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人心惑わすNHKによる
毎日・各地の放射線量情報
青山貞一 Teiichi Aoyama
東京都市大学大学院環境情報学研究科教授
環境総合研究所所長

掲載月日:2011年8月19日
 独立系メディア E−wave
無断転載禁


 この2011年8月4日〜8月14日、いつものように群馬県北軽井沢にある環境総合研究所(東京都品川区)の軽井沢別荘に池田さん、鷹取さんらと滞在した。
 
 今回はせっかくなので別荘で毎日、午前中に同地の空間放射線量を測定した。この別荘は下の写真にあるように、樹木に覆われている緑のトンネルの中にある。


撮影:青山貞一 2011.8.9


撮影:青山貞一 2011.8.9


撮影:青山貞一 2011.8.9

 .......

 ところで皆さんもご覧になっている連日、NHKが国と自治体が測定している首都圏各地の放射線情報だが、 NHKが情報提供している放射線情報のは、東京都の場合を例にとれば。、新宿区に設置された国設測定所で測定した放射線量である。首都圏各地の情報も、群馬県、栃木県など県などの公設測定所で計測した値を速報している。

NHKが提供する放射線測定情報(前橋)

NHKが提供する放射線測定情報(前橋2)

 周知のように、これらの放射線を測定している機器の設置位置、場所は、その昔、原爆実験の影響を見るためとして出来るだけ高所で測定するため6m〜23mなど地表から非常高い設置している。

自治体名 区・市町村   地上(GL)からの高さ
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栃木県   宇都宮         20m
群馬県    前橋          20m
埼玉県   さいたま        18m
千葉県   市原         約6〜7m
東京都   新宿           18m
神奈川   横浜          23m
※上記自治体以外ではさらに地表面より高い地点で測定している場合もある

 群馬県の場合は前橋市の公的測定所で測定した放射線測定値を連日、NHKが天気予報並みに情報提供しているのだが、今回、私たちが同じ群馬県でも西はずれにある北軽井沢の別荘でロシア(ウクライナ)製の検量計で測定した空間放射線の測定値は、前橋の値の4倍〜7倍もあった。

 ちなみに、北軽井沢のERI別荘で毎日測定したのは2階にある私の部屋だが、1階リビングで計っても、1階のテラスそれに庭の地表面で計っても、ほとんど値は大きく違わなかった。理由は簡単、北軽井沢別荘は、上述したように樹木に覆われた緑のトンネルの中にあるからだ。滞在中10日間の放射線量は、概ね0.12〜0.17μSVにあった。

 下の写真は別荘の庭で計測している最中。


撮影:青山貞一 2011.8.11


これは福島放射線測定調査に持参した各種の放射線測定器 

 鷹取さんがγ線だけ測定する米国製とベラルーシュ製の検量計を持参していたので、それで測定しても約3倍、当日のNHKの情報提供値より高かった。

 しかも、視聴者はご承知のように、NHKはその都度、「測定値は3.11以前の計測値の範囲内です」とアナウンスしている。

 確かに前橋市の公設測定結果はNHKがアナウンスする通りかも知れないが、同じ群馬県内、同じ東京都内、同じ福島県内の違う地域ではその数倍も高い場所があるのである。

 私たちが使った放射線検知器は、β線とγ線の両方が測定可能であり、他方、国や自治体がテレメータリングで測定している値はγ線だけという課題がある。だとしても、NHKが行政が県庁所在地に数10年前に設置した装置、それも地上18〜40mと高い位置で測定した値を大々的に情報提供しているのはいかがなものであろうか?

 今回の福島第一原発事故では、ガス状、粒子状の放射性物質が福島第一原発から各地に風などで移流、拡散した後、初期降雨で主にガス状放射性物質が地表面の土壌や湿地、草地などに沈降し、そこから再放射される放射線、それにU字溝や側溝などに蓄積した放射性物質から再放射される累積的な放射線の影響を把握しなければ意味がない。
 
 今までになく多くの市民、国民の関心が高まり、市民は自ら高額の検知器を購入してまで身の回りの放射線量をきめ細かく測定しているのは、より実態にそくした値を
知りたいからである。

 人体への影響は、外部被曝と一旦体内に入った放射性物質による内部被曝の両方で把握し成ればならないが、仮に外部被曝だけをとった場合ても、人間が生活する地表〜地上1mの放射線量情報、それも生活空間に近い場所での値でなければ、結果的に大本営的な<安全情報>を垂れ流すだけで、何の意味もないと思う!
 
 もとより、視聴者からの視聴料を強制的に聴取し、巨額の予算のもと放送局、テレビ局を運営しているNHKなら、シンチレーションタイプのキャリブレーション可能な放射線測定器を多数購入し、支局単位で毎日同じ時間に測定し、それを独自にテレビ、ラジオ、文字放送などで情報提供すべきあろう!

<参考>
◆環境総合研究所:福島放射線測定現地調査(詳細報告、21本一挙公開)