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<総選挙>
旧態依然大メディアの定番
情報操作で世論誘導
(3)アナウンス効果

青山貞一
掲載月日:2012年12月8日
 独立系メディア E−wave Tokyo



 2012年12月6日に、大新聞、通信社が一斉に出した自民党過半数に及ぶという記事には、(2)で書いたように、世論調査の方法、手法上の決定的な問題がある。

 しかし、ひとたびこの種の記事を大マスコミがこぞって出した場合には、勝ち馬に乗るといういわゆるアナウンス効果が生ずることが過去の総選挙で明らかになっている。

 以下はいわゆる小泉郵政民営化選挙前後およびライブドアショック後の自民党および無党派の年代別の支持率である。

図1 郵政解散・総選挙前の自民党および無党派支持率(前)
2005年8月5日〜8日


出典:前田幸男:最近の時事世論調査における政党支持率と内閣支持率
   より青山貞一、池田こみちが作成

図2 郵政解散・総選挙後の自民党および無党派支持率(後)
2005年9月14日〜19日


出典:前田幸男:最近の時事世論調査における政党支持率と内閣支持率
   より青山貞一、池田こみちが作成

図3 ライフドアショック後の自民党および無党派支持率
2006年2月10〜13日

出典:前田幸男:最近の時事世論調査における政党支持率と内閣支持率
   より青山貞一、池田こみちが作成

 まず全体を通じて言えることは、50代、60代など高齢者となるにつれて自民党支持率が高くなることであり、無党派層は逆に低くなることである。

 たとえば図1の60代と20代比べると実に4倍以上、60歳代の自民党支持率が高いことが分かる。これは50代についてもほぼ同じことが言え、20代と比べるとやはり4倍ほど自民党支持率が高いことが分かる。
 
 ところで図1と図2の違いは、図1が郵政解散・総選挙前の自民党および無党派支持率であり、図2が総選挙後の郵政解散・総選挙前の自民党および無党派支持率である。

 この小泉郵政民営化総選挙は、大マスコミがこぞって自民党を実質これでもかと持ち上げた選挙で有名である。

 したがって、図1の選挙前と図2選挙後の自民党及び無党派の支持率の変化の多くは、大マスコミによる一大アナウンス効果と見てよい。これを定量的に分析すると表1のようになる。

表1 選挙前後における自民党及び無党派支持率の変化

出典:前田幸男:最近の時事世論調査における政党支持率と内閣支持率
   より青山貞一、池田こみちが作成

 表1を見ると、選挙前後で男性全体で5.8%、女性全体で10%、全体で7.8%も自民党支持者が増えていることがわかる。とくに女性が大幅に増えている。

 年代別に見ると、20代が16.8%、30代が15.3%と若者世代が前後で大幅に自民党を支持していることが分かる。

 一方、無党派層は、選挙前後で全体で14.7%も減っており、男性が11.8%減、女性が17.7%減となっており、その多くが自民党に流れていることが分かる。さらに年代別では20代が23%減、30代が20.4%と減少し、その多くが自民党に流れている。

 郵政民営化選挙は、日本の総選挙の歴史でもマスコミが異常な挙動をとったことで知られる。その後の、2009年9月選挙では、政権交代の勢いから民主党が圧勝するが、2009年選挙で大マスコミが小泉郵政民営化選挙ほど民主党をアナウンス効果で持ち上げたとは言えない。おそらく半世紀以上続いた実質自民党の一党独裁政権の問題が一気に噴出したことが民主党圧勝の主要因であろう。

 ところで、図3は2006年に起きたライフドアショック後の自民党および無党派支持率を示している。これを見ると、図3のパターンは図1に酷似していることが見て取れる。

 おそらく、これは”異常”な大メディアによる郵政民営化選挙のアナウンス効果がライブドアショックにより冷却され、従来の支持率に戻ったと見るべきであろう。ただ、パターンは酷似しているが、全体的に図1より図3の自民党支持率は高くなっている。

 今回の総選挙は、2009年9月の総選挙で圧勝した民主党が、多くのマニフェスト、公約を反故にし、それらにない消費税増税やTPP参加を公約にしていること、3.11関連でも原発ゼロ政策を明確に打ち出さないことなどを理由に、衆院で半数以上の議席を持っていた民主党から自民党に議席が移ることは間違いない。

 しかし、国民の70%前後が認める脱原発政策というシングルイッシューを大マスコミが徹底的に争点ぼかしてきたことが結果的に小泉民営化選挙とは行かないまでも、自民党に有利な状況をアナウンス効果でもたらしていることは間違いない。

 その自民党は憲法改正、核武装、集団的自衛権はじめ極端な国家主義、右よりの政策、施策を掲げるており、さらに何ら国政で実態がない日本維新の会の動向をテレビ、新聞が追いかけ回わし、それ以外の諸政党を実質無視してきた逆アナウンス効果は絶大であろう。

 その結果、、脱原発、反消費税、反TPPなど、おそらく国民にとってプライオリティーが高い政策、施策を大マスコミが総選挙の争点から隠され、さらに脱原発、反消費税、反TPPを掲げ70名近い現役国会議員らが参加した「日本未来の党」には、本筋からはずれた激しいバッシング報道がなされている現実もある。

 こう見てくると、この特集のその1で書いた日本人が諸外国、とくに先進国で最もマスコミ情報を鵜のみにしている現実、その2で書いた大メディアによる頻繁な世論調査に関連し、大マスコミ報道によるアナウンス効果が、今回の選挙で大きな効果を発揮する可能性は高い。それを見越して、12月6日の自民単独過半数に迫る勢いという報道がなされたとすれば、トンデモナイことである。 

つづく