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 市民による
松葉ダイオキシン調査が
環境賞を受賞
<愛知県春日井市>

池田こみち
26 Octover 2010
独立系メディア「今日のコラム」



市民による松葉ダイオキシン調査が環境賞を受賞:愛知県春日井市


かすがい環境フォーラムでの環境賞授賞式
出典:愛知県春日井市


 表彰状


 受賞する舟橋美鈴さん

 市民参加による松葉を生物指標としたダイオキシン監視活動は今年2010年度で12年目を迎えます。ダイオキシン問題はもう終わったとといった風潮が蔓延するなか、毎年、全国各地で清掃工場からの化学物質汚染に関心を持つ市民による調査が続けられています。

 そうしたなか、2000年度から10年間継続調査を行ってきた愛知県春日井市の市民による「松葉による大気中のダイオキシン濃度の監視活動」が、春日井市長の表彰を受けました。

 春日井市では毎年環境フォーラムが開催され、環境活動に尽力した個人・団体・企業に対し、春日井市長から表彰状が贈られています。10年間にもわたるねばり強い継続調査、地元の中学生などを巻き込んだ環境教育活動が評価されたものと思います。

 一緒に活動してきた私たち環境総合研究所にとってもとても嬉しい出来事でした。

 そこで、改めて、春日井市における松葉調査の成果を皆様にもご紹介したいと思います。昨年、地元で10周年記念集会を開催したときの主催者(今回の受賞者)の報告と、私の講演資料です。ご了承を頂きましたので公表いたします。

 参考にしていただけると幸いです。

                  池田こみち 環境総合研究所

池田こみち:クロマツが教えてくれる<ダイオキシンの10年>



 以下は受賞者の報告です!

◆報 告: クロマツダイオキシン類調査活動の10年
◆報告者: 大気グループ代表 舟橋美鈴
◆日 時: 2010年7月11日(土)午後1時〜3時
◆場 所: 春日井市総合福祉センター小ホール
        (春日井市浅山町1丁目2番地61号)
◆主 催: 春日井市民環境ゼミナール「大気グループ」


 すでにご存知と思いますが、大気グループは今年(2010年)、調査活動を始めて10年という大きな節目を迎えました。調査項目のダイオキシン類濃度は年々低下し、現在、低濃度横ばい状態で安定しています。

 そこで一度活動を見直し、再スタートさせる良い機会ではないかと考えました。後ほどご講演いただきます、池田こみち先生のお話の中からヒントを見つけ、今後の方針を決めたいと思っております。では初めに、グループ活動について「報告」させていただきますので、よろしくお願いいたします。

1. なぜ環境活動なのか?

◇私が子どもだった頃は、恵み豊かな自然と共生しながら、何の心配も無く伸び伸び育つことが出来ました。 しかし、子どもたちの世代はどうでしょうか? 快適さ・便利さと引き換えに公害病が問題となり、経済成長が叫ばれ続ける中で、地球環境はどんどん悪化していきました。 

 私は、地球が悲鳴を上げているのではないか、泣いているのではないか、病んでいるのではないか、いろいろ考えるようになりました。 特に子どもたちを取りまく環境は、有害物質が氾濫し、危険に満ちあふれた安心できない状況となり、地球の未来に危機感を抱くようになったのです。

2. なぜ調査活動を始めたのか ? 

◇10年前、春日井市が長期にわたって、環境ゼミナールを開講しました。大勢の市民が参加し熱い思い語り、意見を戦わせながら、いろいろ学びました。その中に「クロマツの針葉を分析してダイオキシンを測定する」という、大気汚染調査があることを知りました。

  私は、「ぜひ春日井の空気の汚れを知りたい!」と思いました。その当時の日本は、ダイオキシン問題真只中にあって、タイミングの良い調査でした。 またクロマツは、昔から生物指標として研究され、環境学習に広く活用されてきたことや、調査方法が比較的簡単なことから、私達にも取り組みやすい、良い方法であると判断しました。

  早速講座の中に出来た「交通と大気」グループの一員となって、2000年11月、初めて針葉採取をし、本日お招きしています、環境総合研究所副所長の池田こみち先生ご指導の下に、カナダのマクサム社に分析を依頼しました。このクロマツ測定調査は愛知県の中で、さらには中部地域におきましても、春日井が最初の調査となりました。

