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小出裕章氏
(京大原子炉実験所)
インタビュー
(2)

初出:毎日放送ラジオ
2011年3月27日
独立系メディア E-wave Tokyo


出典:2011年3月25日毎日放送ラジオ
  「たねまきジャーナル」 放送時間 21:30〜22:30

インタビューア 毎日放送ラジオ 水野晶子アナ 
解説       毎日新聞本社専門編集員 近藤勝重氏

(水野)今日の原発関係のニュースについていろいろわからないところを京都大学原子炉実験所助教の小出裕章先生に伺います。

小出先生こんばんわ。今日もよろしくお願いします。

そして、東京には近藤さんがいます。よろしくおねがいします。

まずですね、今日は、ラジオ・リスナーからの質問からまいりたいと思います。

ラジオネーム、アセットマネージャーズさんからなんですけど、原子炉が損傷しているという可能性が出てきたんですよね。

(小出)もちろんです。

(水野)それは3号機の原子炉の中にあると思われる成分が混ざった水が今水たまりとなっているという話から分かる話しですよね。

(小出)それもひとつですし、ずっと前から水素爆発ということが起きて原子炉の建屋が吹き飛んでいる訳ですけど、それはもう原子炉そのものが損傷しているという証拠です。

(水野)そうですね。小出さんはこの件については、早くから指摘をしていらしたんです。アセット・マネージャーズさんの質問です。

原子炉が損傷しているとして、その今の状況として放射能の拡散を止める事はできるんでしょうか?

(小出)え〜、原子炉と呼んでいるものには、たぶん皆さんが呼んでいるものには、いろんなレベルのところを呼んでるんだと思います。

一番小さな範囲で呼んでる皆さんは、いわゆる燃料棒のある炉心というところを原子炉と呼んでいる。次のちょっと大きなところでは、その炉心を含んでいる原子炉圧力容器という圧力鍋がるんですが、それを原子炉と呼んでるように思います。

次には原子炉圧力容器を全体にくるむようにした原子炉格納容器という大きな建物があるのですが、それを原子炉と呼んでいる人もいるようなのです。

マスコミもどうも混乱しているように思うのですが、現在の状況はいわゆる炉心の部分は一部もう必ず破損しています。それから原子炉圧力容器はたぶん破損していません。

(水野)たぶん大丈夫? 

(小出)はい、今のところはまだ破損していません。原子炉格納容器は一部破損しています。

(水野)あっ、います? 

それはなんでわかるんですか?

(小出)えー、例えば今回、3号機でタービン建屋の底に水がたまっていたわけですけれど、それは原子炉格納容器というのは放射能の最後の防壁なのです。

防壁なのですが、その防壁がすでに破れて外に出て来ているということの証明ですし、たとえば2号機の圧力抑制室というとこで爆発があって壊れたというのは、東電自身が認めている訳で、それは格納容器が壊れたのと同じことなんです。

(水野)そういうことなんですね。最後の砦といわれる格納容器がどこか一部分破損している。

(小出)一部分壊れている。

(水野)この状態で今、放射性物質が漏れだしてる訳ですよね。で、原子炉の中にある水、冷却水の1万倍のレベルの濃度が出てると。これは、これを止める事はできません?

(小出)できません!

(水野)で、できません?

はあ〜。格納容器を修理することはできないのですか?

(小出)こんなときには、もちろんそんなことは到底できません。

(水野)つまり、近寄れないということですか?

(小出)はい、はい。

(水野)はあー。例えばほんとに素人考えで申し訳ありません。

あのー格納容器も全部含めてセメント詰めしてしまって、放射能を出さないようにするということはできないんですか?

(小出)最後の最後にはそれをしなければいけませんが、今はとにかく炉心という部分が融けて、原子炉圧力容器が水蒸気爆発をその中で起こさないように、起こしてしまうと、ほんと破局的になってしまいますので、なんとしてもしても原子炉を融かさないために水を送り続けるということが何より一番大事です。

(水野)はー。

(小出)コンクリートで埋めてしまうとかより前に、まずそれをやらなければいけない。

(近藤)先生、その冷却の作業とか出来るんですか?

