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米軍基地と公共工事
のまち、沖縄県@
〜米軍基地概要〜

青山貞一、宇都宮朗、坪根将太
武蔵工業大学環境情報学部青山研究室

2007年2月18日、2009年1月31日拡充



はじめに

 
私は大学の「公共政策論」の講義において「戦争・軍事こそ最大の公共事業」であること、また「戦争こそが最大の環境破壊」であると述べてきた。

 私の研究室(青山研究室)では、学部、大学院とも戦争と環境、戦争と基地の問題を継続的にフォローしており、現地調査は海外にも及んでいる。

 具体的な現地事例調査として、2007年2月12日から15日の4日間、武藏工大大学院青山研究室の現地調査で沖縄県にでかけた。

 現地調査に参加したのは私と大学院修士課程1年の宇都宮朗さんと坪根将太さんの3名である。宇都宮さんが「
米軍基地と環境問題」に関連した修士研究をしている。

 4日間沖縄県本島内で走った距離合計は、約1200km、非常に充実した現地調査となった。

 そこで見たものは、軽減どころか、一層強化される米軍基地、米軍施設と公共事業依存症となっている沖縄の姿であった。まさに米軍基地と公共工事による環境破壊と言う現実もあった。

やんばるの岬にて宇都宮さんと 首里城にて坪根さんと

 ここでは、今回の現地調査の概要を速報したい。

沖縄県の米軍基地概要

 沖縄県には、今なお米軍基地が集中している。

 沖縄県の資料によれば、戦後60年を経た今なお、国土面積のわずか0.6%に過ぎない沖縄県に在日米軍専用施設面積のおよそ75%に及ぶ広大な面積の米軍基地が存在している。

 在日米軍基地は、県土面積の約11%を占めている。とりわけ人口や産業の集積する沖縄本島で約19%を占めるに至っている。

 実際に沖縄本島を縦断、横断した感じでは、在日米軍施設が沖縄本島の半分を占めているような印象すらある。まさにどこに行っても米軍基地、施設がある。それほど沖縄県にあって米軍施設の存在感は大きなものがあるといってよい。

 問題は、それらの基地が、環境問題はじめさまざまな問題を引き起こしていることである。にもかかわらず日米地位協定により、米軍基地がもたらす各種問題は、たとえば環境問題をとってみた場合、我が国(日本)の環境基準等が適用されないと言う、信じられない現実がある。

 青山研究室でこの日米地位協定問題を研究テーマとしたのは、松田夏子さん(現在、千葉県警)である。

日米地位協定
 
正式名称日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定、Agreement under Article VI of the Treaty of Mutual Cooperation and Security between Japan and the United States of America, Regarding Facilities and Areas and the Status of United States Armed Forces in Japan)は、1960年(昭和35年)1月19日に、新・日米安全保障条約(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約)6条に基づき、日本とアメリカ合衆国との間で締結された条約。主に在日米軍の日米間での取り扱いなどを定める。1952年(昭和27年)2月28日に、旧・日米安全保障条約3条に基づいて締結された日米行政協定(日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定)を承継する。その内容は、アメリカ側に有利であり、日本国民の人権が侵害されているとして、特に米軍基地を置く沖縄などの地域の住民から内容の改定を求める声が上がっている。

 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 以下の図1は沖縄県本島にある主な米軍基地である。私たちが4日間滞在したのは本部(もとぶ)町であった。比較的基地が少ないのは、その本部地域と本島最南部地域くらいで、他の地域には広大な米軍関連施設がたくさんある。


図1 沖縄県の米軍施設地図  
出典は沖縄県、宿泊したホテルを●で示している。

 数値で米軍施設を示すと表1の通りでとなる。ただし、以下の施設数・面積は平成16年3月末現在のものであり、軍人数等は平成16年9月末現在の数字である。

表1 米軍施設数、軍人数等
 施 設 数   37 
 施 設 面 積   23,681.2ヘクタール
  (県土面積の約10.4%) 
  うち米軍専用施設面積 23,312.4ヘクタール 
   (全国の米軍専用施設面積の約74.7%) 
 軍人・軍属・家族数   45,354人
   軍人: 22,339人
   軍属:  1,503人
   家族: 21,512人 
出典:沖縄県

 図2は沖縄本島以外にある米軍施設である。沖縄本島以外の施設の多くは、大部分が射爆場である。


図2 沖縄本島が以外にある米軍施設  
出典:沖縄県


滞在拠点とその周辺

 今回は東京から3泊4日で沖縄にでかけた。2月12日は午前8時5分羽田出発、15日は午後8時10分那覇出発とまる4日間現地に滞在した。現地での移動はすべて写真1の小型自動車(トヨタのヴィッツ)である。総走行距離は実に約1200kmに及んだ。


写真1 県内走行につかったトヨタ・ビッツ。
    20−25km/Lと非常に燃費が良い

 
沖縄県で宿泊した町は沖縄本島の本部(もとぶ)町である。図1の地図を見てもらえれば分かるように、本部は沖縄本島で北西部に突き出た半島一帯をさす。泊まったホテルは海洋博覧会が開催された地域のまん前に立地している。


写真2 宿泊したホテル:その前は沖縄海洋博覧会の会場

 ホテルの窓からの自然景観は写真3のようにすばらしい。写真3にある橋を渡った先が瀬底島と言う。


写真3 ホテルからの景観:
    すばらしい自然景観が展望できる

 ホテルがある場所は、名護市の西にある半島を行った本部町の最西端、突端にある。ここまでくるとホテル以外食事をする場所がない。ホテル内の食事はどうしても高額なので、滞在中どこで食事をとるかが問題となった。

 幸い、ホテルから最初に調査に出る際、写真3の瀬底島に向かう橋のつけ根に、写真4の「みなと食堂」を見つけた。おばさんひとりの小さな食堂だが、メニューは10ほどあり、安くてそこそこうまい。とくにオムライスは、一人前で3人前はある。2人の学生はそれを平らげていたが、私は半分食べるのがやっとだった(笑い)。

 話し込むと、おばさんが昔の話をしてくれる。同時に、次から次へとおかずを出してくれる。まさに家庭の味、お袋の味だ。


写真4 毎日朝食をしに行ったみなと食堂

 みなと食堂の眼前に瀬底島がある。

 みなと食堂のおばさんに気になった瀬底島について聞くと、島の先端にすばらしい砂浜があると言う。そこで調査に出発する前に瀬底島に寄ってみた。

 写真5,6にあるように確かにすばらしい自然海浜だ。それも珊瑚礁の海が眼前に展開する。沖に見えるのは伊江島、港食堂の前にあるファリー乗り場から船で30分で行けるとのこと。さすがに2月は海水浴は無理だが、ここは海水浴の穴場である。


写真5 瀬底島先端にある珊瑚礁ビーチ。
    沖に見えるのは伊江島


写真6 のんびりのびのび白い砂浜がつづく

 沖縄の海水浴場(ビーチ)の多くは、沖縄県外の企業が経営する大きなホテルがプライベートビーチ化ししていることが多い。JAL、ANAなど航空会社が航空券とセットで売り出しているホテルはその典型である。私たちが宿泊したホテルの場合は、海洋博施設がビーチを占有していた。ビーチを占有するもうひとつの大きな主体は、いうまでもなくキャンプ・シュワブのような米軍施設である。

 その意味で、瀬底島の海浜のようなパブリックビーチは、沖縄本島にあって貴重である。