長野県の審議会事情(2) 〜環境審議会〜 青山貞一、池田こみち 2007年3月24日 |
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長野県の審議会事情については、昨年12月に田中県政時代の審議会が村井県政になってどうなったかについて述べた。 青山貞一、池田こみち:長野県の審議会事情 その後、青山、池田が委員となっている公共事業評価監視委員会(青山)、総合計画審議会(池田)、環境審議会(青山、池田)が開催されるようになった。 以下の案内メールにあるように、この3月22日の午後2時30分から午後5時の予定で、環境審議会が長野県庁となりにある長野保健所の大会議室で開催された。
村井知事体制下での環境審議会は平成18年10月31日に第1回目が開催され、新たに条例で定めた定員めいっぱいの30名体制でスタートした。通常2時間の審議時間だが、委員が30名ともなると、幹事(担当部署)からの審議事項に関する説明に時間を要するため、ほとんど審議委員がまともに議論したり意見を述べる時間がなくなることが危惧された。 青山、池田は環境審議会の委員である。 第2回目は平成19年1月8日に開催され、会長(信州大学名誉教授)が欠席のため、茅野委員(元八十二銀行頭取)が副会長として座長を務めた。 ..... さて、今回は第3回環境審議会だが、始めからおかしな事が相次いだ。 まず、開催時間がいつもは1時30分なのだが、今回はどういうわけか2時30分となっており、終了が午後5時、全体で2時間30分となっていることだ。 後になって担当課長等に聞いてわかったのだが、出席委員数を増やすため敢えて開催時間を従来より1時間遅らしたそうだ。 上記の議事による審議会日程は、1月17日に事務局から委員にメールで連絡があったが、当日机上に配布された次第には、上記の(1)から(6)の重要議題に加え、2つの重要報告(新年度の環境関連予算概要と風力発電施設に関する環境配慮について)も含まれていた。 .... 今回の審議会は、2006年度最後の審議会となるわけだが、前回の1月8日の審議会でモメにモメた議題、すなわち「廃棄物処理計画(第2期)の策定について」は、それだけで前回、約1時間議論している。 にもかかわらず、予定議題では、最後に「廃棄物処理計画(第2期)の策定について(答申)」と、ちょこっと掲載されているだけではないか。 青山、池田は、メールで次第案を送られてきた段階で、これには大きな意図があると直感した。 その意図とは、事務局がこの廃棄物処理計画策定議題についての審議時間をできるだけ少なくしようとしていること、審議の時間切れを狙っているのではないかという、いわば仮説である。 .... 事実、「廃棄物処理計画(第2期)の策定について(答申)」が環境審議会で審議に入った正確な時刻は午後4時55分であった。 当初予定なら午後5時で終了だから、ほとんど審議する時間がないことになる。しかも、上述のように、その後に重要な2つの報告もある。 この「廃棄物処理計画(第2期)の策定について」については、前回同様、30名近くいる委員のうち青山、池田、川妻の各委員が質疑、意見を積極的に行った。 しかし、ゴミ関連の専門委員会によくありがちな「事務局に成り代わって委員が質問に答える」という、いわば言い訳答弁に時間を食い、結局、すべての審議が終了したのは午後6時を回っていたにもかかわらず、私たちの質問や指摘に対して、幹事(事務局=行政側)からのまともな回答はほとんど得られなかった。 .... 上記の(1)から(5)までの答申に関する資料は数日前に郵送されたものの、その量は、およそ200頁以上にも及び、事前に目を通すだけでも相当な時間がかかる。しかし、肝心な(6)の廃棄物処理計画に至っては、直前まで資料が委員の手許に届いていなかったのである。 当初からあまりにも性急に重要な計画を策定するのには無理があるので、もっと時間を掛けるべきであるとの意見も出ていたことから、廃棄物処理計画については、答申が次年度にずれこむのか、と思っていた矢先、審議会の直前、3月20日になって、事務局からのメールで、次のような連絡があった。 環境審議会委員 様 要するに、100頁以上にも及ぶ審議資料を自分で印字し当日持参するようにとの指示である。これには驚いた。翌日は祭日であり、クレームを言う時間もないことから部分的に印字して目を通すにしても時間が足りない、と困惑した。 