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洞爺湖サミット(2)

超豪華食事をとりながら
世界の食糧難を議論する愚

青山貞一
掲載月日:2008年7月9日
無断転載禁



●やはり2050年に50%削減の目標かという重要課題は先送り
 
 2008年7月8日、G8レベルで温暖化対策、とりわけ2050年で二酸化炭素排出の半減という大課題だが、福田首相がどうブッシュ米大統領を説得するかにすべてがかかっていた。

 だが、案の定、ブッシュ大統領は中国、インドなど新興国の参加がなければ目標設定は意味がないという持論を展開、結局、2050年までに世界全体で温室効果ガスを少なくとも半減させる長期目標は「気候変動枠組み条約の全締約国と共有し、採択することを求める」など、まるで他人事のような抽象的な合意にとどまった。

 ひとことで言えば重要課題の先送りである。本来、温暖化の主要な原因国である8カ国が集まった洞爺湖サミットでは、先のドイツにおけるG8合意を前進させ、2050年までに世界全体で温室効果ガスを50%削減を合意し、中間目標をG8諸国に義務づける必要があった。

 洞爺湖サミット(1)で述べたように、地球温暖化の主因は、G8など世界の金持ち国に責任の半分以上がある。 G8などの西側先進諸国が豊かで便利な生活を追い求めてきた結果、歴史的に植民地化され収奪されてきた貧しい国々が気候変動の影響、被害を最も受けている現実がある。

 にもかかわらずG8は問題解決を「締結国全体の問題」に戻してしまったのである。
そこには二酸化炭素の大口排出者としての責任感もリーダーシップは、みじんたりとも感じられない

 そもそもマイナス6%の宿題を達成していない日本が、偉そうに2050年でマイナス50%などと提案していること自体が、国際的信用を失墜させている現実をマスコミは直視すべきだ!いくら絵空事を抽象的に合意してみても、問題は解決しないからだ。


豪華な食事をしながらアフリカの食糧問題を議論の馬鹿らしさ

 ところで洞爺湖サミットでは、直近の世界的大問題でもある食糧需給の逼迫、とりわけアフリカなど世界の最貧諸国が米国のトウモロコシなど農作物を自動車の燃料とするバイオエタノール政策によって、世界的な穀物の価格高騰を招いていること、そしてもうひとつ米国のサブプライムローン破綻によって世界的な株価の低迷となり、投資の行き場を失った過剰投機マネーが原油先物だけでなく、穀物先物にも向けられた結果、実際の需給悪化以上に穀物価格が暴騰していることを、いかに是正させるかが本来の議題であったはずだ。

 7月8日深夜のTBSニュース番組では、世界の最貧国であるアフリカ西海岸のブルキナファッソを例に、1日1食の食べ物にもおぼつかな、ありつけない状態をつぶさに現地取材していた。現在、アジア、アフリカ、南アメリカ諸国を直撃している主要な食料価格の冒頭は、直接的には上述の米国のバイオエタノール政策や行き場を失った投機マネーが穀物先物市場になだれ込んでいることに大きな原因がある。

 しかし、その背景には、G8諸国はじめ先進諸国が過去半世紀以上、豊かさと便利さを追い求めるあまり、ただ同然の石油を湯水のように消費し、膨大な二酸化炭素を排出することで、さもなくとも砂漠化が進行しているアフリカなどの貧しい国々で砂漠化そして干ばつを悪化させてきたことがある。

 TBSが現地取材したブルキナファッソでは、雨が降らないことで地下水が涵養されず、井戸が枯れることで農業が立ちゆかず、さりとて輸入ものの食品の価格には到底手が届かないなかで、子供を中心にひとびとが死んでゆく痛ましい姿が映し出されていた。

 G8では、案の定と言うべきか、議長の福田首相はブッシュ大統領を気遣うあまり、ここでも米国によるバイオエタノール政策や投機マネーが穀物先物になだれ込んでいる現実に目をつむり、アフリカ諸国への経済協力などでお茶を濁した。

 英国の新聞がいみじくも一面で述べているように、「
G8首脳やそのファーストレディー達がこれ以上ない豪華な食事をしながらアフリカの食糧何について談笑している」ことがG8の全てを象徴している。

 G8諸国は、すべからく歴史的にアジア、アフリカ、南アメリカ諸国を植民地支配し、労働力を搾取し、生産物を収奪してきた国々である。現在深刻な食費の高騰や食糧難に陥っている国の多くは、それらアジア、アフリカ、南アメリカ諸国である。だが、彼らにとっては、アジア、アフリカ、南アメリカ諸国は未だ収奪の対象としか写っていないのだろうか?

 G8など西側富裕国に、問題の歴史的、構造的理解を促し、本質的な問題解決を期待するの到底無理であろう。

 洞爺湖サミット初日の7月7日、福田首相はアフリカ諸国にいわばカネを恵んだり、カネを貸し付けることを提案している。福田首相がいうところの経済援助、協力である。外交なき日本はどんな場合でも、経済協力、すなわちカネで相手国の口を封ずることしかしてこなったが、G8でもそれは同じだ。経済協力、援助と言っていれば誰も反対することはないからだ。しかし、カネを恵んだり、貸すことは、結果的に歴史的、構造的問題を隠蔽し、アジア、アフリカ、南アメリカ諸国の経済的離陸を抑制することにしかならない。


つづく