エントランスへはここをクリック   


環境省の信頼性損なう
正当性のない意思決定手続き
〜放射性廃棄物の処理方針の決定〜

 環境行政改革フォーラム 事務局長 鷹取 敦
  副代表 池田こみち

掲載月日:2011年9月26日
 独立系メディア E−wave 無断転載禁


◆災害廃棄物安全評価検討委員会への議事録開示請求

 環境省では福島第一原発の事故により放出された放射性物質で汚染された災害廃棄物(がれき)の処理、処分の方法を検討するため、2011年5月15日より「災害廃棄物安全評価検討委員会」を開催している。

 この「災害廃棄物安全評価検討委員会」は、以前に下記のコラムで指摘したように、国民の関心が高く、全面的に非公開にしなければならない正当な理由がないにも関わらず非公開で開催され、議論の内容も「議事要旨」として具体的な議論(発言内容)が分からないようなもののみが公表されている。
(検討会資料および議事要旨は http://www.env.go.jp/jishin/ の「災害廃棄物安全評価検討会について」に公開されている。)
■放射性物質汚染の瓦礫を焼却処理する環境省の脆弱な根拠
http://eritokyo.jp/independent/takatori-fnp0001.htm
 そこで筆者らは、NGO環境行政改革フォーラムの事務局として、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」に基づき、検討委員会の議事録の開示請求を行った。
■情報公開制度について(環境省)
http://www.env.go.jp/johokokai/seido.html
■行政文書開示請求書
<PDFへのリンク>
 開示請求は2011年7月19日に行政文書開示請求書を郵送することで行った。開示請求の段階で手数料300円を収入印紙で貼付する。請求はこの時点までに開催されていた第1回(5月15日)、第2回(6月5日)、第3回(6月19日)、第4回(7月14日)分である。

 ちなみに、第5回が8月10日に、第6回が8月27日、第7回が9月25日に開催されている。

 情報公開制度においては、開示請求を受けた省庁は請求を受けた日から30日以内に、開示、部分開示、不開示を決定しなければならない。ただし事務処理上の困難、その他正当な理由があるときは、30日に限り期限の延長が可能という規定がある。

 国の検討会が開催され、議事要旨が出来ているということは、当然のこととして、議事録はすでに作成されているはずであるから、開示決定の事務には何日も要しないはずである。開示すべきものを「開示する」(できない部分があればそれを明記して)という文書1つを作成し、請求者に送付するだけである。


◆開示決定の期間延長の通知

 2011年8月22日付で環境省大臣官房総務課情報公開閲覧室より「開示決定等の期限の延長について(通知)」という環境大臣 江田五月 名の文書が届いた。担当課は廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課、適正処理・不法投棄対策室である。
■開示決定等の期限の延長について(通知)
<PDFへのリンク>
 「延長後の期間」として「開示請求のあった日から60日間」、「延長の理由」として「法第10条第1項の期間内に開示決定等することが、事務処理上困難なため。」と記されている。すでに作成済みのはずの議事録の開示決定を行うのが、なぜ「事務処理上困難」なのか具体的な理由は記されていない。しかしこの段階で不服申し立てをする手続きは情報公開法には規定されていないため、あと30日、待つ以外に出来ることはない。

 ちなみに資源エネルギー庁(経済産業省)にも別件で情報開示請求を行ったが、開示請求を受け付けた旨の文書が数日後に届き、おおむね30日後には開示決定の通知が届いている。これに比べて、環境省では受け付けた旨の文書の送付もない上に60日間待たされることになっており、手続きの部分のみについていえば対照的である。


◆開示決定の通知

 2011年9月16日付で環境省大臣官房総務課情報公開閲覧室より「行政文書開示決定通知書」という環境大臣 細野豪志 名の文書が届いた。
■行政文書開示決定通知書
<PDFへのリンク>
 「不開示とした部分とその理由」は「なし」と記載されている。つまり全面開示ということであろう。

 開示については「(1)閲覧、(2)複写機により白黒で複写したものの交付、(3)スキャナにより電子化しCD-Rに複写したものの交付(PDFファイル)、(4)スキャナにより電子化しDVD-Rに複写したものの交付(PDFファイル)」の4種類から選択するとが出来る。それぞれ必要となる開示実施手数料が異なる。今回は(3)を選択した。手数料の合計は1990円、ただし開示請求時に貼付した収入印紙300円分が差し引かれるため実質的には1690円となる。この手数料は収入印紙として支払うのだが、90円という端数の収入印紙は存在しないため、実際にはやや多めに貼付することになる。おつりはもらえない。また、返信用の切手も同封する必要がある。


◆開示までに要する期間が長いことによる問題

 この時点で検討委員会は第5回(8月10日)、第6回(8月27日)がすでに開催され、議論が進められている。また放射性物質で汚染された瓦礫を最終処分場に処分するための基準や方法も決められすでに報道されている。開示までに60日も待たされたことで、議事録が全面開示されても到底「間に合わない」のである。


◆第5回以降の議事録は作成していない!?

