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スコットランド独立

住民投票結果の解析

青山貞一 Teiichi Aoyama

September 22 ,2014
Alternative Media E-wave Tokyo
無断転載禁

 スコットランド独立住民投票の年代別の賛成、反対割合が分かりました。以下の通りです。全体結果 賛成 44.65%、反対 55.25%、最終投票率は、84.59%です。

表1 スコットランド独立住民投票の年代別の賛成、反対割合

16〜17歳:賛成71、反対29
18〜24歳:賛成48、反対52
25〜34歳:賛成59、反対41
35〜44歳:賛成53、反対47
45〜54歳:賛成52、反対48
55〜64歳:賛成43、反対57
65歳以上:賛成27、反対73


データ:、イギリス保守党副幹事長を務めたマイケル・アッシュクロフト卿
         (上院議員)。イングランド側からのデータです。
        出典 Scottish Referendum Poll
             CATI & ONLINE Fieldwork : 18th-19th September 2014

 上記表1 の割合を年齢別人口比で加重平均して見ると、65歳以上の反対が著しく多く、55歳以上も反対が多いことが分かります。逆に16歳から54歳は、ホトンドが賛成が多くなっています。

 下の図1は2011年度のスコットランドの人口構成です。日本ほどではありませんが、高齢化が見て取れます。


図1 スコットランドの年代別の人口数
註)有権者の人口構成(ただし、有権者は16歳以上)

 以下の図2は、上の人口構成図のうち、有権者を抜き出したものです。ただし、有権者は16歳以上なので、実際は15歳は含まれません。


図2 スコットランドの有権者の年代別の人口数
註)有権者の人口構成(ただし、有権者は16歳以上)

 さらに以下の図3では、上の図を年齢階層毎に切り分け、年代別の賛成、反対割合と対比してみました。


図3 スコットランドの有権者の年代別の人口数と賛否割合
註)有権者の人口構成(ただし、有権者は16歳以上)

◆解析結果

 上記をもとに賛成、反対の加重平均を割り間で出してみると、表2にあるように46.8 vs 53.2 となり実際の数値より賛成の割合が多くなっています。 

 なお、上記では、18〜24歳は15〜19のうち5分の2と20〜24を足しています。また、16〜17は15〜19のうち5分の2としています。

表2 解析結果
年齢 人口割合 賛否 賛成人口割合
(A)×(B)
合計(A) 賛成(B) 反対
65〜 8.8% 11.8% 20.6% 27% 73% 5.6%
55〜64 7.4% 7.8% 15.3% 43% 57% 6.6%
45〜54 8.7% 9.2% 17.9% 52% 48% 9.3%
35〜44 8.1% 8.6% 16.7% 53% 47% 8.9%
25〜34 7.4% 7.8% 15.3% 59% 41% 9.0%
18〜24 5.6% 5.7% 11.3% 48% 52% 5.4%
16〜17 1.5% 1.5% 3.0% 71% 29% 2.1%
合計 47.5% 52.5% 100.0% 46.8%
※ 全体結果 賛成 44.65%、反対 55.25%、最終投票率は、84.59%

 2%ほどの誤差が出た課題としては、(1)もととなる人口データが2011年度のものであること、(2)年齢毎ではなく10から20年ごとの数値であること、(3)投票した住民の年代別数(割合)が不明であること、などによる誤差があります。しかし、それなりに参考になる数字だと思います。

 今後、最新の人口データ及び年別得票数などのデータを入手することで、より精度の高い解析をしたいと考えております。

 とはいえ、今回のスコットランド独立住民投票結果は、 ほぼ以下の2つの高齢者の年齢階層が反対したことと、その年齢階層の女性の割合が多いこと、とくに65歳以上で、それが顕著なことが主たる原因であることが分かったと言えます。

 55〜64歳:賛成43、反対57
 65歳以上:賛成27、反対73

 なお、以下はスコットランド政府が公表している2011年の年代別の人口と人口割合です。このデータには男女別の人口と人口が無かったので、上記の解析には使用していません

表3 スコットランド政府が公表している2011年の年代別の人口と人口割合
 (ただし、男女別データなし)
Ages attained Population 〜% of total
(years)
0〜4 293,000 5.53
5〜9 270,000 5.1
10〜14 292,000 5.51
15〜19 331,000 6.25
20〜24 364,000 6.87
25〜29 346,000 6.53
30〜34 322,000 6.08
35〜39 340,000 6.42
40〜44 394,000 7.44
45〜49 411,000 7.76
50〜54 376,000 7.1
55〜59 331,000 6.25
60〜64 337,000 6.35
65〜69 262,000 4.98
70〜74 221,000 4.17
75〜79 178,000 3.36
80〜84 123,000 2.32
85〜89 71,000 1.34
90+ 37,000 0.7
出典:http://en.wikipedia.org/wiki/Demographics_of_Scotland

◆想定される直接的な独立に反対する原因

 65歳以上と言えば、日本では定年退職後となり年金生活者が多いことを意味します。また60歳以上には資産を多く持っている人々が多いのが大きな特徴となっています。それらが独立が達成されなかった直接的な原因となっているのかも知れません。すなわち、独立賛成派から見た場合のネックとなっているのかも知れません。

 通貨問題や経済、財政問題は、60あるいは65歳以上の年金生活者あるいは逆に資産をもっている高齢者の独立反対の主な原因になった可能性はあるでしょうね。

◆今後について

 ただ、今回の傾向、推移が継続するとなると、10年後、また20年後に再度スコットランド独立住民投票を行っても、高齢者が多くなり同じような結果となると考えられますが、逆に今回の結果を学習することで、全体でわずか10%の差しかなかった今回の投票結果は、仮に今回賛成した層が10年後、20年後に高齢者になっても、上記の理由があったとしても、再度賛成するかも知れません。

 その意味で、独立賛成派の青山としては、今後が楽しみとなります。

 スコットランドは面積、人口(500万人規模)ともに北海道並み、英国の面積で1/3程度、人口では約1/12。一人当たり所得ではイングランド、ウェールズ、北アイルランドよりかなり上ですが、近年、若者の失業率が高くなっています。にもかかわらず、25〜34歳:賛成59、反対41 また、35〜44歳:賛成53、反対47なのは、立派です。

 もちろん、独立したとしても通貨、経済、財政など以外にも外交、防衛、軍事、核保有などでの諸外国との関係、北海油田、原発、エネルギーなどその後には多くの課題が山積するでしょう。

◆スコットランド人の独創性と主体

 しかし、何と言っても、スコットランドは世界的な人材の宝庫、10万人当たりのノーベル賞受賞者数でも世界2位、知性、見識の高い地域なので、通貨、経済、失業率などとともに、年金問題についても、対案を考えるでしょう!

スコットランド人の独創性は群をぬいており、10万人に当たりのノーベル賞で世界第2位(日本37位、英国全体は11位)、受賞の絶対数では、日本の47倍も多いです。

※青山貞一・池田こみち: B希有で秀逸な人材と知性の宝庫
青山・池田:ノーベル賞受賞に見るスコットランド人の知性と独創性