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中国はオリンピック開催を
延期し震災復興に全力を(



青山貞一

掲載月日:2008年6月1日

 
 日本のマスコミは四川大震災などどこ吹く風で、連日、北京オリンピック関連のニュースを垂れ流している。とくに、この一週間は、スピード社の水着問題でスポーツ報道は舞い上がっている。いずれにせよ、日本では結局、特番を組んでいるテレビや日本のマスコミが営業第一であって、災害救助や震災からの復興などどうでもよいのだろう。

 容易に推定できるのは、復興に数10兆円の資金とかなりの歳月が必要になることだ。中国で景気の良いのは特別市や沿岸地域など限られた地域であって、内陸や山岳地帯の経済状況は決してよくない。

 (1)、(2)ですでに述べたように、四川省を中心に7〜8万人近くの人々が亡くなる可能性が強くなっており、500万人が被災している。この現実を抜きに、北京オリンピックは語れないはずだ。さらに今後大雨が降れば30数カ所の地震ダムが決壊し、下流域の住民が呑み込まれる可能性は高い。

決壊迫り強制排水も=せき止め湖満水間近−四川大地震
2008/06/06-20:35 時事通信

【成都(中国四川省)6日時事】

 中国・四川大地震で四川省北川県の唐家山にできた巨大な「せき止め湖」が満水に迫り、中国政府の災害対策本部は6日、決壊の恐れが高まっているとして、水抜き方法を再検討し、土砂の排除など強制的な排水の検討に入った。

 中国中央テレビなどによると、対策本部は当初、決壊防止のため造った排水路による自然放水を想定していたが、爆破や土砂の排除を含めた強制的な水抜き策も検討。武装警察隊員がヘリコプターでせき止め湖の現場に入り、工事を進めている。7日未明までに水があふれる可能性があるという。

 温家宝首相は6日午前、綿陽市内にある決壊防止指揮部を訪れ、「直面する危険に対し、従来の方法か、新たな方法を取るか決断を急がなければならないが、最も重要なのは危険を回避することだ」と強調した。

 ところで、もうひとつ重要な問題がある。実はこれについてもマスコミはほとんど報道していない。それは四川省にある4〜5カ所の核関連施設からの放射能などの漏洩問題である。

 四川省で瓦礫の中に埋もれた未回収の放射性物質は、当初32個のうち2個と発表されていたが、これが最近になって50個のうち15個に増えている。

放射性物質15個の回収出来ず、倒壊恐れで 四川大地震
2008.05.24 CNN報道、

中国四川省・映秀

四川大地震で、中国環境保護省の呉暁青次官は23日、被災地で15個の放射性物質が崩壊した建物のがれきの下に埋もれており、国家核安全局(NNSA)要員が回収を試みていると述べた。AP通信が報じた。

地震を受け、約50個の放射性物質ががれきの下敷きになったが、うち15個は、場所は特定したものの、建物がさらに崩壊する恐れがあって近付けず、確保出来ないという。

放射能漏れはない。この放射性物質の種類は不明。外国の放射能専門家らは病院や工場が研究用で使うものと推定。

中国政府は四川大地震の発生後、震源地となった四川省にある核関連施設はすべて無事と主張している。

 一方、6月2日の電気新聞によれば、「....原産協会は、5月12日の四川大地震の発生を受け、中国の原子力関係者・機関などに、原子力関係施設への影響などを問い合わせるなど、幅広く情報収集活動を展開。原産協会ホームページ上では15日から逐次、得られた情報を整理、公表してきた。

 これまでの情報を総合すると、嶺澳、大亜湾、秦山、田湾の既設原子力発電所は、基本的に中国東側の沿海部に立地することから影響がなかったとしている。また、聞き取り結果などから、民生用の核燃料工場をはじめ、原子力関係の研究機関も被害はなかった。

 ただ、中国の有力な重電メーカーの東方電気集団、東方タービン発電機有限公司が甚大な被害を被り、原子力機器製造工場では、死傷者も出るなど、大きな被害を受けたことを確認。医療行為や産業活動で使用するRIは、いくつかの病院や建物の崩壊により、がれきに埋もれ、未回収のものがあるとしているが、放射能漏れは起きていない模様だ。

 軍事用の核施設は、これまでの人民解放軍幹部の発言やモニタリングなどの結果、放射能の漏えいは検知されていない。しかし、安全保障上の理由などから、中国政府の提供する情報量が少なく、実態は把握できない部分も多
い」ということで、中国は軍事機密を理由に実態を正確に公表していない可能性が高い。

 日本のマスコミはこぞって北朝鮮の核問題ではエキセントリックになっていたが、こと中国についてはなぜか腰が引けている。

 あれだけ巨大な地震に見舞われた四川省内に多くの核施設があるなら、当然、甚大な影響、被害が起きても不思議ではない。

 いずれにせよ、中国政府は四川大震災の復旧に全力を挙げるべきであり、各国はすぐ近くで、衣食住に事欠いている数100万人の住民をよそ目に北京オリンピックにうつつを抜かしていて良いのだろうか?

 国家社会主義国、中国に任せておけば、当然のこととして国威発揚のために四川大震災に手を抜いてでも北京オリンピックに資金を投入するだろう。

 現地では「四川大地震による豚肉の供給不足が深刻となっているという。四川省は、中国全体の11.6%にあたる5800万頭の豚を飼育し、年間2万5000トンもの豚肉を出荷しているが、今回、多くの養豚場や工場が損壊。大半の従業員も避難を強いられ、中華料理に欠かせない豚肉の流通が完全にストップしているのだ。北京五輪用に供給される至極のオリンピック豚の飼育施設も大打撃を受けており、選手の食事への影響も避けられない事態となっている」(出典:iza)とのことだ。

 しかし、当然のこととして、今必要なのは至極のオリンピック豚ではなく、欠食児童や一日一食にありつけない子供達に食事を提供することだ。

 そのためにも世界各国は、四川大震災復興のために北京オリンピックの延期を要望すべきではないか!そもそも今のオリンピックは、何から何まで商業主義に染まっている。