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2014 嬬恋・長野原・中之条の春(3)
Spring of Tsumagoi, Naganohara and Nakanojo in Gumma Pref.
青山貞一 Teiichi Aoyama
池田こみち Komichi Ikeda
鷹取敦 Atsushi Takatori

May 15, 2014
Alternative Media E-wave Tokyo
無断転載禁

 昼食後、長野原町の八ッ場ダム工事現場を見た後、東吾妻町にある「天狗の湯」と言う日帰り温泉に行くことにした。

 別荘から国道145号線に出て少し行くと嬬恋村の「半出来温泉」に出会う。

半出来温泉(はんできおんせん)は、群馬県吾妻郡嬬恋村(旧国上野国)にある温泉。JR吾妻線袋倉駅から徒歩8分ほど。泉質はナトリウムカルシウム塩化物泉で源泉温度42.5℃、無色透明、源泉名:恵の湯である。由来だが、「半出来」とは小字名。土地が痩せていたため作物がよく育たず、近隣の地域に比べて同じ面積の土地で同じ作物を作っても半分しか収穫が無かったことから「半出来」と呼ばれた地名に由来する。

 毎年この時期、サクラ、モモ、レンギョウ等が咲き乱れる。 「半出来温泉」はまさに桃源郷、GWには必ず寄って写真を撮る場所となっている。 


嬬恋村の半出来温泉にて  まさに桃源郷。  左は鷹取敦さん。
撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400

 右に少しだけ見える吊り橋は、八ッ場ダムに通ずる吾妻川だ。

 幸いここは水没を免れているが、この地を訪れるひとは、鄙びた桃源郷を体感するために来る。私は以前、「昔、関東軍、今、建設省」というブログを書いたが、日本の自然や文化をことごとく破壊している張本人は国土交通省に間違いない。下は青山が撮影した「半出来温泉」。


春の半出来温泉にて
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8

 「半出来温泉」には吾妻川を渡り反対側に行くための吊り橋がある。一人がやっとの幅員しかないが、これが風情がある。


嬬恋村の半出来温泉にて
撮影:鷹取敦  Sony DSC-HX50V)


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8

 この後、長野原町の八ッ場ダム工事現場に行く。下の写真は、後に出てくる道路図のうち、Cの道路を渡る直前で撮影したものである。左側はDのJR吾妻線の付け替えのためにつくった軌道用の橋梁。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8

 下の写真は、八ッ場ダム建設に関連するおそらく最後の大橋梁だ。一般県道第一湖水橋である。 

 友人が以前、「谷間の虚構」という本を書いたが、まったく不要なダム建設のためにそして一基礎自治体のために5000億円以上の巨額な公金、税金が投入され、日本全体でも希有で秀逸な吾妻渓谷の自然や景観がずたずたにされてしまった。まさに「谷間の虚構」である。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8

 第一湖水橋梁の場所は以下の地図のBの一般県道用の橋梁である。

 Aは政権交代時、テレビなどが写していた橋梁だ。@は高規格道路国道145号線の橋梁、CとDは一般道路国道145号線と吾妻線付け替えのための橋である。もう一本は、東吾妻町における吾妻線付け替え用の巨大なコンクリート橋梁だ。


八ッ場ダム計画対象地域における道路・鉄道付け替え事業計画図
出典:青山貞一: 八ッ場ダムC 進む関連工事と破壊される自然環境

 下は第一湖水橋の遠景である。八ッ場ダム工事では、この種の大型橋梁が長野原町だけに5本、それに東吾妻町に1本竣工したことになる!


撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400

 下の3枚は、近づいて撮影したの写真である。渓谷は見るも無惨にあちこちで造成工事が進んでいる。


一般県道第一湖面線橋梁の建設工事現場
撮影:青山貞一 Vicotr GZE254B


一般県道第一湖面線橋梁の建設工事現場
撮影:青山貞一 Vicotr GZE254B


撮影:青山貞一 Vicotr GZE254B


撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400

 この近くには以下のようなすばらしい吾妻渓谷がある。


長野原の吾妻渓谷にて
撮影:池田こみち Nikon Coolpix S6400

 吾妻渓谷のこのあたり一帯(林地区)をグーグルマップの衛星画像で見ると、下の写真のように幹線道路と土地造成のオンパレードとなっていることがよく分かる。

 とくに長野原町立第一小学校周辺の土地改変はすさまじい。今後、大雨が降ると、土砂崩れの危険性が高くなるはずだ。


出典:グーグルマップ


出典:グーグルマップ
 
 上記の地域の一角に以下のようなクラインガルテンを造成していた。こんなアスファルトの道路と巨大なダムに面したところで一体誰がクラインガルテンなどやるんだろうか?


