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自然エネルギー財団

REvision2013
シンポ参加記

セッション4

青山貞一・池田こみち
環境総合研究所顧問

掲載月日:2013年2月27日

 独立系メディア 
E-wave Tokyo


 次は、最後のセッション4のプログラムです。



セッション4:
自然エネルギーの将来、エネルギーの将来


 セッション4の動画

・スティーブ・ソーヤー
(世界風力会議事務局長)
配付資料あるいはパワーポイント

・トーマス・コーベリエル
(自然エネルギー財団理事長)

・モデレーター
エリック・マーティノー
(環境エネルギー政策研究所研究部長)
配付資料あるいはパワーポイント

 最後の第4セッションは、自然エネルギーの将来展望です。

  エリック・マーティノー氏(環境エネルギー政策研究所研究部長)は、この6年間、世界自然エネルギー白書を作成するため170人の専門家にインタビューし、5000枚以上の資料に目を通し調査してきました。

 その結果分かったこととして、日本は自然エネルギー開発の先進諸国に比べて10年から20年遅れていると指摘しました。中国、米国などは毎年20〜70%の率で投資が増加してきたのに、日本はインドの半分程度のとのことです。以下は発言の詳細です。

◆エリック・マーティノー氏(環境エネルギー政策研究所研究部長)
 世界における自然エネルギーへの投資額は今後数千億ドルから1兆ドルにも達するというシナリオも描かれていますが、日本ではそんなに成長するとは思われていませんでした。それも神話であり、今後覆していく必要があります。まさに自然エネルギー分野は、あらゆる産業が関与する余地があり、新たなビジネスモデルで新たな資金の流れが促されているわけです。多種多様な分野の企業が参入しそれぞれが重要な役割を果たすことが可能となるのです。

 電力の需給調整は電力会社の大きな役目と言えますが、例えば、洋上風力であれば石油会社も参入できるし、自動車会社も参入可能です。 IT関連企業も、送電網技術のスマート化や需給調整のためにITが必要となりますし、風力分野では、風車を設計するデザイン分野、ブレードを設計するためスーパーコンピュータの大きなユーザーとなっています。また、建材メーカーもカーボン素材など新たな素材開発や供給が必要となってくるので大きな役割を果たすことができる訳です。建築分野では、PVのパッシブ化や省エネのデザインなどが必要となでしょう。それぞれの分野で日本には特筆する技術や企業が有るにも拘わらず、それらが有効に機能していなかったということではないでしょうか。

 




出典:エリック・マーティノー氏(環境エネルギー政策研究所研究部長)

 将来目標としては、ドイツが2050年に電気の80%を自然エネルギーで賄うとしていますが、デンマークは現在すでに電気消費の50%を自然エネルギーで賄っているとのことです。 その中で、日本は依然として低い水準にあると述べています。


出典:エリック・マーティノー氏(環境エネルギー政策研究所研究部長)

 エリック氏は、日本には以下に示すような多くの神話があると述べています。たとえば、自然エネルギーは従来のエネルギーよりコストが高いとか、自然エネルギーには蓄電(技術)が不可欠であるとか、日本には自然エネ用の土地がないとか、などです。


出典:エリック・マーティノー氏(環境エネルギー政策研究所研究部長)

 しかし、エリック氏は、それらはいずれも覆される神話であると言明しています。自然エネルギーには蓄電が不可欠ではなく、今後、電気自動車が家庭用電力用の貯蔵に使われるなどの具体的対応についても話されていました。土地についても農地との共存の道があるはずだと述べています。

 また太陽光発電パネルは、家やビルの屋上、壁、高速道路脇などいくらでもあると言っています。 太陽光発電(PV)のモジュール価格についても、現在、1Wが1ドルさらに50セントに下がっています。 

◆エリック・マーティノー氏(環境エネルギー政策研究所研究部長)
 日本ではともすれば、自然エネルギーの方がコストが高いと思われてきました
が、それも神話の一つです。 風力のコストが低くなって来ていることは、他の国の状況を見れば明らかです。発送電分離ができればそれがコストは下がります。太陽光についても4年前と比べれば1/3の価格になっているので、取り付け可能なところはより多様になってきています。PVについてはGrid Parityの水準に到達しているとの指摘がありました。今や補助金無しで普及している世界の実態を知る必要があるのです。


 一方、スティーブ・ソーヤー氏(世界風力会議事務局長)は、風力発電は現在、世界で年間750億ドルの投資、雇用機会で70万人となっており、この一年で45GWの新規開発があったと報告しています。2012年は若干投資額は下がっていますが、これは開発コストが下がったことが理由とのことです。以下はその詳細です。

