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中央環境審議会でも
原発慎重派委員ら外される
青山貞一
掲載月日:2013年3月5月
 独立系メディア E-wave Tokyo

無断転載禁


 先に以下の論考で述べたように、自民党政権となってから経済産業省が事務局となっている「総合資源エネルギー調査会」の委員が大量に外されたが、環境省が所管する中央環境審議会でも原発稼働に慎重あるいは脱原発派の委員が石原大臣の意向で外されていたことが分かった。

◆青山貞一:総合資源エネルギー調査会部会の新旧委員リストから考えること
 
◆ 朝日新聞・中環審「脱原発派」の就任取り消し 石原環境相の意向か
http://www.asahi.com/politics/update/0305/TKY201303040425.html?ref=rss

 【小林哲】昨年末に環境相の諮問機関、中央環境審議会の委員に内定していた 脱原発や温暖化対策強化を訴える環境NPO代表や大学教授らが、政権交代直後 に就任を取り消されたことがわかった。石原伸晃環境相の意向とみられる。環境省は「委員を減らして議論の活性化を図るため」とするが、環境・エネルギー政策の議論の場から政権の方針に批判的な専門家が外された形だ。

 今年1月は中環審委員の改選期に当たり、環境省は昨年12月上旬までに30人の再任・新任案を内部でまとめた。しかし、その後政権交代があり、1月10日に予定していた総会を延期して人事案を作り直した。2月8日付で任命された新委員は25人で、当初の案より5人少なくなった。

 就任取り消しが判明したのはNPO法人「気候ネットワーク」代表の浅岡美恵弁護士、京都大の植田和弘教授、環境ジャーナリストの枝廣淳子氏。浅岡氏は、安倍政権が見直すことにした「2020年に温室効果ガスを90年比で25%削減」する国際公約の維持を主張。植田氏は民主党政権時代に25%削減の実現性を検証する会議の座長を務めるなど政策立案にかかわった。3氏とも自然エネルギー導入や電力システム改革などによる脱原発を唱える論客として知られる。

 浅岡氏は05年から委員を続け、同氏によると、昨年12月上旬に環境省の担当者から再任内定を伝えられた。しかし、今年になって「政権交代で調整に時間がかっている」などとして総会は延期に。2月初めに同省幹部から「委員数を減らすことになった」として再任取り消しを告げられた。

 植田氏と枝廣氏は昨年まで温暖化対策を話し合う中環審の部会で臨時委員を務 めた。両氏によると、昨年末までに正委員への昇格が内定したが、今年になって環境省から取り消しの連絡があった。

 総会延期をめぐっては、石原環境相が1月8日の会見で「安倍内閣の方針を委員に認識してもらう時間が必要」と発言。朝日新聞の取材に対し、官房総務課の名で「審議を充実させるため、スリム化を図ることとした」と回答した。同課によると、就任間もない石原氏に人事案を示して了解を求めたところ、「よく見直すべきだ」と人選や人数に注文がついたという。

 中環審の委員は、専門家のほか自治体や経済団体、労働組合の関係者が名を連ねる。環境省のある幹部は「団体推薦で選ばれている委員は簡単に切れない。結果として環境派の人たちが不採用になった面はある」と指摘する。

     ◇

 〈中央環境審議会〉 環境関連の政策を有識者が議論し、国に提言する諮問機関。委員は環境相が任命し、定数30人以内で任期は2年。総会の下に、地球温暖化対策や廃棄物問題、生態系保護などテーマごとに九つの部会がある。エネルギー政策の議論は経済産業省の総合資源エネルギー調査会が中心だが、中環審も一定の影響力を持つ。

 下は自民党政権下の新旧委員リストである。委員は従来の30名から25名としているが、新委員には経団連関連委員を2名とする一方、原発慎重や脱原発を主張する大学教授、弁護士、環境ジャーナリスト(旧委員ではなく、おそらく新規の内定者だったひと)らが外されていることが分かった。

 もっぱら、新旧委員のなかには、国の審議会、委員会、検討会の「常連委員」やいわゆる「御用学者」が多数おり、けっして従来の委員人選も、書かれた論文、論考、著作、講演、シンポジウムのパネリストとしての発言などからのフェアな実力本位の人選となっていないことは明らかである。