 ともあれ全面開示されることが分かったので、第5回、第6回分の開示請求書を、第4回までの「行政文書の開示の実施方法等申出書」とともに作成、送付した。

 2011年9月26日、環境省大臣官房総務課情報公開閲覧室の畑中氏より環境行政改革フォーラム事務局に第5回、第6回分の開示請求に関連して電話があった。畑中氏によると、「議事録は第4回までは、外部の速記会社に委託して作成していたが、第5回以降はその必要がないということから、事務局が自分たちで議事概要を作成するだけとなっている」とのこと、である。

 仮に本当に議事録を作成していない場合でも、正確に議論を記録するため正確な議事概要を作成するためには、ICレコーダーなどによる録音が不可欠であり、その点を指摘したところ、畑中氏は、あるとも無いとも言えないというようなことを言って口を濁していたため、第5回以降の会議の録音があるのかないのかを担当部局に確認した上で再度、連絡するように依頼した。

 第5回が開催されたのは8月10日、筆者らが第4回までの議事録の請求を行ったのは7月19日である。つまり環境省は議事録の開示請求を受けた後に、議事録の作成は「必要ない」と判断し作成するのをやめてしまったのである。

 重要な検討委員の議事録の作成は当然のことながら業務上も必須であるし(手書きのメモ以外に正確な議事録を作成しないとすれば担当職員の手抜きであるか、議論がただの形だけだから必要ないのかのいずれか、もしくは両方ということになる)、開示請求を受けたのであれば、なおのこと「必要がある」と判断すべきである。それをあえて第5回以降作成しないことにしたのは、議事録を開示したくないから、という以外の理由が考えられるだろうか。

 そもそも行政の審議会、検討会は(プライバシー等の情報に関する以外)原則公開でなければならない。非公開でなければ意見を言えない「学識経験者」は委員とすべきではないだろう。

 このような検討委員会だとすれば、開示決定までに60日もかかり「全面公開」される議事録は、この60日間の間に委員、もしくは環境省に都合よく改変されている可能性を疑わなければならなくなる。一般に公開を前提としている委員会等でさえ、議事録作成の後、委員に議事録案が回覧され、発言の趣旨と異なる場合には直すという慣例が行政においては一般的となっている。ましてや非公開を前提として開催された「災害廃棄物安全評価検討委員会」は...である。

 このようにきわめて不透明な経過で決定されてきたのが、放射性物質で汚染された瓦礫の処理・処分の方法である。いみじくも昨日(2011年9月25日)の検討委員会で「1キログラム当たり10万ベクレルを超える放射性セシウムを含む焼却灰などについて、外部に放射線が漏えいしない対策を取った上で管理型最終処分場に埋め立てることを容認する方針で一致した」ということである。

中國新聞・10万ベクレル超も管理型処分場に 環境省が埋め立て容認へ
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201109250160.html

 環境省の有識者検討会は25日、1キログラム当たり10万ベクレルを超える放射性セシウムを含む焼却灰などについて、外部に放射線が漏えいしない対策を取った上で管理型最終処分場に埋め立てることを容認する方針で一致した。コンクリート製の箱に詰め、全体を覆土する方法を想定しており、来月の次回検討会で詳細な埋め立て方法などを議論する。

 10万ベクレル超の焼却灰について、環境省は有害な重金属などを含む廃棄物を埋め立てる遮断型最終処分場での埋め立てが可能としてきたが、委員から「処分場の作業員や周辺住民の安全が確保できれば、管理型処分場での埋め立てでも問題ない」との指摘があったという。

 処分先の選択肢が広がる一方で、焼却灰処理は10万ベクレル以下でも停滞しており、10万ベクレル超の処理の展望は不透明だ。

 検討会では焼却灰の処理状況も報告。関東や東北地方を中心とした16都県の410施設のうち、22施設が8千ベクレル以下の焼却灰を住民の反対や他県の受け入れ拒否などの理由で一時保管していた。また8千ベクレル超10万ベクレル以下の焼却灰が出た7都県42施設では埋め立てが行われず、一部の施設は保管が限界に近づいているという。また群馬県伊勢崎市の最終処分場の排水から、モニタリグの目安をわずかに上回る放射性セシウムが検出された事例が報告された。

 環境省は自治体とモデル事業を実施、安全を確保しながら施設ごとに処理指針を柔軟に運用するなどして8千ベクレル超の焼却灰の処理を進める考え。

 会合では、東京電力福島第1原発事故で放射性物質に著しく汚染された廃棄物処理を国が行うとした特別措置法の来年1月の全面施行を受け、国が直轄処理を行う地域の指定基準などについても議論。来月10日の次回会合で基準の素案を取りまとめる見通しだ。