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洞爺湖サミット(5)

G8には世界的課題の処方箋は書けない

青山貞一
掲載月日:2008年7月10日
無断転載禁



自ら原因となっている世界的課題に何ら処方箋が出せない

 元来、G8は直近の世界的課題である原油の高騰、主要穀物の高騰など、米国さらにはG8諸国が原因となっている深刻な生活物資の高騰にどう対応するのか、それもグローバル化しているG8の投機筋をどう規制するかこそ、世界の国民の最大の関心事であったはずだ。

 しかし、すでに私が何度も触れているように、G8ではこの主題に正面から取り組むことはなく、今後、秋、冬に向け、より一層、世界の投機筋は、世界数10億人の生存の基盤を失わす金儲けに深入りする可能性は高い。

 なぜこうなったのか? 

 理由、原因は簡単である。現在、世界中で起こっている重要事は、いずれもG8諸国がこの間してきたことの延長線上で起こっているのである。そもそも経済成長一辺倒しかないのがG8諸国である。さらに金融、経済、証券、債権のグローバル化こそ、世界的規模での問題の核心だ。

 その結果として起こっているあらゆる弱肉強食化、格差社会化もG8諸国が原因となっている。米国に端を発したサブプライムローン崩壊による世界同時株安、投機マネーや各国政府関連機関の資金運用の原油、穀物などの先物取引への洪水的流入、後先を見ずに敢行されているトウモロコシなどのバイオ燃料化など、どれをとってもG8起源の世界的重要課題だ。

、さらに洞爺湖サミットの最中、TBSが特集し続けたアフリカの現状、実態は米国流、さらにG8流の経済支援が新手の途上国収奪や植民地化としかなっていないことを示した。

 図1は、アフリカ諸国がかつて植民地支配されていたときの宗主国を示している。図より分かるように、フランス(濃紺)、イギリス(ピンク)、ドイツ(黄土色)、イタリア(グリーン)とG8のうち4カ国がアフリカ諸国を植民地支配していたことが分かる。


図1 アフリカ諸国の植民地時代の宗主国
   出典:Colonization of Africa.


●G8は世界の環境や経済を悪くしている当事者である!

 途上国援助、最貧国援助のの名の下に行われているアフリカの農業・食糧支援が結果的に地域の自立的農業、食糧供給を破壊している深刻な問題である。米国流の遺伝仕組み変え種子、農薬、農機具のワンセット援助という売り込みは、結果的に地域で芽生えた有機農業による自立型農業の芽をつみとるだけでなく、途上国の債務を増やし、農民、農村を破壊させている。

 自らが原因をなしているG8の首脳が集まっても、本質的な問題解決の糸口が見つかるはずはない。G8流の国家モデルはすでに破綻しているにもかかわらず、G8諸国がしていることはその傷口を拡大し、罪のないつつましやかな途上国をさらなる絶望の淵に追いやっている。

 以下はまるで人ごとのような米農務省の2007年の食糧不足人国が前年に比べ1億人増えたという報告。同報告では、2017年までに料不足人口は12億人に増えると指摘。特に、アジアで改善傾向が減速し、人口の約20%が低栄養状態に陥るという。一体どの国が食糧不足の原因をつくっているか、が問題である。

食料不足人口が1億人増加 米農務省報告 (共同通信)

 【ワシントン9日共同】米農務省は9日までに、食料と燃料の価格高騰が原因で、07年の世界の食料不足人口が、前年に比べて推定1億3300万人も増加し、9億8200万人になったとする食料安全保障の年次報告書を発表した。食料と燃料の価格高騰と世界経済の低迷により17年までに食料不足人口は12億人に増えると指摘。特に、アジアで改善傾向が減速し、人口の約20%が低栄養状態に陥るという。

共同通信 2008年7月10日10時2分


 結局、警備などで500億円、警備以外で数100億円(推定)を費やした洞爺湖サミットは終わったが、G8では自らが原因そのものとなっている温暖化問題のみならず、これまた米国を中心にG8諸国が原因となっている原油や主要穀物の高騰について、徹底した原因究明や対策の具体策は触れぬまま終幕を迎えてしまった。

 いうまでもなく、現在、アフリカ諸国の国民はその日食べる食料がない状況にあり、今後とも何ら改善の兆しが見えない状態にある。洞爺湖の立派なホテルの一室で、これ以上ない豪華な食事で首脳やファーストレディーが談笑する姿はそれらの人々にどう写ったであろうか?

 世界各国の国民にとって、これほどむなしく無駄でむなしい首脳会議はないだろう。さらに言えば、戦後史のなかでこれほど形だけで中身のない国際会議を探すのは難しいとさえ思える。


●米国追随のメメシイ日本は、拉致問題でも半歩後退

 洞爺湖サミットでは、日本人の北朝鮮拉致問題を議論したとされている。そして藁をもつかみたい拉致家族は、米国に追随する「貢ぐ君」日本に最後の期待をかけたはずである。

 しかし、
2008年7月7日の共同記者会見で、福田首相は「北朝鮮の核申告の検証、拉致の解決は重要、日米緊密に協力したい」と述べ、ブッシュ大統領も「福田首相から(横田)めぐみさんの本をもらった。私も娘がいて、突然いなくなることが大変だということはよく分かる。米国は日本を見捨てることはない」と、およそ国家の首脳同士が、この場に及んで言うような内容ではない気休め的言い訳に終始した。

 「日米緊密に協力したい」と福田首相は述べているが、一体何をどう協力したいのだろうか? そもそも日本政府はすべての下駄を米国に預けていた結果、現状の結果となっていたのではないか? さらに4ヶ月後に退任する米国大統領に問題解決に向かう厳しい具体的提案をメッセージ化することなくして、北朝鮮は動かないだろう。そもそも北朝鮮はそういう日本の足下を見続けてきたのである。

 結局、拉致問題では、半歩前進すらなかったばかりか、公衆の面前で日本の外交能力のなさ、不作為ニッポンをまざまざと見せつけてしまった。北朝鮮の高笑いが聞こえてくる。また外交能力において日本は北朝鮮を嗤えない。

 語弊があるかも知れないが、日本の外交能力は北朝鮮の数分の1もないのが現実である。それをまざまざと世界に見せつけたのがG8であった。遺族にしてみればこれ以上やるせないことはなかっただろう!


つづく