2005年1月31日に高速電力線搬送通信(PLC)に関する第一回目の研究会が開始され10月4日で早、10回目の研究会を開催するに至った。 この間、草野利一編集長が欠かさず研究会を傍聴 され、記録を本誌に掲載された。この種の技術的な問題で毎回傍聴し報告することは、言うは易く行うは難しである。
そもそも電気通信や電波通信など公共政策の分野 で生ずる紛争、たとえば今回のPLC問題の解決には、次のような原理、原則とプロセスが必要となる。すなわち、技術的に完全に影響、被害をゼロにできない場合、公共、公益性の観点からどうしても当該技術の社会化が望まれる場合には、それなりの原則及び前提を守ることが不可欠となる。ただ、代替手段が十分にありうるPLC技術に、どれだけ公共、公益性があるかどうか疑問視する向きも多い。
PLCに限らず広義の意味で環境に影響を及ぼす可能性をもつ技術や製品を社会化する場合、次のような原理、原則があることを忘れてはならない。それは、環境を汚染する者には「排出者責任」があるだけでなく、社会的費用を負担する「汚染者負担の原則」があることだ。さらに汚染を出す装置をつくる者には製造物責任がある。このような原則と原理は、もともと公害問題の解決で構築されたものだが、今や国際機関における問題解決上の常識となっている。直近に例ではアスベスト被害の解決がある。
世は「規制緩和」の大合唱だが、規制には確かに利権に連動する許認可などの経済的規制もあるが、こと環境・健康、安全、希少資源の保護などに関わる規制、すなわち社会的規制は必要不可欠なものである。これら2つの規制を混同してはならない。
この種の問題の解決には、最終的に司法、すなわち裁判となることもあるが、一般的には利害関係者が同じテーブルにつき、各種の情報、データの提供を受け、またはデータを提供しつつ、それらをもとに相当回数議論し、具体的な解決策を見いだすことが有効だ。これをラウンドテーブル方式と言う。今では裁判所でさえ採用している。
PLC研究会もそのひとつと言えるが、そこにはPLCにより影響を受ける側、PLCを推進する側、そして第三者的立場の学者、研究者の大別し3つのグループが委員として参加している。
ところで、編集長の傍聴記を読んでいて毎回不可解と言うか、首をかしげざるを得ないことがある。それは第三者的な立場で発言すべき学者系委員がトンデモでトンチンカンな発言を繰り返しているこだ。
総務省の公開議事録ではその発言者の名が伏せら れているが、編集長の傍聴記では実名があり上記の
委員が誰かがよく分かる。2001年、日本では米国に35年以上遅れ情報公開法が制定されたが、法では議事録で氏名を公表すると委員に圧力がかかるとか、忌憚ない議論ができないなどとして氏名が伏せられること多い。
他の委員から毎回失笑を買うようなトンデモ学者委員に、この種の重要な検討をさせてはならないと思う。発言内容に責任をもってもらうために、役所の議事録でも氏名を公表すべきである。
次号では、委員の具体的発言がいかに原理、原則 から乖離し、結果的に業界側に利益を誘導すること、
すなわち「PLCが通れば道理が引っ込む」ことになりかねないことを問題提起したい。 |