(二〇〇五年度)の約千百五十倍に当たる有毒物質の「クロルデン」が検出されていたことが十九日、分かった。東京都の民間検査機関の検査で判明した。住民は「汚染原因を即時に突き止め、除去してほしい」と訴えている。一方、業者側は「二十日に検査機関に調査を依頼し、実態を把握したい」としている。クロルデンはシロアリ駆除剤や農薬などに使われていたが一九八六年に国内の製造、輸入が禁止された。

 民間業者が安定型処分場隣で計画している、管理型産廃処分場の建設に反対する住民らが四月四日に業者立ち会いの下、処分場内の水と土壌を採取。「環境総合研究所」に依頼していた。

 分析によると、水一リットル当たり、最大で全国平均値の約千百五十倍となる〇・〇九マイクログラムのクロルデンを検出。微量だが別の有毒物質の六価クロムも検出された。土壌からも、環境省が全国の海や川底などの土や砂に含まれるクロルデンを調査した平均値の約四百倍が検出されたという。

 同研究所は「水、土壌ともに高濃度で、汚染が広がれば極めて危険な状況となる。早急に広範囲の調査が必要」としている。住民側は「安定型の受け入れ品目(金属くずなど)外の木くずなどが違法に処分され、残留していたクロルデンが検出された可能性がある」とし、県や業者に詳細な調査を求めている。

 業者側は、受け入れ品目外は処分していないと強調。その上で「(住民側の調査が)適正に行われたかどうか疑問が残る。第三者を交え、われわれと住民が同時に検査する必要があるのではないか」としている。(福里賢矢)


沖縄タイムス 2008年5月21日(水) 夕刊 5面
「住民の不安大きい」/読谷・有害物質で県に調査要望
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200805211700_01.html

 読谷村座喜味で民間業者が経営する安定型産業廃棄物最終処分場で有毒物質の「クロルデン」が検出された問題で、池原栄順副村長が二十一日午前、県庁を訪れ、「住民の不安が大きい。ぜひ早期に県独自の立ち入り調査を実施して原因究明してほしい」と要望した。県環境整備課の安里健課長は「業者のサンプリング調査の分析も見ながら、必要とあれば実施したい」と回答、現時点での立ち入り調査実施は明言しなかった。

 同問題は、同業者が処分場隣で計画している管理型産廃処分場の建設に反対する住民らが今年四月、業者立ち会いの下、処分場内の水と土壌を採取し、東京都の民間検査機関に検査を依頼していた。検査の結果、水一リットル当たり、最大で〇・〇九マイクログラムのクロルデンを検出した。

 池原副村長は「同処分場では、以前にも規定外の廃棄物が搬入されていたり、住民と村の立ち入り調査でにおいのあるガスの発生も確認した」と懸念。こうした不安を解消するため住民が独自の費用で実施した検査でクロルデンが検出されたことに対し、「検査結果を重く見ている」と話した。

 同業者が、安定型処分場隣に新たに管理型処分場の建設を計画していることについて、「県として慎重に対応してほしい」と求めた。

 安里課長は「本日、県衛生環境研究所も同席して開く会合の中で、対応を検討していきたい。必要とあれば立ち入り調査を実施したい」と述べた


琉球新報 2008年5月21日朝刊
土壌、水から有害物質 読谷・民間処分場
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-132312-storytopic-1.html

 【読谷】読谷村座喜味で民間業者が経営している安定型産業廃棄物最終処分場の土壌と水から、有害物質の「クロルデン」が高濃度で検出されたことが周辺住民の調査で20日までに分かった。読谷村は21日、県に詳細な調査を要請する。県環境整備課は20日、近く立ち入り調査を実施することを決めた。

 業者が隣接地に建設を予定している管理型産廃最終処分場に反対する「管理型産業廃棄物最終処分場建設反対実行委員会」(阿波根直則実行委員長)の住民らが4月4日、業者立ち会いの下で処分場の数カ所から土壌と水を採取した。環境専門の調査会社「環境総合研究所」(東京)に分析を依頼したところ、水から1リットル当たり0・09マイクログラムのクロルデンが検出された。

 環境省がまとめた2005年度の環境中濃度の平均値と比較すると約1150倍に当たる。土壌からは1キロ当たり93・1マイクログラムのクロルデンが検出され、平均値の約400倍だった。

 クロルデンは農薬やシロアリの駆除剤に使われる化学物質。化学物質審査規制法で1986年から製造、輸入が禁止されている。

 阿波根委員長は「(搬入が認められた)安定5品目から検出されないものが出た。違法投棄されているのではないか」と話している。

 業者は20日午前、県中部福祉保健所の立ち会いの下、独自の調査を実施した。業者は「クロルデンは環境基準(で定められた調査項目)にない。すべて分析しろとなると莫大(ばくだい)な金と時間がかかる。あったかどうか疑わしい。環境基準に基づいた調査では問題ない」と話している。