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東京工業大学の学長選挙で一位指名を受けた候補者が、何と2回にわたって研究費の一部を業者にプールしていた問題で学長を辞退していたが、やっと最近になって3回目の学長選挙で学長が決まったそうである。 一回目
二回目
三回目
何とも異常な事態であるが、問題は単に学長選挙で第一位となった候補者の研究費問題だけでないようだ。 しかし、いわゆる国立大学が故橋本龍太郎氏が首相だった頃に行った行政改革によって国立大学も独立行政法人(実際には国立大学法人)となったとき、学長選挙が次のような手続に変わっていたのである。 すなわち、従来、大部分の国立大学では、たとえば助手(現在、助教)、准教授、教授がそれぞれ1票をもち、全学的な学長選挙を行い、その結果、第一の得票数を得た候補が、学長に就任していた。 しかし、国立大学法人となった後は、まず、従来同様、助手(現在、助教)、准教授、教授がそれぞれ1票をもち、全学的な学長選挙を行い、その結果、第一の得票数を得た候補に対して、学長選考会議なる会議が設置され、そこで審理され承認された候補が学長になることになったのである。 しかも、学長選考会議のメンバーは、学内外から選ばれることになっており、東京工大の場合は、東京工大卒業者(OB)が選考会議メンバーとなっているようだ。 以下は、規約にある学長選考会議の委員選定方法である。 第2条学長選考会議は,次に掲げる委員をもって組織する。 一国立大学法人東京工業大学経営協議会規則(平成16年規則第4号)第2条第1項第3号に掲げる者の中から,国立大学法人東京工業大学経営協議会(以下「経営協議会」という。)において選出された者5人 二国立大学法人東京工業大学教育研究評議会規則(平成16年規則第5号)第2条第1項第3号から第10号に掲げる者の中から,国立大学法人東京工業大学教育研究評議会(以下「教育研究評議会」という。)において選出された者5人 三学長が指名する理事・副学長1人 第2条の二と三は、まだしも第2条の一にある経営協議会に東京工大卒業者(OB)として参加しているようだ。そこでメンバーを調べてみると以下の通りである。
しかし、何とも不可思議なのは、全学的に専任教員により選ばれた候補者を、さらに学長選考会議なる会議で審議して決めることが理解できない。 閑話休題 調査を進めると、「選択」というインターネット上の有料雑誌で次のような見出しとリードの文章を発見した。
確かに経営協議会委員に(株)日立製作所相談役、一般社団法人蔵前工業会理事長 として庄山 悦彦氏が在籍していることは間違いない。 また原子力村のひとつの中核となってきた「日本原子力文化振興財団」の役員リストを見ると理事長が三菱マテリアル名誉顧問 秋元勇巳氏。理事には木誠関西電力社長、清水正孝東京電力社長(当時)、玉川寿夫民間放送連盟常勤顧問、加藤進住友商事社長、庄山悦彦日立製作所相談役、佃和夫三菱重工会長、西田厚聡東芝会長、林田英治鉄鋼連盟会長などの名前が並ぶ。 ここにも庄山悦彦日立製作所相談役が間違いなく含まれている。 もちろん、このことと3度にわたった東工大学長選挙における学長選定過程との関連については、いまのところわかない。また、「選択」の記事との関係も調査未了である。これについては、さらに調査を進め、結果を公表したい。 ただ言えることは次のことである! いずれにせよ、異常なのは、専任教員全員の直接選挙で選ばれた候補者を学長選考会議で候補者案をその是非を審議することである。これは、たとえば、自治体の首長にたとえて見ればいかに異常な制度であるかが分かる。 ある県で県民によって選ばれたA知事候補が、その後、知事選考会議で審議され、可否が判断されることなど、あり得ないことであるからである。 このような学長選考会議の存在が、結果的に原発開発に限らず学長選挙を特定利害を誘導する場になりかねないことを文部科学省は知るべきである。 |