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メディアと世論誘導
D国民の多くが無批判に大メディアを
信頼している事実


青山貞一
Teiichi Aoyama
掲載月日:2010年11月9日
独立系メディア「今日のコラム」
無断転載禁


●国民の多くが無批判に大メディアを信頼しているという事実1

 私は本稿のなかで日本国民の世論は、大メディアの論調によって著しく影響を受けるという仮説を提起してきたが、これは日本の国民の多くが無批判に大メディアを信頼しているという事実に基づいていると言ってもよい。

 換言すれば、国民の考え、世論の大部分は大メディアの記事、ニュースなどによるすり込みにより「飼い慣らされてきた」効果であると言って言えないことはない。

 以下のように、これは国際比較の調査結果や国内調査の結果を見れば浮き彫りとなる。

 下は日本リサーチセンターが実施した先進国、発展途上国、資本主義国、社会主義国を問わず各国国民が、いかなる組織に信頼を置いているか、という非常に興味深いアンケート調査結果のごく一部である。ごく一部という意味は、この調査では、60カ国の国民を対象に調査をしているからである。

 ※国際調査の全体結果:
  世界各国の組織・制度への信頼度比較(2000年)

 下では、まず日本とイギリス、日本とアメリカを比較してみた。日本国民の圧倒的多数(70%以上)は新聞など大メディアを信頼していることがこの調査より窺える。これに対し、イギリス国民は大メディアをわずか約14%しか信頼していないことが分かる。


出典:日本リサーチセンター編「世界60カ国価値観データブック」

 下は日本と米国との比較である。米国も英国と同様の傾向であることが分かる。大メディアの信頼性は、日本が70%以上であるのに対して米国では26%程度にすぎない。


出典:日本リサーチセンター編「世界60カ国価値観データブック」

 他の先進国における大メディアの信頼度は、カナダが約36%、イタリアが約34%、フランスが約35%、ドイツが約36%、ロシアが約29%である。

 逆に日本に近い国を探すと、中国が約64%、インドが約60%、フィリピンが70%、ナイジェリアが約63%といずれも発展途上国ということになる。

 このように大メディアの信頼度が、先進諸国で14〜35%であるのに対し、日本では70%もある。

 ※国際調査の全体結果:
  世界各国の組織・制度への信頼度比較(2000年)

 これを要約的に言えば、日本人は新聞、テレビなどの大メディアの情報を先進国のなかで一番無批判にまたアプリオリに信頼しているということに他ならない。

●国民の多くは無批判に大メディアを信用している事実2

◆ギャラップ社の調査結果

 実はこれを裏付けるような調査結果が多数ある。

 下は米国の著名な世論調査会社、ギャラップ社による日本人の新聞、テレビなど大メディアに対する信頼度調査の結果である。

 何と、ここでも新聞、テレビともに信頼するが73%〜74%となっており、先の国際調査結果に非常に近い結果であることが分かる。


出典:ギャラップ社

◆ノルド社会環境研究所の調査結果

 さらに下はノルド社会環境研究所が実施した「情報源の信頼性」と題する調査結果である。

 本調査では、@大メディア、A大学・研究機関、B企業・事業者、C市町村、D都道府県、E国の省庁、F衆議院・参議院、G政党(与党)について情報源の信頼性を聞いている。

 ここでも日本の多くの国民は新聞・テレビなどの大メディアを信頼していることが分かる。ちなみに、信頼している組織の順位は、
@大メディア→A大学・研究機関→B企業・事業者→C市町村→D都道府県→E国の省庁→F衆議院・参議院→G政党(与党)
であり、大メディアの一位が49%であるのに対し、大学が31%、市町村が29%、都道府県が26%、省庁が19%、政党(与党)に至っては8%にすぎないことが分かる。


出典:株式会社ノルド社会環境研究所


 ノルドの調査結果からは、日本の国民は国の省庁や政治をほとんど信頼しておらず、圧倒的にテレビ、新聞などの情報を信頼していることになる。ここにひとつの大きなポイントがある。

◆国民が情報を得るメディアの種類とその信頼度調査

 では次に、国民が情報を得るメディアそれぞれに対する信頼度についての調査結果を見てみる。

 調査結果を見ると、ここ数年、インターネットから情報を得る時間は圧倒的に増えていることが分かる。新聞、テレビ、雑誌、ラジオそれぞれに費やす時間8〜10%であるのに対し、インターネットはPC系が約70%、モバイル系が27%と、国民は多くの時間をインターネット系に費やしていることが分かる。


出典:http://www.garbagenews.net/archives/1303606.html
 
 だが、下の調査結果を見ると、情報を得るメディアそれぞれの信頼度では、ニュース番組が86%、新聞全般が87%、ニュースサイトが81%と、断然テレビ、新聞に対する信頼度が高いことが分かった。

 ちなみにこの意向調査の実施者は、「ネット利用者でも新聞・テレビニュースへの信頼度は9割近くに」と結論づけていた。


出典:http://www.garbagenews.net/archives/1303606.html 

 このように、日本では、新聞、テレビなどの大メディアが流す情報に寄せる国民の信頼度がアプリオリに高く、国、自治体を含め行政の情報はあまり信頼されてなく、政党(与党)の情報はほとんど信頼されていないことも分かった。

 繰り返すが、ここ1,2年の政局を見ていると、日本の国民の70%程度が新聞やテレビの論調の影響を強く受けていること、また世論調査結果も新聞やテレビの論調の影響を受けていることが分かる。

 その背景としてどの新聞、テレビもほぼ同じような内容、論調の記事、社説、ニュースを流している点にも注目すべきである。もちろん、デーリーの事実報道では、ここで問題とするような内容に大きな課題はないだろうが、政治、政策のように多面的な考察、評価が不可欠な問題において、どの新聞、テレビも同じ論調であることが問題なのである。

 この日本の世論形成もまさにガラパゴス現象の一部であると言えよう。

 新聞やテレビが流す情報、論説、論調、社説などが顕示する事実がいつも真実であるとは限らない。簡単に言えば正しいとは限らない。

つづく