 風力発電は中国、ブラジル、メキシコ、エチオピアなどの発展途上国でも盛んに開発が進められています。OECD諸国、米英でもここ数年、急速に風力発電が伸びていますが、それ以前は、原子力発電開発が中心でした。これは日本も同じです。

 米国ではエネルギーの自給率が下がり、従来35%が輸入だったのが現在は70%が輸入されています。

◆スティーブ・ソーヤー氏(世界風力会議事務局長)
 風力発電は途上国ではなく、OECD諸国で発展してきました。しかし、この間、政府によっていろいろな政策の転換があり、投資家がすぐさま投資を決断・判断できないということがありました。特に、英国と米国が最悪でした。自然エネルギーの普及には技術だけでなく、税控除制度の導入、継続も普及にとって重要な要素となります。税制控除がなくなると、市場が一気に縮小し雇用も失われますが、継続されることにより雇用も増え、自然エネルギー普及促進の追い風となることが分かっています。技術ばかりでなく、政府の一貫性のないエネルギー政策というものが足を引っ張るということを知らなければなりません。日本だけでなく、イギリスやアメリカでもこうした側面が見られたのです。

 2009年のデンマークのコペンハーゲンで開催されたG20では炭酸ガスなどによる気候変動対策としても自然エネルギーが見直されました。

 第4セッションでは、世界そして日本の実態をよく調べている専門家が自然エネルギーの現在、そして将来像について具体的に話されました。

 日本では原子力発電一辺倒の道を歩んできたため、自然エネルギーについては、まさに学会でもどこでも数多くの揚げ足取りがなされてきました。

 その結果、いつのまにかそれらが国民の間に神話として定着してきました。これは原子力の安全神話と同じです。

 このセッションでは、日本におけるそれらの神話が、いかに非現実的なものであり、原発を推進するためのもの、為にする議論であったかがよく分かります。

 また中国など発展途上諸国が自然エネルギー開発に熱心であり、膨大、巨額な投資をしてきたかについても分かりました。日本はここでも世界の孤児であり、「ガラパゴス」となっています。

◆スティーブ・ソーヤー氏(世界風力会議事務局長)
 なんといっても、自然エネルギーの普及には、政治の役割が大きいことが分かりました。政治主導が不可能であることを悟りました。そのために、政治家が動ける環境ををつくってあげるということも必要なのです。研究者や専門家はそのために前向きな役割を果たす必要があるし、そうでなければ行けないと思います。

 今日のように、劇的なスピードで自然エネルギーが導入されているという時代にあっては明確な政治的な強い意志がない限り大きな変化が見られないということが言えます。ドイツが良い例です。

 日本ではそれが見られない。そこが変わらない限り、日本がこの分野で大きく飛躍するのは難しいかも知れません。 経済産業省は今後の自然エネルギー普及の青写真として6〜7年かかると指摘しているようですが、それも、政治的な側面がないと難しいだろう、ということです。政策はもちろん重要ですが、それだけでなく、政治的な意思が必要ということです。


 シンポジウムでは、三人の外国人専門家から自然エネルギーの普及に向けての現状分析と将来展望について忌憚のない貴重な意見を聞くことができました。改めて、日本が如何にこの分野で孤立し自己満足に陥っていたかが分かります。

 この間、政策づくりの現場では、いわゆる御用学者の意見ばかりが採り上げられ、在野の専門家や海外の研究者、企業、NGOなどの声をどれほど聞き、現場を見て実態に即した議論をしてきたのか疑わざるを得ません。

 そこから発信された情報を国民は鵜呑みにして今日に至ったのです。これを機会に世界の実態を見据え、何をするべきかについての情報を広く国民的に共有化し、即刻行動に移していく必要があるでしょう。

 技術開発やマーケティングはもちろんですが、三人の専門家の方々が指摘された日本が陥っている「神話」「隘路」「闇」から脱することが不可欠です。補助金ばかりではない経済的なインセンティブ、省庁横断的な規制の緩和、物品やサービスの調達にかかわる旧態依然の慣行の見直し、形骸化した環境アセスメント制度の見直し、一部業界に集中している利権構造の撤廃など挙げればきりがありません。

 今回のシンポジウムでは、それぞれが深く日本の自然エネルギー普及促進の足かせとなっていることが改めて浮き彫りとなりました。

 これは何もエネルギー分野に限ったことではありません。焼却炉や溶融炉に過度に依存し補助金を集中的に投下してきた廃棄物処理分やでもほとんど同じ構図となっています。

 真摯に外からの声を聞くこと、開かれた議論を行うこと、各分野のステークホルダーの議論への参加、政策作りへの参加が可能なこと、などが大切です。

 最後にこのような世界的視野で自然エネルギーの現状と将来、また諸外国と日本の実態について貴重な情報と議論の場を提供してくださっている関係者の皆様に感謝いたします。