月刊ファイブナイン誌 2005年12月号

PLC問題解決と学者の
社会的役割とは!?


           青山貞一
             武蔵工業大学環境情報学部教授
 

 前号申しあげた話のつづきである。

 当該研究会には、PLCにより影響を受ける側の 代表委員としてJARL、天文台、国際無線障害特 別委員会(CISPR)、全漁協、海上保安庁、日 経ラジオ、NHKなどが、PLC推進側から三菱電 機、松下電器、本田エレクトロン、経団連などが、電力の搬送側として九州電力が、さらに第三者的立場の学者、研究者として東北大学工学部の杉浦教授 (座長)、武蔵工業大学工学部の徳田教授、電気通信大学の上教授、東京工大大学院の鈴木教授 らが参加している。

 編集長の報告を毎回拝読しているが、それぞれの委員が強弱はあるものの、それぞれの利害、立場を代表してそれなりの意見を述べている。JARLか らの代表の芳野氏は、もっと強く我々アマチュア無線家の立場を主張しても良いと感じる。彼は筆者の大学時代の先生である。メーカーにも温度差はあるものの、皆がんばっている。座長も9回の委員会ではPLC推進側委員に対し、「これが飲めないと言 うなら研究会は解散するしかない」と言っている。

 そんななか、他の委員から毎回失笑を買っているトンデモ学者とは、編集長のご報告から既におわかりのように、徳田委員である。徳田委員は私が勤務する武蔵工業大学の工学部電子通信科の教授である。彼は工学部、私は環境情報学部と学部は異なるがいわば同僚、大変遺憾である。

 本来、この種の研究会における大学の研究者、学者の役割は、御用学者を別にすれば、第三者的立場で客観的、中立な発言をすべきである。にもかかわらず、まさにトンデモ発言を繰り返している。記録から発言を拾ってみると、「皆PLCからのノイズばかりを問題にしているが、現実には電力線からもノイズが出ているではないか」、「PLCモデムの出力電流は他の情報機器と変わらない、なぜPLCだけを問題とするのか」、さらに日本における低ノイズ地域の存在に関連し、「そんな場所では電線が引かれていないのではないか。日本でQR値より20dBも低い場所はあるのか。無線は静かな場所を探してやるべきではないか」などなど、まさに他の委員からの失笑が漏れている。

 ところで前号で言い忘れた重要なことがある。環境分野の原則に、「非悪化の原則」と言うのがある。何かというと、騒音なり大気汚染なりの公害に関しこれ以上現状を悪化させないと言う範囲で道路建設などを認めると言うものである。

 エー、そんなこと可能なのと思うだろうが、例えば自動車の騒音レベルがある地点で70デシベルだとしよう。ここにもうひとつ交通量が同じの道路あるいは車線を増やす場合、けっして70+70=140デシベルとはならない。73デシベルとなる。したがって、さまざまな対策をすることで新たな道路を建設しても70デシベルを維持することが可能となりうる。一方、大気汚染ですでに環境基準を超過している場合、総量規制と言う手法を導入し新たな道路などを建設するには、全体の汚染レベルを下げることを前提としている。

 前回の原理、原則に加え、この「非悪化の原則」 もPLCに関連し一考する価値があると思うがどうだろうか?