3. 調査方法

・ まず、東名高速道路を中心に、春日井市を東西に2分割します。 

・そして、東西それぞれの地域でバランス良く13本のクロマツを調査の木に指定 します。 

・指定した13本全体のクロマツから100gの針葉を採取し、1検体として、環境総合研究所を通してカナダの測定機関に分析を依頼するものです。

4. 調査結果 

 ダイオキシン類濃度の数値は予測をくつがえし、西部より東部が高く、しかも全国的に見た春日井の汚染度は思いの他高い位置にありました。

◇ 間違いではないのか? 信じられない結果に、私はこの時、調査をやり直したいと思いました。

◇ 調査結果が届くまでには2〜3か月かかりました。 その間にメンバーは話し合いました。 今後の調査はどうするのかと。

・見た目の環境は何も変わらない。
・環境変化は急に起こるものではない。
・連続調査は無駄  費用集めが大変だから1年おきではどうか 更には5年おきでも良いのでは・・・  そんな意見が出ました。しかし私は、人々が五感で判断できないことをクロマツが証明してくれたのだと思いました。

◇ そして次の年、私は、みんなの思いに反して2度目の針葉採取を行い分析を依頼しました。

 結果は、またまた驚きでした。東西濃度が逆転し西高・東低型になった上、数値は低下しました。

 <なぜでしょう?>

 法的な規制によって焼却炉が廃止されたり、管理が行き届いたこと、また盛んに行われていた野焼きが減少したことなどが理由でした。  

 これは、管理の重要性をクロマツが気付かせてくれたのだと思いました。

◇ 3回目の調査 予測は1度あることは2度の例え通り、3回目も何かが起きるの では? と、不安と期待を抱いたのですが、調査結果に驚くような環境変化は無く、数値は「西高・東低型」で低下し その後2008年度までに実施した3回の調査は、いずれも低濃度で横ばい状態と安定しています。

5. なぜ継続調査なのか?   

 ◇ 最初に続けた2年間のクロマツ針葉測定調査から、基本となる調査の必要性・管理の重要性を学んだことが一つ。

 ◇ また調査を始めた頃の日本は、ダイオキシン排出量が世界のトップレベルにあって、しかも全世界の半分の量を排出していることを知りました。 そして排出量の9割が焼却炉から出ていることも知りました。 更にダイオキシンの影響を最も受けやすいのが、母体の影響を一身に受ける、一番弱い立場にいる胎児や乳幼児であることも知りました。 安全でなければならないはずの母体が危険に脅かされているとは・・・・。 母となる女性の何%がこのことを知っているのだろうか? 私は叫びたくなりました。 「食事に気をつけなさいよ!」

 「食物連鎖って知ってる?」 「自然を汚せば、全て自分たちに戻ってくるのですよ!」 と。健康被害を出さないための一つの手段として、またダイオキシン汚染の監視を目的として、クロマツ針葉による春日井の大気汚染調査の継続を決めたのです。

最後に・・・ クロマツ調査から学んだこと 

(1) 数値が証明してくれる―― 見る 聞く 嗅ぐ 触る 味わう という人の五感では測り知ることの出来ない大切な数値をクロマツが教えてくれました。

(2)管理の重要性を実感した―― 焼却施設がきちんと管理を行えば環境を守ることは可能であることをクロマツが教えてくれました。

(3)地域の環境健康診断である――クロマツ測定調査は大気汚染の監視役として「地域環境の健康診断」にもなることを教えてくれました。クロマツは 「大気汚染のバロメーター」であり、クロマツ調査は「地域環境の健康診断」でもあります。

◇ 今ダイオキシン問題は影をひそめ忘れ去られようとしています。何の心配もないという教授もおられます。環境問題は多種多様、いろんな社会でいろんな人がいろんなことを言い、何を信じて良いのか見当が付きません。焼却行為が続く以上排出される有害物質は後を絶たないと考えます。

◇ これからもクロマツを信じ、またダイオキシンに変わる新たな有害物質のゆくえを追い求めていくための学習会として、このあとご講演いただく池田こみち先生のお話を拝聴したいと思います。

 これで私の報告を終わります。 ありがとうございました。