|
|
●21世紀に生き残れる地域は多数ある スカンジナビア諸国が切り開いたモデルは、環境だけでなく、教育、福祉、平和外交、NPO/NGO活動などで傑出している。 しかし、それ以外にも世界各地、各国のなかにもグローバリズムから取り残された地域に21世紀に生き残れる地域モデルの一端をかいま見ることができる。 そこには非市場主義、同時に非計画経済的な「持続可能な社会モデル」がある。G8諸国に象徴されるグローバル経済や粋すぎた市場経済モデルは、結局一蓮托生モデルと言ってよい。 もちろんEUのようにそれなりにがんばっている地域モデルもあるが、やはりイギリス、フランス、ドイツなどG8諸国の中心にあるのは、「物的、経済的成長」を追い求める姿勢だ。 これではEU諸国も早晩、地球規模でのクライシスから逃れることはできない。 では、スカンジナビア諸国以外に21世紀に向かうべきモデルはないのかといえば、決してそうではない! たとえば、同じEU内にあっても、10世紀頃から今日までつつましやかに持続的有機的な発展を継続している旧都市国家や地域がある。これらの地域は成長を一義とせず、小さくともキラリと光る成熟した地域である。そこではグローバリズムの影響、被害が少ない自律した社会経済モデルがある。 イタリアやクロアチアなど、かつての都市国家。ルーマニア、ブルガリアの農村。かつてソ連の衛星国家であり現在、独自の道を歩むウクライナの農村。有機農業で食糧自給率を高めた再生キューバ。さらにカナダのノバスコシア州やオーストラリア・ニュージーランドの農村地域などである。 ●持続可能性はあくなき成長路線の廃棄からはじまる (1)アマルフィ海岸の旧海洋都市国家 下の写真は南イタリアのかつての一大海洋都市国家、アマルフィである。 アマルフィやポジターノといったイタリアのアマルフィ海岸地域(Amalfi Coast)は、ローマ帝国時代以降の10世紀頃から現在まで、まちのありようは大きく変わらっていない。断崖絶壁という厳しい地形のなかで、人々は質素ではあっても、優雅に誇りを持って生きている。産業はといえばオリーブ、レモンなどの農業と世界的に見て希有な環境資源をもとにした観光であり世界遺産都市であるる。 南イタリアのかつての海洋都市国家、アマルフィ(世界遺産) 写真:青山貞一 2008年2月撮影 (2)アドリア海の真珠、専守防衛、自治・自助のまちドブロブニク 下の写真はクロアチア最南端の小さくともキラリと光るドクロブニク(Dubrovnik)である。 ドブロブニクも9世紀以降、ラグーサ共和国、一大都市国家として今日まで持続的発展を遂げている。おそらく欧州一小さいが傑出したすばらしいまちだ。 ドブロブニクはアドリア海の真珠と呼ばれている。ドブロブニクの外交の基本は専守防衛である。 まちづくり、政治、高齢者福祉、医療などをすべて市民の自主的、自立的、自助的活動で行っている。中世のタイムスリップしたような小さな落ち着いた精神文化豊かな海洋都市国家であり世界遺産都市である。 南クロアチアの都市国家、ドブロブニク(世界遺産) 写真:青山貞一 2007年3月撮影 (3)ウクライナのひまわり畑と循環型農村 黒海の北にあるウクライナには広大なひまわり畑がある。この地は、かつてのシルクロードの西のはずれとされている。 そこで生活する人々は、ひまわり栽培と農業、家畜を中心に自給自足的な生活を営んでいる。そこにはG8のグローバリズムの影響はほとんど及ばない。 ひとびとは土と水を大切にし、ひまわり栽培と必要最低限の農作物栽培を代々続けることで、質の高い生活を持続している。 ウクライナのひまわり畑 出典:NHK BShi (4)カナダの異端児、ノバスコシア州のルナバーグ 次は、カナダの異端児(州)、ノバスコシア州である。G8であるカナダのなかで、この地は別世界である。ノバスコシア州は州を上げて循環型社会を市民参加で行ってきた。 ちなみにノバスコシアはNew Scotlandの現地読みであり、もともとは欧州のスコットランドから移住した人々によりつくられた地域である。現在は赤毛のアンで有名なプリンスエドワード島などと同様、カナダの州(Province)の一部となっている。 もともとは厳しい寒村にすぎなかった地域は、現在、世界屈指の海洋資源(魚介類)と共存した持続可能なまちとなっている。 下の写真はノバスコシア州が先進国の都市で最初に循環型社会構築を行うきっかけとなった小さな漁村、ルナバーグである。州都ハリファックスはじめノバスコシア州は漁業が大きな基幹産業となっている。 そのためゴミを燃やしたり埋め立てることは自らの産業を破壊することと強く認識し、日本でゴミとされている一般廃棄物の大部分を5R政策により、削減、再利用、資源化してきた。それも市民参加、NPO参加、企業参加で。。。 ノバスコシア州ルナバーグ(世界遺産) 写真:青山貞一 2003年9月撮影 ノバスコシア州ルナバーグ 写真:青山貞一 2003年9月撮影 (5)キューバの有機農業首都ハバナ 人間にとって最後のよりどころが食糧である。日本の食物自給率は39%にすぎない。今後、小麦、大豆などの主要穀類の価格が暴騰すれば、G8諸国でも食糧難が起こる。 おそらく世界の最貧国に近かったキューバは、東西冷戦崩壊後、旧ソ連からの支援が打ち切られ、他方、米国からは敵国扱いを受け、ひとびとは毎日食べる主食にすら事欠いていた。 写真:キューバの首都、ハバナの有機農業 出典:資料写真 孤立無援のキューバを救ったのは、首都ハバナの遊休地、空き地で市民参加で行った有機農業であった。農薬、殺虫剤、化学肥料を使わずにつくる野菜や穀物が首都ハバナの人口をまかなうまでになり、現在、自給率100%超となっている。 おそらく日本の首都、東京の野菜や穀物の自給率と言えば、数%にも満たないだろう。ひとたび食物価格の暴騰、需給の逼迫が起これば、油上の楼閣、ニッポン、なかんづく首都東京はひとたまりもない。 日本はキューバを嗤えないのである。 写真:キューバの首都、ハバナの有機農業 出典:資料写真 今まで紹介してきたまち、地域の多くはノバスコシア州のルナバーグを含めいずれも世界遺産である。世界遺産は、まさに名の通り、歴史や自然と共生し、人間の社会的営為としての文化を継承することを意味する。 一時の経済的繁栄ではなく、孫子の代まですばらしい環境や歴史的資源、それに地域の産業を継承することこそ、今、我々に問われている。 これらの地域やかつての都市国家は、「つつましやか」に、そして「したたか」に持続的社会づくりを普段着でおこなっている。まさに小さくてもキラリと光る地域づくりを住民自身の手でおこなっているのである。 いずれにせよG8諸国などグローバルな市場原理主義諸国に将来があるとは思えない。 私たちは早く飽食と浪費、環境破壊の泥船から脱皮、脱却し、上述の新たなモデルを模索することが問われている! 終わり |