(小出)これまで2週間格闘してきてるのですね。なんとか原子炉が破局的に壊れないようにしようとして、東京電力の所員の人たちが必至に作業して来て、今なんとか持ちこたえてきてここまできてるわけです。

すべての電源が使えなかったわけで、福島の所員の人たちは消防用のポンプ車をつれて来てなんでもいい、なんとか水を入れようとして海水を入れたんですね。

海水を入れてしまえばもう二度と原子炉としてはもう使えないということがわかっているわけですけれども、海水でも泥水でもいいからとにかく原子炉の中に水を入れなければいけないということで、今日まで2週間頑張ってきているわけです。そのおかげで破局的な破損というものを防いで今に至っている。

(近藤)その損傷しているから今の事態が起きている。そうすると復旧作業それは相当な影響をうけますよね。いま海水じゃなくて真水をかけようってことを米軍と一緒にやろうってそれは要するに海水がもうだめだってことですか?

(小出)もともと海水というのは塩を含んでいるですね。

塩を含んだ水を原子炉の中に入れると水はすぐに蒸発しちゃうんです。そうすると塩分が残るんですね。塩がどんどんどんどん圧力容器の中にたまっていくという、そういう状態になってるはずです。

(近藤)その弊害が出始めてる訳ですか?

(小出)はい、そうすると燃料棒というものが原子炉の中に突き立ってるわけですけれども、あっちこっちに塩がどんどんどんたまってくることになると水が流れなくなって燃料棒を冷やす事も出来なくなるだろうと。

おまけに、塩といものは水に溶けながらまわっているわけで、あっちこっちのバルブとかですね弁とかにくっついてですね、もしほんとうにバルブ、弁を開きたくなったときにひらけないということがあるかもしれませんし、ポンプを回したいと思ってもポンプにまた塩がくっついてポンプが動かないということがあるかもしれない。

ですからもともとほんとうは海水はやりたくない。なんともしょうがなくてやってきたんです。もし海水じゃなくてふつうの水を使えるのであれもちろんいいことですし、それをやろうとしてるところです。

(水野)これあのせっかく命懸けで作業をしてもらってる訳ですけれど、たまった水でそこで放射性物質が今回被曝を作業員の方がされたとなりますと、作業を続けるためにたまった水を排水しなきゃいけないということですが


(小出)はい、作業のためにはそれが一番いいとおもいます。

(水野)それはどの程度の難しい作業なんでしょうか?

(小出)排水をしようと思うと、地下にたまってるわけですから、排水をするためにまたポンプを動かさなければならないと思います。そのために地下にピットという槽があると思います。

そこの槽は排水を送るためのポンプですね。そのポンプがすぐに動くのであれば送れると思います。それが動かないというのであれば水中ポンプという別のポンプを入れて作業をすることになると思います。

いずれにしても大変な困難です。

(近藤)あのう、先生ね、一進一退といってしまえばそれまでなんですけど、要するに今の状態ていうのは悪化していっているんですか?

(小出)えーと、ずっど悪化してきました。

でもこの数日は、悪化も食い止めてるし、好転も出来ないという状態だと思います。

(近藤)先生、以前わたしの番組に出た時の先生のお言葉で「祈る思いだ」「祈りたい」っておっしゃってましたよね。先生の「祈りたい」っていうのは、同じですか?

(小出)はい、もう私には東電の社員のひとたちが頑張ってくれるしか手の打ちようがないと思います。私が自分でできるなら何でも自分でやりたいと思いますけれど、東電の今の現場を知ってる人たちがやってくれる以外には手の打ちようがないと。

(近藤)つまりわたしが言いたいのは、先生の祈りが通じているほどのものでもないわけですね、今。

(小出)はい、残念ながらその最悪のシナリオというものを私自身がなくなった思うほどには好転していないのです。

(水野)今回、作業していて被曝なさった方たちが、線量計のアラームが鳴っていたのにそれを故障だと思い込んで作業を続けていたと。これ、びっくりするんですけどね。こういうことって専門家の方から見たらどう見えるんですか?

