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宮古島産廃事件と
判決について


池田こみち
(環境総合研究所)

梶山正三(弁護士)

2007年4月16日


無断転載禁


 2007年3月14日、5年にわたる裁判(沖縄地裁)の判決が出た。原告団長からの報告が寄せられているが、以下に担当の梶山弁護士がまとめられた判決の概要を示す。

 本裁判は、宮古島で起きた小さな産廃火災事故を巡る裁判として見過ごすことのできない重要な意味を含んでいる。沖縄全体にかかわる問題として捉えるべき事件であり、判決である。

 日本自体も小さな島であるが、沖縄県の各島々においては、ごみ問題への適切な対処を怠った場合、致命的なダメージを受けてしまうのは自明である。産廃業者への指導監督、規制についても、沖縄ならではのきめの細かさが求められるべきである。また一般住民へのごみに対する意識、関心の持ち方についても沖縄県、市町村は一層の努力が不可欠である。

 美しい海、安全で美味しい沖縄の食材が、ごみ問題をないがしろにすることによっていとも簡単に失われていくのである。観光立県をめざす沖縄県であればこそ、このような事件がどの島でも絶対に再発しないように、県こそ、その責任を痛感し、とるべき責任を取ることがまずは必要なのではないだろうか。今回の判決で県への責任が及ばなかったことは県行政の見直しにつながらず、今後に不安が残る。

 今回の判決は、業者の責任を認めながら、県に対して「お咎め無し」はどう考えても納得できない、と思うのは原告ばかりではないはずだ。現に業者は、74回も指導を受けてきて、「県の指導に従ってきたのだから問題はないはず」と繰り返し主張してきた。一審の判決は、業者の立場からしても納得できないのではないだろうか。

 以上、文責 池田こみち


2004.9.15(平成16年9月15日)撮影
出所は宮古支庁農林水産整備課


 以下、文責、梶山正三

◆産廃業者(崎山)の責任

争点1: 出火について、崎山に過失があったか。 
争点2: 過失があったとしても、「過失による火災」について責任を否定している。 「失火責任法」の適用によって崎山は責任を負わないか。
判 決: 前者については、過失があった。後者については、結論としては原告の主張を認めた。

 認めた理由については、「判決」をご覧ください。ほぼ、当方の主張通りの認定。
 
 ●崎山事件(沖縄県宮古島産廃処分場損害賠償事件判決
 
◆損害額

 損害額を三つの要素に分けて主張。詳しい内容は、原告最終準備書面をお読みください。

 ●梶山正三:崎山事件(沖縄県宮古島産廃処分場損害賠償事件)・最終準備書面

主張1: 火災直後の避難、強い不安、煙に巻かれるなどの苦痛に対する慰謝料
主張2: 火災後約半年にわたる農作業等への支障、作業に際しての云うに云われぬ苦痛
主張3: 火災後約半年にわたる煙害などによる苦しみ。生活被害等
判 決: 認定額を主張より低くしたが認めた。
2600/5972=43.5%(認定率)



◆沖縄県の責任

原告の主張
その1: 多数の法違反の行為を見逃し、助長したことにより、処分場内に可燃性廃棄物を山積させ、かつ、日常的な野焼きの放置、中間覆土をしない状態を容認したことにより、火災の発生と拡大を招いた責任
その2: 違法行為の日常的な繰り返しの実態とそれを常時見ていた県の立場からは、遅くとも、平成12年までに、崎山に対して、本件処分場の使用禁止、産業廃棄物処理業、焼却炉の使用禁止などの行政権限の行使をすべき義務があり、その義務が尽くされていれば、そもそも本件火災は発生しなかった。
判 決: 「規制権限の不行使が著しく許容限度を超えているものとは認められない」
詳しくは、判決の46ページ以下をお読みください。何とも世間知らずの 「何も考えていない」判決です。



◆判決に対する評価

 ・崎山の責任を認めたのは、ある意味当然だが、失火責任法の適用を否定したのは評価できる。

 ・損害額については、低額ではあるが、原告の現実の苦しみを知らない裁判所の認定としてはこの程度であろうと思われます。

★今後

 原告団72名は新たに結束を固め、控訴に踏み切った。