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8

 さらに上流側の中棚地区もすさまじい。下は長野町立東中学校があるあたりである。


出典:グーグルマップ


出典:グーグルマップ

 もともと、この当たりは、草津温泉や長野県上田方面に抜けるための国道145号(途中から144号)が唯一の道路で、吾妻川沿いに走っていた。確かに、急峻な崖を切って整備された細い国道で、大型のトラックやバスが通れば、すれ違いにも大変な道路だった。

 しかし、八ッ場ダム周辺の整備が進むにつれ、ダム湖に沈む国道や鉄道(JR吾妻線)の付け替え工事が始まり、また、移転する住宅等の利便性のため、縦横に道路が整備されていった。道路の立体交差やトンネル、橋梁、河川改修、護岸整備、法面保護工事などの土木工事が20年以上も継続されてきたのである。その中にはどうみても不要なカーブした道路を直線化する工事も各所に含まれていた。


こんなアグリーな光景がこの10年、現地で続けられてきた 左はJR吾妻線
撮影:青山貞一 Vicotr GZE254B

 もともとの国道145号はそのままに、まず、吾妻川の対岸に145号のバイパス(八ッ場バイパス)が高規格道路として整備された。草津温泉への分岐となる大津交差点で吾妻川を右岸に渡り、林で今度は吾妻川を左岸側に横断、立体交差の交差点や複数の立派なトンネルを経て東吾妻町の岩島駅手前まで10km以上にわたり整備した。


谷間の虚構そのもの、群馬県長野原町の実態
八ッ場ダム本体位置から上流をみた立体図 一体が長野原町

 以下は本体の模型(レプリカ)である。


八ッ場ダムの模型に見るダム本体
撮影:青山貞一、Nikon cool Pix S8 2013.4.28

 下は本体工事位置の現況上に設計図を重ねた図。


見晴台から見た本体工事予定位置に設計図を重ねたパワーポイント
出典:青山貞一が東京都市大学の公共政策論用に作成

 次に、湖底に沈む農家や温泉街の住宅などが次々に代替地に立派な家を新築し始めると、生活道路の利便性を確保するため、国道145号が走る吾妻川左岸には、現国道と平行し、200m〜300m山側に新たに県道376号が整備された。この道路は、林地区から国道292号をつなぐ2車線の道路で、沿道には、長野原町立第一小学校、同町立東中学校も移転し新築されている。そのほか、保育園、町民運動施設などさまざまな町民向けの公共施設も新たに整備されている。

 さらに、川原湯駅を付け替え、八ッ場ダムバイパスが整備されたことにより、川原湯駅から先の吾妻川右岸にも左岸と同様の高規格道路が複数のトンネルを通過して東吾妻町まで整備されている。

 結果として、東吾妻町から草津への分岐点となる国道145号の大津交差点までの間に、吾妻川の両岸に広域各道路が整備され、観光客にとっては今まで以上に草津へのルートが便利になったことになる。

 確かに、今までわずか国道1本で、大型車の通過交通が日常生活に危険をもたらし、豪雨や豪雪時には孤立するなどの課題もあったことは間違いない。そのために、ダム整備にともなって一定の道路整備は当然のことと思われるが、ダム本体に着手する前30年の間、ここで繰り広げられてきた土木工事はあまりにも巨大であり過大であるとは言えないだろうか。

 このようなことをしていたら、いくら予算があっても到底足りないし無駄がまかり通って近隣地域との格差が広がるばかりである。このような道路整備で町が反映するとも思えないし、観光客が増えるとも思えないからである。


つづく