結局、翌21日(祭日)の昼過ぎになって、自宅に100頁の資料が速達で届けられたのである。 私はたまたま送られてくる前に大学の所用で出張しており、自宅に戻っておらず、審議会開催までまったく目を通すことはできなかった。しかも、その分量は100頁に及んでいる。 要約的に言えば、100頁に及ぶ重要な最終答申書案を審議会開始時に配付し、5分で審議しろと言われているようなものである。事実、私が「廃棄物処理計画(第2期)の策定について(答申)」案をもらったのは、審議会の席についてからである。 私や池田は今まで審議会や委員会の委員そして逆の立場として行政と一緒に事務局的なことを国、自治体問わず永年してきた。しかし、こんなずさんでいい加減な審議会開催(運用)ははじめてである。まして、後述する特定の政策を容認させると言う意図があってのことだとしたら、審議会そのものの自殺行為となるだろう。 にもかかわらず、生活環境部長や廃棄物対策課長ら事務局側からこの点について当初、まったく謝罪はなく、私が強く指摘してやっと大田廃棄物対策課長が謝罪した。 その後、配付が遅れた理由として、ゴミ専門委員会の委員長(信州大学教授)が3月15日までアメリカに出張していて答申案のとりまとめが直前となってしまったと述べた。しかし、言うに及ばずそのような場合には、副委員長なりが代行すべきであり、上記の対応は審議会を形骸化させる自殺行為である。 ......... 肝心な審議の内容だが、(1)から(5)それぞれの案件にについてもそれないの課題、疑義はあった。 しかし、私たちが「廃棄物処理計画(第2期)の策定について(答申)」にこだわったのは、また前回の環境審議会で審議がモメにモメたのは、田中前知事が全国にさきがけ、廃棄物分野で新たな理念、政策、施策そして条例の制定でがんばってきたことを、まったく理由と説明なしに、なし崩し的に事務局(県幹部)が政策変更しようとしたからである。 青山は友人の梶山正三弁護士、北村喜宣上智大学教授とともに過去、4年にわたり、条例制定アドバイザーとし、また知事の政策顧問として関与してきたこともあるからだ。 どういうわけか、審議会事務局の面々は、村井知事となっても部長、課長等がそのまま留任している。 青山、池田がなぜ村井体制のもとで委員となっているかについては前のブログで子細にのべたが、田中知事のもとで上記の政策に仕えてきた彼らが、なぜ留任したかについては、いろいろ憶測を呼んでいた。 その片鱗が前回の環境審議会における「廃棄物処理計画(第2期)の策定について」で随所に見られたこともあり、青山、池田、川妻の3委員が中心となり、事務局である木曽生活環境部長、太田廃棄物対策課長らに、なぜ、なし崩し的に理念、政策、施策を変えようとしているのかについて、具体的に質問を出した。 しかし、何一つまともな返事、例えば、知事が替わった結果、政策変更を行った、などの回答は得られなかった。もちろん、私たちとすれば、知事の交代による環境分野の根幹的な政策変更をよしとしないが、田中知事時代の幹部が村井知事体制のもとで全員残留し、しかも、同じ政策担当者のもとで政策がなし崩し的に変更され、それも、産廃業界や産業界、市町村会などの意向を強く意識したものとなれば、到底、県民の理解を得ることは難しいと言わざるを得ない。 ちなみに、田中知事下でのゴミ政策に、正面からそして裏からあの手この手で反対し、全国に魁け案を作った条例をつぶしにかかったのは、県議会議員だけでなく産廃業界、産業界、市町村会である。 すなわち、村井知事となったら、同じ幹部が平然と産廃業界、産業界、市町村会の意向ばかり取り入れようとしている、そのひとつの柱が「廃棄物処理計画(第2期)の策定について」である。 ..... 審議会では、川妻委員が今まで田中知事が止めてきた阿智や中信地区における産廃の最終処分場について、新たに策定した「廃棄物処理計画答申案」の中で、公共関与で建設できる道筋をつけたことは、大きな政策変更であり、明確な説明がないことは問題であると、指摘した。 つづいて、青山も田中知事時代になぜ、公共関与による産廃最終処分場建設をやめたか、とくに全国でも最悪レベルの県財政下で、本来、排出者責任、事業者責任の関連からも民間が設置、運営すべき産廃最終処分場に県が公共関与するのか、今までの議論はどうなったのか? さらに昨年6月より、県の財政健全度を示す指標が実質公債費比率に一本化されたのだが、長野県はもともと全国でも最悪に近い状態にあり、さらに悪化すれば都道府県レベルの夕張市状態に陥ることなどについて意見を述べた。 