現地報告 EUの自転車レーン 青山貞一、池田こみち 2007年2月1日 独立系メディア E-wave Tokyo 無断転載禁 |
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ガソリンの高騰に象徴されるエネルギー問題、地球温暖化問題、大気汚染問題、騒音問題、健康維持などさまざまな理由から、自転車が見直されている。 だが、日本社会では、世界に冠たる立派な高速道路、高規格道路、自動車専用道路があっても、安心して自転車が走れる一般道路はほとんどない。まして自転車レーンなど数えるほどしかないのが実態だ。 周知のように、日本の一般道路には、自転車レーンどころか、まともな歩道すらないのが実情である。 一方、EU諸国に目を転じてみると、風力発電のウインドファーム同様、ドイツ、オランダ、デンマーク、北欧諸国で自転車利用のためのインフラ整備が進んでいる。専用のレーンがあるところが多い。 本稿では、2004年9月、国際ダイオキシン会議がベルリンで開催され参加した際に、ベルリン、アムステルダムなどで撮影した自転車レーンの写真を紹介するとともに、、ベルリン市の自転車レーン基盤整備プロジェクトの取り組み概要についても紹介したい。 ◆オランダ 国際会議に参加する際、オランダのKLMを使ったこともあり、ベルリン工科大学で開催された国際会議の帰り、オランダを少々旅した。
アムステルダムのみならずオランダを旅して驚かされるのは、自転車がひとびとの重要な足となっており、通勤、通学、買い物、週末の余暇など生活のあらゆる場面にとけ込んでいることだった。 オランダは国土全体が平坦で自転車走行に適していることもある。しかし、世界一地球温暖化問題に熱心な先進国がオランダやデンマークであることから分かるように、この国では、いかにガソリン、軽油など温暖化のもととなる化石燃料を使わない交通をつくりあげるかについて国、自治体をあげ環境政策の一環として自転車利用を推し進めている。 そんなこともあって、オランダは自動車が通る多くの道路には、都市、農村を問わず自転車レーンがある。アムステルダムのような大都市でも、都市の中に自転車レーンがある。 いつか日本のテレビで見たことがあるが、数10kmの距離の通勤を自転車でと言うひとも結構いるようだ。 下の写真は、アムステルダム市街の自転車専用レーンである。 完全に車道、歩道と分離される形で自動車専用レーンが設定されている。安心して自転車が使えるよう、あらゆる面で配慮されている。 右端は一緒に国際学会に行った池田こみちである。 下の写真は運河が多数錯綜するアムステルダム中心市街地の一角だ。 そこにも自動車専用道路がある。ここでは、自動車を締めだし自転車の専用レーンが我が物顔で設置されているが、この町ではこれが普通であり、違和感がないところが不思議である。 下の写真は公共施設(右側の建物)に面する道路の場合だ。ここにも車道とは別に自転車専用レーンがある。 朝のアムステルダム市街地を歩く。通勤時はどこでも下のように自転車交通が主流だった。 どの道路でも自転車の通行が可能である。 そんなこともあってか、アムステルダムの駅前は駐輪場天国となっていた。 以下のようにすごく立派な駐輪施設が中央駅脇の大きな運河の一角にできている。日本で言えば、東京駅のすぐ隣に公設の大規模駐輪場があることになる。 なにしろこの駐輪場は大きかった。 一方、EUの鉄道は自転車持ち込み可能が多い。 そのメッカ、オランダのアムステルダム中央駅でも、以下のような光景が日常茶飯事だ。日本の東京や新宿駅だったら大変なことになってしまうだろう(苦笑)。 アムステルダムの後、ちょっと足を伸ばして北海に面する小さなまち、ペッテンに出かけてみた。その途中、オランダの農村部や郊外を通過した。 分かったことは、オランダはどこに行っても自転車が移動の主役であることだった。 下は土日にでかけた北海に面する保養地、ペッテンののんびりのびのびの町中である。自転車がよく似合う オランダにはあちこちに、貸し自転車屋がある。下はペッテンの貸し自転車屋さん。 私たちはペッテンから北オランダの最北端であるデンヘルダーまで長距離バスででかけてみた。 海沿いはどこも、以下のような巨大な防波堤となっており、その一部が高速自転車用のバンクとなっていた。 日本で自転車用バンクと言うと競輪を思い起こすが、この地ではフラットな地形にそって延々と続く、堤防の一部がまさにバンクである。 地球温暖化による海面上昇防衛の最前線、ペッテン〜デンヘルダーの巨大な防波堤 ◆ドイツ 今やEUのリーダーそして世界の環境保全のリーダー格となっているのがドイツだ。 2004年9月はベルリン工科大学で国際学会が開催されたこともあり、ベルリンの中心部に約1週間滞在した。滞在したホテルは、ベルリン動物公園駅から数分のところにあった。 