(小出)私から見るとあり得ないと思います。ただし、二つのシナリオが考えられると思います。ひとつは現場に3人の方が行かれたというんですが、ひとりの方は契約会社の社員だったと、たぶん私は東芝のい社員だと思うんですけど設計してよく知ってる人ですね。

その人は長靴を履いていたんだそうです。あと二人の方は東電の直接の関連会社方だと。新聞報道でありました。要するに下請けですね、その人たちは長靴すら履いていなかったということで私はちょっと驚きました。

極端なシナリオを二つ考えてるんですけど、ほとんど知識のない人が現場に行ったということ。それだからアラームメーターの何すら知らない、それで行って知らないまま水に入っても大した危険もないと思って、そこで作業したという極端なシナリオがひとつのシナリオですね。もうひとつのシナリオは十分に知っていたと。アラームメーター鳴ってその意味も知っていたと。

でも自分たちの仕事をしなければ、今の危機を救う事ができないと。だから、行ってみれば水があることがわかるわけですよね。自分が履いているものが長靴でないこともわかる。でもたぶんそこまで彼ら何百メートルも走ってきてるです。暗いなか懐中電灯をもって彼ら走ってるんだと思うんです。

そこに着いたんです。何か仕事をしなければ今の危機を乗り越えられないと思ったときに、この水は汚れてると知りながら入りという人はいると思います。

(水野)うーん

(近藤)覚悟でですが?

(小出)はい。極端な私の描くふたつのシナリオです。でも、それほど困難な作業なのです。

(水野)あのう、ということは、ほんとうに短い時間しかお一人が作業でる時間がない。

(小出)それは、もうみんな承知しているのです。

(水野)あのうほんとうに多くの作業員の数を確保するということも必要なのでしょうけど。

(小出)これから必要になります。どんどん。

(水野)はー、そうですか。そんなに多くの専門家はいはるのですか?

(小出)えーと、ますます少なくなっていくと思います。特殊技能を持った人がやらなけばならない事が多いはずですか。そういう人がどんどん少なくなっていくときに、知識のない人、いわゆるなんて言うんでしょうね、巷でいう鉄砲玉みたいに使われるひとも含めて被曝させられて行くのかなと思います。

(水野)そうであっては困るのですが、ラジオネーム、レオトラさんから宇都宮から聞いているということで、メールくださいました。

栃木でもこの原発の影響で水道水を信頼して飲めないような状況なりつつあります。非常に不安な状況です、とおっしゃってるのですが、今回20q〜30qの圏内の人たちに、自主的な避難を呼びかけるということになりました。これは、避難指示は出さなくて大丈夫だと、小出さんはお考えになります?

(小出)えー、私はその報道を聞いて、なんて言うんでしょうね、私はあんまり感情的な事を言ってはいけないという職業にいるのだと思いますけど、怒りを抑えることができません。

この政府はなんと汚い政府かと(怒)

(水野)はー

(小出)ほんとうに必要なことであれば指示を出して逃がさなければならないのに、自主的に逃げろって、一体どういうことを言ってるのかと。

(近藤)そこは先生やっぱなんかね、アリバイなんですよ。

(水野)なんですか、それ!

(近藤)とりあえずそういうことを言ってただろうってことを、とりあえず言ってるわけですよね。

(小出)そうですよね。非情な政府ですね

(水野)あのう、福島の地域の一部で出ていた1.4ミリシーベルトっていうのは、どういう意味のある値ですか?

(小出)だって、普通の皆さんは1ミリシーベルト以上浴びてはいけないと政府が決めているんですよ。それを1.4浴びてしまったって、そのことに対して一体政府はどういう責任をとるつもりなんでしょうか。

私は放射線業務従事者という非情に特殊な放射線作業に従事する人間ですけど、そういう人間が入る放射線の管理区域という場所でも3ヶ月に1.3ミリシーベルト被爆するようなところ、要するに管理区域なんですけれど、管理区域でもなんでもないところで何日間の間に、1.4ミリシーベルト浴びてしまった。

そんなこと、到底あっってはならないことなんです。それに政府が何の謝罪もしない、勝手に逃げろなんていうのは一体どういう政府なのかと私は思います。

(水野)そういう意味をもった数字だったんですね。

小出先生また来週も、ぜひ来週もお話うかがわせて下さい。正しいを情報を私たち、入手して考えていきたいと思います。

今日もどうもありがとうございました。

京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんに伺いました。