環境立県 滋賀県の産廃委員会事情(1) 池田こみち 掲載日:2007年1月30日、8月22日拡充 |
滋賀県といえば、昨年、「もったいない」を合い言葉に市民派の嘉田知事が初当選し、改めて注目を集めた。 琵琶湖を抱える滋賀県は環境立県としても名高く、特に水質問題やごみ問題では、市民活動、消費者運動などが大きな成果を上げてきたことでも有名である。 しかし、そんな滋賀県が長年抱え込んできた産業廃棄物最終処分場を巡る問題がある。高濃度の硫化水素ガスが検出されたことでも全国に名高い「栗東の産廃埋立処分場問題」である。 処分場周辺住民が10年近くも県に対応を訴えてきたがなかなか動かなかったこの問題。 嘉田新知事の公約には、県としてこの問題の解決に向け着手することも含まれていたため、さっそく昨年暮れに「RD最終処分場問題対策委員会」が立ち上げられた。 同委員会の委員名簿や要綱、会議詳細は県のホームページをご覧頂きたい。 ◆RD最終処分場問題対策委員会 http://www.pref.shiga.jp/shingikai/rd/ 委員会開催風景 出典:滋賀県 ◆同委員名簿 出典:滋賀県 私もその委員会の一員として協力することとなったが、委員会はのっけから委員長の選出をめぐり大紛糾することとなったのだ。どこの県市の審議会、委員会においても、委員長はあらかじめ行政側が腹案をもっており、「段取り」どおりスムーズに委員長が選出されるのが常である。 だが、それは必ずしも好ましい「やり方」ではなく、常に行政側(事務局側)の意向が反映されたものとなりがちであり、一委員としてもあまりよい気分のものではないことは間違いない。 だが、ここでは違った。 第一回委員会において、委員長選出の議題に入ると、地元住民でもあり、滋賀大学社会学教授である早川委員が委員長に立候補を表明された。これは、事務局としては想定外だったようで、一気に段取りが崩れた格好となった。 私は、早川委員の立候補に対して、「20名の委員の中には、私を含め地元以外からも多く参加していたので、長年この件に係わってこられ事情をよくわかっている方が委員長をされることは短時間で有効な議論を進める上でもよいことではないか、他に立候補される方いなければ、お願いしてはどうか」と、早川委員の立候補を支持した。 しかし、結局、立候補は他になく、推薦もなく、その場で委員長を決めることが出来なかったのである。「事務局側に腹案があるのであれば、紹介した上で決定するしてはどうか」と向けてみたが、最後まで腹案は示されないままとなった。 結局、初対面の委員も多く、各委員の専門や考え方がわからないまま推薦はできないので、次回までに委員の紹介文書を作成し周知した上で選出方法を含め協議するということになった。 そして、1カ月後に開かれた第二回委員会(2月29日)で最終的に委員長が決まることになるが、その選出方法は以下に示すように極めて異例なものとなったのである。 前回12月末の委員会から第二回委員会の間に以下の文書が配布された。 ・委員の専門や経歴などの紹介文書の作成配布(年齢、職歴、経験、所属学会や団体名、研究テーマなど) ・委員長選出方法についての意見照会(以下の5案より選ぶ) @委員紹介書の内容を参考にして、投票により委員長を決定する A立候補を募り、投票により委員長を決定する。 B対策委員会に委員長推薦委員会を設置し、推薦委員会で委員長候補を推薦し、対策委員会で推薦された委員の中から投票又は協議により委員長を決定する。 C対策委員会に委員長の選任をゆだねる「選考委員会」を設置し、選考委員会で委員長候補を一人選考し、この委員を対策委員会が承認し委員長を決定する。 Dその他の方法(各委員が一名推薦により、多い者が委員会の承認で委員長に決定される。) 結局20名の対策委員に上記「アンケート」を行った結果、下記の通り、Cが6名と最も多かった、ということが第二回委員会の場で明らかにされ、その方法により委員長が選定されることとなったのだ。 <アンケート結果> 注)あらかじめ各委員が事務局に連絡した結果であり、その場で挙手などで決めたものではない。 @案 3名 A案 5名 B案 2名 C案 6名 D案 1名 意見無し 1名 −−−−−−−−− 合計18名(棄権2名ということか) 今日の第二回委員会では、冒頭、上記の結果が提示され、まず、対策委員の中から選考委員を選出することから始まった。確かに、多数決ということであれば、C案が6名だが、それによってまた貴重な議論の時間がなくなるのは困るので一体どのくらいの時間をかけるのか、を確認したところ、「30分以内でお決め頂きたいと考えている」との事務局の説明で、やむなく了承することとなった。 事務局側は、予め用意された「委員長選考委員会の設置要綱(案)」を配布した。準備の良いこと。 委員長選考委員会のメンバーは、住民代表委員から2名、学識経験者委員から4名が選出される、という要綱案の規定に沿って選ばれた。そして、私を含む学識経験者委員のグループでは、結局「ジャンケン」で負けた人、ということになったのだ。 ただし、選考委員の中から委員長は選出しないという規定に基づき、当初から委員長に立候補された早川氏は選考委員を外れた。私はジャンケンに勝ったので選考委員にはならなかった。 私も各地でいろいろな委員を引き受けた経験を持つが、マスコミや傍聴者もいるなか、議場でジャンケンをしたのは初めての経験だった。 そして、選考委員となったメンバーは別室に移って委員長選考の議論をはじめ、委員会は暫時休憩となった。概ね30分後、選考委員メンバーが戻り、ようやく委員長が決定したのである。 そして、委員長に選出された委員(京大の岡村教授)が委員長席に着き、副委員長の指名と専門委員の指名を行った。副委員長は福岡大の環境工学をご専門とされる樋口委員が指名されたが、本日は欠席されていた。 ただし、委員長は専門委員の指名を行わず、あらかじめ事務局が用意した「専門委員名簿」の配布を促し、それを了承する形を取った。 はたして、この一連の手続は、事務局の腹案が実現しなかった、という意味で民主的だったのだろうか。たしかにその面はあるものの、一方で、不透明な部分を残し、あまり後味のよいものではなかったことは間違いない。 今日の委員会の出席委員は20名のうち13名と少なく、欠席された方はまったく選考プロセスに関与できていないからである。また、せっかく第1回委員会の場で立候補者があり、開かれた場での投票などによる委員長選出もできたにもかかわらず、若干不透明な選考プロセスとなったことは否めない。 果たして、この委員会が今後どのように推移していくのか、透明性を確保しながら、限られた時間内でそれぞれの委員がどのような役割を果たすことができるのか、私も含め、責任が問われるところである。是非、注目して頂きたい。 なお、上記のような委員長選出に時間を要したため、まだ肝心な議論はそれほど進んでいない。これまでの経過等について、事務局からの説明が中心となっているが、地元代表委員からは県の調査結果等の説明に対して、的確な指摘が行われ、少しずつではあるが、本質的な課題が見えてきている。 つづく |