 本来は、英国の公職コミッショナー制度のように、利害にとらわれず、利益相反でない第三者的立場を堅持し見識、知性をもったひと、さらには哲学、倫理学などを専門とするひとも委員とすべきであると考える。 

◆中央環境審議会新委員名簿 (平成25年2月8日)

氏名 現職
相澤 好治 学校法人 北里研究所常任理事、北里大学名誉教授
浅野 直人 福岡大学法学部教授
礒野 弥生 東京経済大学現代法学部教授
石井 実 大阪府立大学大学院生命環境科学研究科教授        ●
今村 聡 (社)日本医師会副会長
上野 正三 全国市長会 廃棄物処理対策特別委員会委員長(北広島市長)
大塚 直 早稲田大学大学院法務研究科教授
岡田 光正 放送大学教授、広島大学名誉教授
岡本 直美 日本労働組合総連合会 会長代行(NHK関連労働組合連合会議長)
河野 博子 (株)読売新聞東京本社編集委員
小澤紀美子 東京学芸大学名誉教授
坂本 和彦 埼玉県環境科学国際センター総長
佐藤友美子 (公財)サントリー文化財団 上席研究フェロー
進藤 孝生 (一社)日本経済団体連合会 環境安全委員会地球環境部会長
住 明正 (独)国立環境研究所理事                     ●
武内 和彦 東京大学サステイナビリティ学連携研究機構長・教授
橘 秀樹 千葉工業大学附属総合研究所教授               ●
中杉 修身 元上智大学大学院地球環境学研究科教授
永田 勝也 早稲田大学理工学術院教授                  ●
中村 紀子 (株)ポピンズ 代表取締役CEO、(公社)経済同友会幹事
藤井 絢子 NPO法人 菜の花プロジェクトネットワーク代表        ● 
細田 衛士 慶應義塾大学経済学部教授
安井 至 (独)製品評価技術基盤機構理事長
山田 政雄 (一社)日本経済団体連合会 環境安全委員会       ●
    廃棄物・リサイクル部会長
鷲谷いづみ 東京大学大学院農学生命科学研究科教授

◆中央環境審議会の従来の委員名簿 (平成24 年6 月30 日)

氏名 現職
相澤 好治 学校法人 北里研究所常任理事・北里大学副学長
浅岡 美恵 気候ネットワーク代表                       ●
浅野 直人 福岡大学法学部教授
礒野 弥生 東京経済大学現代法学部教授
今村 聡 (社)日本医師会副会長
上野 正三 全国市長会廃棄物処理対策特別委員会委員長(北広島市長)
大塚 直 早稲田大学大学院法務研究科教授
岡田 光正 放送大学教授
岡本 直美 日本労働組合総連合会会長代行(NHK 関連労働組合連合会議長)
加藤 順子 金沢工業大学客員教授                     ●
河野 博子 (株)読売新聞東京本社編集委員
小澤紀美子 東京学芸大学名誉教授
坂本 和彦 埼玉県環境科学国際センター総長
崎田 裕子 ジャーナリスト・環境カウンセラー                ●
佐藤友美子 (財)サントリー文化財団上席研究フェロー
佐和 隆光 滋賀大学学長                           ●
進藤 孝生 (社)日本経済団体連合会環境安全委員会地球環境部会長
鈴木 基之 東京大学名誉教授
武内 和彦 東京大学サステイナビリティ学連携研究機構・教授(機構長)
橘 秀樹 千葉工業大学情報科学部情報工学科教授
田中 勝 鳥取環境大学研究サステイナビリティ研究所長・特任教授  ●
中杉 修身 元上智大学大学院地球環境学研究科教授
中村 紀子 (株)ポピンズコーポレーション代表取締役CEO・(公社)経済同友会幹事
林 良博 東京農業大学農学部教授                     ●
細田 衛士 慶應義塾大学経済学部教授
安井 至 (独)製品評価技術基盤機構理事長
山岸 哲 新潟大学超域研究機構朱鷺プロジェクト特任教授       ●
山本 良一 グリーン購入ネットワーク名誉会長
吉川 廣和 (社)日本経済団体連合会
       環境安全委員会廃棄物・リサイクル部会長          ●
鷲谷いづみ 東京大学大学院農学生命科学研究科教授