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ドイツにおける

再生可能エネ固定価格買取

送変電の問題

福本榮雄

掲載月日:2013年3月6日

 独立系メディア 
E-wave Tokyo


 以下は、ドイツのベルリンの福本氏と青山とのエネルギー政策での往復書簡の一部です。

青山さま

 まあドイツでも恐ろしいとんでもないことがありますが、法的には再生可能エネルギーで発電された電力を優先(!!)しなければならないので、原則発電された電力は電力会社によって買い取られます。もちろん送電網の容量によっては電気を受け取れないので、電力会社が強制的に発電事業者の発電をストップできるようになっています。ただその場合は電力会社が発電事業者に発生した損害を賠償します。もちろん、その負担は電力料金に上乗せされますが。

 それでも、送電網整備と変電所の整備が進みません。再生可能エネルギーの発電事業者と大手電力が競合関係にありますから。それでドイツでは、ネットワークの規制機関を結構早い段階で設置。さらに最近では法的に送電網(まずは高圧線だけですが)の整備を加速させるために、送電網整備案を毎年民間ベースで決めさせて、それを法的に拘束させるようになりました。ただ、そのプロセスもたいへんやっかいで、時間がかかり、送電網整備が中々進みません。

 そうした問題に対抗するため、自力で送電線(100kv電線までです)や変電所を設置している市民発電グループもあります。小生は電力会社の変電所の横に市民変電所があるのを見たことがあります。このグループの場合は、380kvの高圧線も市民の資本参加の形で大手送電会社と一緒に設置しようという活動を進め、とうとう今年のはじめにこの大手送電会社は市民と一緒に高圧線を増設すると発表しました。

 ベルリン近郊で再生可能エネルギーだけでエネルギー自給自足している小さな村では、住民がお金を出し合って独自に配電線と熱供給配管網を新しく設置しました。

 それから日本でもすでにおなじみになった市民電力会社のEWSシェーナウの場合は、市民が地元の町の配電網を電力会社から買い取るために約4億円ほど集めています。シェーナウの市民電力会社の女性社長は確か4児の母親で教師だったのですが、小生が会った時は、なんでもやろうと思えば誰にもできるわよと平然といっていました。

 いずれにせよ、まずは地元の配電網が大切だと感じます。小さい自治体からはじめていけば広がります。


 ベルリンでも、すでにベルリンの配電網を市民が買い取ろうとする市民グループができています。さらに、配電網も再公営化しようという市民グループもあります。ベルリンの場合は2014年に配電事業を誰に任せるかの応札がありますので(まあ、こういうシステムは日本にはないでしょうが)。

ふくもと /ベルリン・ドイツ


◆再生可能エネルギー固定価格買い取り制度 買い取り義務
「名ばかり」
(東京新聞:こちら特報部)
2013年3月5日 東京新聞 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013030502000145.html

 「原発依存度を減らすため、再生可能エネルギーを育てよう」と、昨年7月に施
行された再生エネの固定価格買い取り制度。大手電力には、太陽光などの電気事業者から電力を買い取ることが義務付けられた。だが、電線の接続段階でトラブルが多発している。いくら商売敵になるとはいえ、これでは「名ばかり」買い取り制度だ。監視すべき国の対応やシステム自体に問題はないのか。
(荒井六貴、小倉貞俊)

 「新参の事業者は自分では何も決めさせてもらえない。大手電力の顔色をうかがうしかない」

 大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設計画が頓挫した岡山県の企業社長はこう嘆いた。

 固定価格買い取り制度の施行を受け、この社長も昨春から同県内に1メガワット規模の太陽光パネルを敷設するメガソーラー建設計画を進めてきた。

 ところが、辛酸をなめた。なぜか。つくった電気を送るには大手電力会社の送電網と接続しなくてはならないが、そのための手続きはこうだ。

 まず、電気を送る大手電力の変電所の空き容量を確認する「事前検討(相談)」がある。認定まで約1カ月かかる。

 次に接続するための「接続検討」。事業者は発電施設の詳細な設計図などを手数料21万円とともに大手電力に提出する。電力会社は3ヵ月以内に回答し、双方が了承すれば契約となる。

 この社長は昨年7月、地元の中国電力に事前検討を申請。十数キロ離れた変電所に空き容量があり、発電設備が2メガワット以下であれば最寄りの電柱までの電線のみ自己負担になるという回答を得た。