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つまり、いくら国民総所得(GDP)が大きくても、結果的に一人当たりGDPが少なければ幸福度は上がらないということを意味している。上の表からは、一人当たりGDPで日本より上位にいる国々は大部分が幸福度でも上位にいることも分かる。 ◆日本人(世帯)の平均年収の推移 日本人(世帯)の平均年収の推移である。見て分かるように、日本の給与所得者の平均年収そして1世帯当たりの平均所得金額はいずれも、単調な右肩下がりとなっている。 図 日本人(世帯)の平均年収の推移 出典:民間給与受給実態調査 たとえば給与所得者の平均年収は1999年に約460万円だったものが、2008年には約430万円に、1世帯当たりの平均所得も平成8年に約680万円あったのが平成17年には約600万円へと大きく下がっている。 巨大上場企業が税引き後の利益を内部留保している日本では、労働者とりわけ非正規雇用の労働者には所得が移転せず、働けど働けど実質所得はどんどん下がっている現実もあるだろう。 2011年3月の大震災以降、さらに全国平均値が下がっていることが推察される。 ◆日本人の貧困率、とくに高齢者、女性層は深刻 知人の奥さまが以前から貧困率を研究していると伺っていたので、調べてみたら確かに「日本における貧困の実態」(国立社会保障・人口問題研究所、阿部彩)という報告書(パワーポイント)がでてきた。 当然のことだが、これら貧困率は、ミシガン大学の幸福度指標やOECDの国民幸福度指標に密接に関わるはずである。そこで幸福度、不幸度問題を、阿部彩氏の貧困率調査報告から見てみたい。 まず、阿部彩さんが考える貧困の基準(定義)は以下の通りである。 一次元の貧困基準では、主に消費または所得をその人の生活水準の目安としており、それを貧困線と比較して貧困か否かを決定とある。この場合、貯蓄や財産は考慮していないとしている。 次に、多元的な貧困基準では、上記の貨幣的な指標のみならず健康、栄養、社会性など多くの次元で貧困線を設定している。しかし、ミシガン大学の社会指標のように個人の価値観、自由、社会性、民主性などまでは考慮していないとされる。 出典:「日本における貧困の実態」(国立社会保障・人口問題研究所、阿部彩) 以下は、国際比較から見た日本の貧困である。原典はOECD資料である。 これによると、日本は全人口の約15%が貧困にあり、貧困率がメキシコ、米国、トルコ、アイルランドに続き、世界第5位にあることが分かる(赤で表示部分)。逆に貧困率が低い国は、チェコ、デンマーク、スウェーデン、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェー、フィンランドとなる。 図 国際比較からみた日本の貧困 原典:OECD 出典:「日本における貧困の実態」(国立社会保障・人口問題研究所、阿部彩) 一方、以下の65歳以上の高齢者に焦点を当てた貧困率比較では、日本は、アイルランド、ポルトガル、メキシコ、米国、ギリシア、オーストラリアに次いで世界第7位にある。逆に貧困率が低いのは、ニュージーランド、オランダ、チェコ、カナダ、ポーランドなどの諸国である。 図 国際比較からみた日本の貧困(高齢者) 原典:OECD 出典:「日本における貧困の実態」(国立社会保障・人口問題研究所、阿部彩) さらに、以下のグラフは勤労世代に限ってみた貧困率である。 ワーストワンはメキシコ、第2位が米国、日本は第3位にある。 逆に、チェコ、ルクセンブルグ、デンマーク、スウェーデンなどの国々では、勤労世代の貧困率は低くなっている。 図 国際比較からみた日本の貧困(勤労世代) 原典:OECD 出典:「日本における貧困の実態」(国立社会保障・人口問題研究所、阿部彩) 阿部彩氏は、さらに属性別の貧困率を分析している。 以下のグラフを見ると、当然と言えば当然だが母子世帯、女性高齢者、女性単身勤労世代、勤労母子世代などの貧困率が非常に高いことが分かる。 図 属性別の貧困率 出典:厚生労働省平成14年所得再分配調査、阿部彩2008 さらに、以下は配偶関係別の貧困率である。 貧困率が高いのは、未婚高齢者、離別高齢者、離別勤労世代などである。男性、女性では女性の方が貧困率が高くなっていることが分かる。 図 配偶関係別の貧困率 出典:厚生労働省平成14年所得再分配調査、阿部彩2008 以下は、上記をもとにした世界における日本の貧困率についての総括である。
つづく |