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子供の外部被曝限度
(年積算20mSv)問題への所見


青山貞一
Teiichi Aoyama
東京都市大学環境情報学部教授
環境総合研究所所長
掲載月日:2011年4月30日
 独立系メディア E−wave
無断転載禁


 私たち環境総合研究所(東京都目黒区)が連日行っている積算放射線による外部被曝シミュレーションをもとに、子供の外部被曝限度、年積算20mSv問題また1mSvについての所見を以下に示します。 参考にしてください。

 ただし、下記の国、県及び環境総合研究所の推定では、福島第一原発事故による外部被曝による積算放射線量のみを考慮しており、レントゲン撮影、CT撮影などの外部被曝や飲料水、各種食物、土壌からの再浮遊で摂取する内部被曝さらに自然界に存在する放射線のバックグランドは含めていません。

 また大気中の放射線量のモニタリングは、通常、地表1〜1.5mの高さで行っています。同じ場所でも地上1〜1.5mと地表面では約10倍地表面の方が高く計測されます。以下では、地表1〜1.5mの高さにおける測定を前提としています。

 ※ 子供や幼児は砂場などで泥遊びをします。となれば、土壌や砂を
    口から摂取したり、再浮遊後の粒子状物質を吸引しなくとも、すな
    わち内部摂取しなくとも、地表面の高レベルの放射線の影響を受
    けることになります。
    したがって子供、幼児に関しては、一体どこで計測した値として放
    射線の積算被曝(外部被曝)を考慮すべきかが大きなポイントとな
    ります。
    ちなみにダイオキシン類の場合、EU(ドイツ、イタリアなど)では、
    土壌中のダイオキシン類規制指針は、農業用土壌、園芸用土壌、
    子供の遊び場の土壌、住宅地の土壌などにより200倍も指針に
    違いがありますが、日本ではもっとも緩い住宅地の1000pg-TEQ/kg
    のみとなっています。


●外部被曝の年積算限度:20mSv想定地域

 子供の外部被曝を年積算の限度を20mSvということは、通常、放射線検量器で計測する1時間値の放射線量が2−3μSvであることを意味します(年積算量=時間値×8760時間)。

 国や県による現地モニタリング結果や国のSPEEDIUによる原発事故後40日間の積算放射線量シミュレーションによれば、年20mSVとなる地域は、原発事故による放射線量が現在並の値が継続するとした場合、今後の風向きによりますが、最低限、

大熊町、双葉町、富岡町、浪江町、飯舘町など第一原発直近の町村はもとより、第二原発直近の楢葉町、広野町北部

が含まれることになります。

 また田村市、川内村、川俣町、葛尾村、二本松市北部、南相馬市南西部、福島市、伊達市

などに及ぶ可能性もあります。


福島県市町村地図
出典:Mapion

●外部被曝の年積算限度:1mSv想定地域

 国のSPEEDIUの推定は、あくまで原発を含め92km×92kmの範囲を対象としており、せいぜい福島県内のシミュレーションしか行っていません。すなわち、それより広い範囲は対象外となっています。

 一方、もし、子供用の外部被曝限度をICRPの年1mSv(日放射線量約0.1μSv)とすると、対象地域は大幅に拡大します。

 私たち環境総合研究所がこの間連日行ってきたSPEEDIに類する3次元流体モデル(数値計算モデル)による積算放射線量シミュレーションによれば、年1mSv(日放射線量0.1μSv)の対象地域は、もし、原発事故による放射線量、現在並の値が継続するとした場合、

上記の全市町村はもとより、

福島県全域、茨城県ほぼ全域、宮城県南部地域、栃木県東部地域、埼玉県ほぼ北部、千葉県北部、東京23区北部など、

かなりの地域が含まれることになります。

 上記の3次元の移流、拡散シミュレーションの各地域(メッシュ)における放射線量は地上1.5mの高さにおける計算値です。

年1mSv想定地域とした場合の子供、幼児、育児、妊婦の避難(疎開)先はどこか?

 ここからが主題です。

 もし、本気で年1mSv以下の被曝を前提に子供、幼児、育児、妊娠中の胎児などを保護しようとすると、関東では群馬県、千葉県南部、神奈川県、山梨県か、長野県に待避させる(疎開させる)しかなくなります。

 今までは、3月11日から現在までの推定積算放射線シミュレーションを行ってきましたが、今後は年間推定積算放射線量のシミュレーションも行う予定です。