ベルリンの中心市街地にも自転車専用レーンがたくさんあった。下の写真はベルリン動物園駅前の自転車専用レーンである。この駅は、日本で言えば新橋駅であろうか? 早朝6時前なので、ひと気がないが、新橋駅前に自転車専用レーンがあると思ってもらえればよい。 ベルリン市は300万人を超す大都市だが、市内の一般道路には下のように自転車専用レーンがある。ここをかなりの速度で自転車が走行している。かなりの速度で走行しても、自動車用車線、歩道と分離されているので安心、安全である。 ベルリンの自動車専用レーンのマークは、アムステルダムと似ているが、ハンドル部分のデザインがちょっと違う。 ベルリン市には世界有数の鉄道ネットワークが整備されている。大都市でこれほどの鉄道ネットがあるのは、東京とベルリンだけだろう。 東京とベルリンが違うのは、ベルリンでは地下鉄やトラム(路面電車)への自転車の持ち込みが随時OKとなっていることだ。 ベルリンと言えばベルリンの壁。今でも観光用?として壁の一部が残っている。 その壁の横に立つ筆者(青山貞一)。ここにも車道、歩道とは別に自転車専用レーンがあった。 ◆ベルリン市の自転車利用促進基盤整備プロジェクト 以下はベルリン市における Cycling Infrastructure Enhancement - Project Examples すなわち、自転車利用を促進するための自転車レーン基盤整備プロジェクトの概要である。 このプロジェクトはベルリン市の都市開発部(Senate Department of Urban Development)が計画し実施している自転車利用促進のためのモデル事業である。 モデル事業は大別し次の5つから構成されている。 (2)Bicycle Lanes (5)Crossing
Aids
ここでは、市内で先行的、モデル事業として実施されているプロジェクトのうち(1)と(2)について実施前後の道路断面のデザインと写真を紹介しよう。 今や日本でもおなじみになったBEFORE→AFTERを使って、何がどう変更されたを示しているイル。変化が非常によく分かる。 残念ながら今の日本、とくに大都市ではどの一般道路も幅員が狭く、以下のモデル事業に出てくるような道路にはお目にかかりにくいが、地方都市であれば、十分可能性があると思われる。 自転車で21世紀の環境優先まちづくりをどの自治体がはじめるかが問われている。 次回、ベルリンに出張したときは、このプロジェクトの詳細を調査し報告したい。 |
自転車利用を促進するための自転車レーン基盤整備プロジェクトの概要
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Path before (typical
cross-section)
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Before
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Construction of foot and
bicycle paths
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After
Treptow - Kopenick, Muggelseedamm |
Road before (typical
cross-section)
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Before
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Road with lanes / non-exclusive
bike lanes
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After
Berlin Mitte - Wilhelmstrase South |
Road before (typical
cross-section)
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Before
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Creation of a non-exclusive
bicycle lane
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After
Berlin Charlottenburg - Wilmersdorf, Warnemunder Strase, East |
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