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瓦礫の受入しなくても
交付金のからくり
池田こみち
掲載月日:2013年3月10日
 
独立系メディア E−wave
無断転載禁

 
 東日本大震災から丸二年ということで、メディアはこぞって特番、特集などを組み、福島の現状、被災地の実態などを報道している。瓦礫に関する報道は最近大幅に少なくなっているが、その中で、瓦礫の受入をしなくても国からの交付金をもらえる(返却する必要がない)ことを2月24付け毎日新聞をもとに紹介した。

◆池田こみち:環境省の杜撰な復興予算の私物化
http://www.eritokyo.jp/independent/ikeda-col1305...html

 これについて、なぜこのような非常識かつモラルにもとる事が堂々と行われているのか不思議に思って過去の経緯などを改めて調べてみたところ、なんと、環境省が平成24年3月15日付けで全国の自治体に通達を出していたことが分かった。


環境省が平成24年3月15日付けで全国の自治体に出した通達
出典:愛知県がれき広域処理問題を考えるブログ

 タイトルは、「循環型社会形成推進交付金復旧・復興枠の交付方針について」というものだ。その内容は概ねつぎのようなものである。

●その目的

 この交付金は、平成23年度第三次補正予算に続き、24年度予算においても、通常枠の予算に加えて、復旧・復興枠予算を計上し、被災地におけるがれきの処理能力の向上と広域処理促進のために受入可能性のあるごみ処理施設整備のための予算となっている。

 通常枠の予算に「加えて」となっているので、自治体によっては通常枠+復興
枠でかなり高額の交付金を得ることも可能となるということだ。

●その対象事業

 復旧復興枠で交付する事業として

1.特定被災地方公共団体である県内の市町村等が実施する事業

2.@市町村等が実施する事業の内、諸条件が整えば災害廃棄物の
   受入が可能と考えられる処理施設の整備事業。
  A竣工時期等の問題で、現在整備中の処理施設では受入が
   むずかしいものの、他の既存施設で受け入れたことにより、
   その既存施設で処理する予定であった廃棄物を処理すること
   となる可能性がある当該整備中の処理施設の整備事業

 上記の1は、被災地域の基礎自治体の事業ということなのでまだ、交付金を出す必要性も理解できるが、2.の方は日本語の文章としても意味不明なほど理解できない。

@については、そもそも「諸条件」とは何を指しているのか。いやしくも復興増税を宛てる交付金について、どのような条件かぐらいは明記すべきである。例えば、輸送距離、処理能力、設備の緒元、維持管理状況、周辺土地利用など様々な条件が考えられる。
Aは、簡単に言うと、現在建設中の焼却炉で処理予定期間中には受入が難しい場合は、既存施設で受け入れても交付金の対象とするというものである。

 さらに驚くことには、「受入条件の検討や被災地とのマッチングを実施したものの、結果として災害廃棄物を受け入れることが出来なかった場合であっても、交付金の返還が生じるものではありません。」と明記されている。さらに、通達の最期には、「復旧・復興枠の対象となる事業については、震災復興特別交付税により地方負担分も措置される予定です。」とあり、瓦礫を受け入れれば、本来の予算枠の交付金では最大1/2までしか国の補助が得られないものも今回は100%国が丸抱えで面倒を見るというのである。

 こんな通達があるからこそ、検討しただけで、受け入れなくても交付金を貰って返さないということが堂々とまかり通っているわけである。納税者からみれば、明らかに不当かつ不適切と思われる税金の使い方だが、国から市町村まで役人はそれを疑問に思わないといのだからあきれる。

 この件について、テレビ東京がニュースで取り上げていた。

★テレビ東京:特命Dが行く! “不可解”な復興予算の使い道
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/newsanswer/feature/post_36786/

注:これは動画から静止画化したものなので動きません!
出典:テレビ東京 

 そのニュースの中で、記者が石原環境大臣に直撃したところ、大臣は、「それについては、それぞれご努力いただいたということで交付していると承知している」と答えている。

 埼玉県川口市は、平成24年12月、現在の焼却炉(ガス化溶融炉)が折しも回収中だった時期に環境省から受入の打診があり、検討を行ったが、最終的に今年になって瓦礫の量が大幅に減ったことから受入中断を検討した。しかし、交付金は18億円が支払われた。市の担当者は「それは国の定めたことであり、市として返却するという立場にない」と答えている。

 また、瓦礫がなくなってきていることが明らかになり、各地域で広域処理の受入終了が発表された今年になって、瓦礫の受入を表明した富山県高岡市では、現在、周辺の自治体と共同で新しい処理施設を建設中とのことで、その建設費に充当することを当てにしていると批判が高まっている。

 高岡市については、以下の愛知県がれき広域処理問題を考えるブログ(あざらしサラダ氏)を参照していただきたい。

★あざらしサラダブログ:高岡市が瓦礫受入に必死な理由は「38億円」目当て?
 http://azarashi.exblog.jp/17274782/

 こうした詐欺まがいの補助金・交付金ばらまきが行われる背景に、日本の廃棄物処理の異常なほどの焼却偏重があることは間違いない。そして、3.11以前は、省庁の中でも予算の少ない弱小官庁だった環境省が瓦礫処理だけで1兆円超の予算を手にして、常軌を逸して省益に執着したことが上げられる。

 震災発生から二年も経ったというのに、未だに帰る家もなく、職もない被災地の現状をどう考えているのだろうか。

 この間、瓦礫の処理に投じられた1兆超の税金をもっと必要なところ、優先順位の高いところに振り向けることができたらどれほどよかったことか、改めて怒りがわいてくる。