しかも、答申案では、民間事業者、市町村会などに意向調査をした結果・・・となっているが、もともと、長野県では田中知事以前から民間事業者、市町村会などは本来自ら対応すべきものまで、何でも県につくらせ、国の補助金や県への依存体質が強いことが問題となっていたのである。 .... 結局、川妻、青山、池田の3名の委員からの質問に対して、事務局からは明確な回答は得られなかったばかりか、計画策定に直接的に関与した専門部会委員長や委員から、言い訳的な説明が延々となされただけで、審議はまったく不十分のまま終了せざるを得なかった。 また、会長からは、「何はともあれ絶対反対でなければ、これを了承し、まずは動かしてから修正が必要なら修正すればよい」という発言もあり、結果的に時間がないことを理由に、会長自らが審議会の役割を軽視した会議の進行が行われるなど、今までになく、強引な審議会運営となっことは極めて遺憾であると言わざるを得ない。 いったい、この計画の答申が数ヶ月遅れることによってどれほどの支障があるのか、今回のような強引な答申了承が後に禍根を残すことにならなければと危惧された。 そもそも前日ないし当日100頁に及ぶ膨大な答申案を委員に配り、当初時間ではわずか5分で審議しろと言うことが問題である。 さらに、私は、あえて以下を強く意見し、また質問した。 周知のように、田中知事以前の長野県は、極度な補助金による箱もの建設依存体質の自治体であり、それにより全国有数の財政悪化を引き起こしたことが批判されてきた。田中県政が評価されるとすれば、あらゆる手段をもちいて、この状況からの脱却に向けて踏み出したことだった。 今回、「廃棄物処理計画(第2期)の策定について(答申)」に盛られた内容は、その種の原理的におかしな「はこもの建設」への公共関与、とくに財政的関与をやめさてきたことをひっくり返し、田中知事以前の状態に戻す可能性と危険性を強く感じさせるものであった。 もともと5分もなかったこの計画策定に関する審議は、残る2つの報告との関係で審議未了のまま、座長一任によりトンデモない結末となることを恐れ、私は「答申の最後の部分に、今日の審議会で出された意見を添付する、すなわち両論併記の形態をとって欲しい」と述べた。 すると座長は、およそ審議会ではかんがえられないことだが、私に向かって「それはあんたが決めることではない」と怒鳴った。 結局、両論併記は実現せず、詳細議事録(公開)で見てもらうこととされた。さらに、座長が年度末も近く、時間がないので廃棄物の専門委員会と事務局に一任したいと言う趣旨の発言。 水増された委員の拍手(!?)によって、この重要問題は、実質的に押し切らててしまった。 ..... 東京に帰り、深夜に中日新聞のインターネットでみたら、何と、この公共関与による産廃処分場建設が答申されたかの記事がだされていた。これにはびっくりである。審議会場に記者がいたようにも思えなかったので、ひょっとして事務局からメディアへのリークかも知れない、などと思った。 もともと、日本の審議会は事務局(行政)が描くシナリオのもと、いわばデキレースとなり、専門家、有識者の承諾を得たという行政のアリバイづくりがその実態である。これが審議会が行政追認機関であるという批判の根拠である。そうした実態をすこしでも改善しようと、田中知事時代には欠席が多い委員や出席しても何も発言しない委員は再任せず、実質的な議論や審議ができるような審議会の開催に努めてきたのである。 しかし、村井知事になってから環境審議会は30人体制となり、上記のような審議会軽視の運営が行われたことは極めて由々しき事態であると言わざるを得ない。まして、今回指摘したことは、県知事が替わったとはいえ、同じ事務局が何らまともな説明もないまま政策や施策を変更しようとするものであり、まったく理解に苦しむだけでなく、県民を愚弄するもの以外のなにものでもないだろう。強く抗議したい。一部のアンケート調査結果やパブリックコメントを実施したことが県民意見を聴いたことの言い訳となっているようだが、実質5カ月も作業時間がなくいわば未完成な計画が、審議も不十分なままお墨付きを得たように一人歩きすることは極めて問題である。
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