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EBTO「スーパーパソコン」
を駆使する時代の到来!
青山貞一 Teiichi Aoyama
掲載月日:2011年11月16日
独立系メディア E−wave


 この連載では、紆余曲折しながらも、Intel社から売り出されている第二世代CPUである Core i5 2500Kを中心にパソコン部品を集め、スーパーパソコンを自作することを目的に試行錯誤してきた。

 しかし、あと少しのところで、何とタイの大洪水の甚大な影響でハードディスクの価格が一気に3倍も値上がり、5万円以内でスーパーパソコンを実現するという筆者の夢は挫折しかかった。

 そんなこともあり、一端、超廉価な「スーパーパソコン」開発をあきらめかけていた。

 ところが、何と秋葉にあるBTOパソコン会社が私の夢に近いスーパーBTOパソコンを、本体価格わずか5万円弱で販売し出したのをキャッチした。そこで秋葉に直行した。

 私はもともとのBTOメニューにいくつかの拡充・追加を行い最終的に決めたBTOの内容は以下に示す。

OS Microsoft Windows(R) 7 Home Premium 64bit 正規版(DSP)プリインストール SP1適用済み
CPU Intel(R) Core i5-2500K (QuadCore/3.30GHz:TB時最大3.7GHz/L3cache 6MB/VT対応/TDP95W)
マザーボード Intel H61チップセット(B3)搭載 MicroATX USB3.0 ※PS/2端子は1ポートのみ
メモリ PC10600 DDR3 4GB 1333MHz(4GBx2=8GB)
内蔵HDD 2TB 64MB SATA3 NCQ 6Gb/s
グラフィック機能 CPU統合グラフィック (PCI-E x16 空きあり)
光学ドライブ 【黒】DVDスーパーマルチ (±R24x/±R DL8x/+RW8x/-RW6x/RAM12x)
サウンド機能 HDオーディオ機能搭載
ネットワーク 1000Base GigabitLAN オンボード
PCケース Seed Micro-ATX ミニタワーケース IW-EM034(背面12cmファンx1、450W電源搭載)

 以下は主な部品の詳細である。

◆OS:
 使用目的が3次元流体計算(倍精度実数計算)およびハイビジョン映像などの動画編集(レンダリング)が中心となるので、主記憶を8GBと大きくとりたいこともあり、どうしても64ビットのOSを使用したかった。そこでMicrosoft Windows(R) 7 Home Premium 64bit 正規版(DSP)プリインストール SP1適用済みを入れた。DSP版は、本来の正規版に比べ半額程度となっている。

◆CPU:
 Intel の第二世代Sandy Bridge CPUのうち、末尾にKが付くCPUはオーバークロックが可能であり、2500Kの場合、付属の空冷ファンだけで最高5GHzのクロック周波数で演算できるという秀逸なものである(以下の図1、2参照)。



図1 インテルの最新 Sandy Bridge CPU
Intel Core i5 2500Kの外観 

 下の写真は、 5.2GHzのOC(オーバークロック)で稼働中のIntel Core i5 2500Kである。現時点でパソコンCPU最高速である。


図2 5.2GHzのOC(オーバークロック)で稼働中のIntel Core i5 2500K

 なお、CPUの各種ベンチマークは以下を参照のこと。コア単体の性能では、Core i5 2500Kは上記CPUのCore i7 2600Kとさして性能が変わらないことが分かる。

◆マザーボード(M/B):
 Intel H61チップセット(B3)搭載の MicroATX マザーボードを入れた。以下が主な仕様である。あえてH61チップセットを使用したのは、第二世代のSandy BridgeCPUが内蔵するクイック・シンク・ビデオ機能を使いたかったからである。このハード動画処理機能を使うと、たとえばMpeg2の動画ファイルをMpeg4の動画ファイルに変換するスピードが以前より40倍以上速くなる。

・メモリスロット
 DDR3 : 2(デュアルチャネル)
 拡張スロット
 PCI-E x16 : 1
 PCI-E x4 : 0
 PCI-E x1 : 3
 PCI : 0
・背面I/Oパネル部
 PS/2ポート : 1(マウス・キーボード兼用)
 USB2.0 : 6
 USB3.0 : 2
 DVI-D : 1(グラフィックカード搭載時は無効)
 D-Sub15ピン : 1(グラフィックカード搭載時は無効)
 GigabitLAN : 1
 SATAコネクタ


図3 Intel H61チップセット(B3)搭載の MicroATX マザーボード


本体価格5万円台でスーパーパソコンを実現

 今回、BTOで導入したパソコンは、CPUにIntel Core i5 2500K、主メモリーが8GB、外部記憶が2TBと、まさに超費用対効果に優れた「スーパーパソコン」といえるものである。

 図4と図5が実際に使っているBTOスーパーパソコン内の写真である。写真中インテルと書いてある部分が心臓部のCore i5 2500Kである。


図4  スーパーパソコンの心臓部(CPU:Intel Core i5 2500K、メモリー8GB)
    撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8


図5 スーパーパソコン全容
    (CPU:Intel Core i5 2500K、メモリー8GB、HDD2TB)


●福島原発事故時の放射性物質拡散シミュレーション計算

 実は私たちは、SPEEDIのシステムを開発してきた(財)原子力安全技術センターが数10億円かけ導入したスパコンとほぼ同等の速度を「スーパーパソコン」導入以前から実現してきた。

 同センターはさらに数10億円かけ最新スパコンを導入したが福島原発事故時に稼働しなかったことからみても、ただ予算を投入しスパコンの速度を上げれば、実用に供せるとも思えない。

 その理由は、ひとつは技術の問題がある。すでにコンピュータの単独CPUの計算速度はとっくに頭打ちになっており、現在のスパコン、パソコンともに、いわゆる並列処理技術により、従来のCPU能力の10倍、100倍、1000倍を達成しているという。これは一言で言えばハードよりソフト(アルゴリズム、プログラム)の問題であり、頭の使い方の問題であることだ。

 ただ、CPUハードメーカーのLSI技術に依存するだけでは、計算速度は速くならない。当然、アルゴリズムや発想そのものを根本から変えなければならない。また、今回最終的に開発したスーパーBTOパソコンを複数台同時に使うことでさらに私たちの夢の実現が可能となることも分かった。

 実際、複数のスーパーパソコンとソフト(アルゴリズム、プログラム)を大々的に工夫することで、ほぼ実時間(リアルタイム)に原発事故時に原発から移流、拡散する放射性物質のシミュレーションが可能となる。また私たちは、今回の「スーパーパソコン」開発以前からこの考え方をもっており部分的に実施してきた。

本特集終わり

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