エントランスへはここをクリック   

デジタル時代の
取材・編集 最前線

青山貞一

2006年12月11日


 私は大学で何と何と、「ノンリニア・デジタルビデオ編集」の演習を担当している。この演習は18〜19歳の一年生が受講している。いまはやりの「情報リテラシー」演習の一環、必須科目だ。

 ところで、デジタル・カメラ、デジタル・ビデオ・カメラ、ICレコーダーなど、パソコンやインターネットと連動するデジタル超小型機器の技術進歩はすさまじい。

 これらを何に使うかは、ひとそれぞれである。

 我が「独立系メディア」では、海外現地調査、現地調査や取材そして大学、研究所、自宅での各種編集作業でまさに駆使している。

 最近では、デジタル・ビデオカメラ(DV)が大きな変化を見せている。

 現在売り出されているDVカメラは、HD(ハードディスク)、それも20〜40GB(ギガバイト)のハードディスクを内蔵しながら、重さは400gを切る。超小型で軽量だ。

 しかも、この手のDVカメラはデジカメを兼ねている。デジカメ機能が標準でついているので、デジカメを持ってゆく必要がない。手ぶれ防止もある。

 このHDタイプやDVD録画タイプのデジタルビデオカメラは、DVテープを持ってゆく必要がなく膨大な量の映像が撮れる。一週間程度の海外取材ならHDだけで十分だ。付属のバッテリーを大容量のものに変える必要があるが、それでも重くない。

 HDタイプのデジタルビデオカメラでは、撮影したビデオ・クリップはすべてMPEG2ファイルとしてHDに保存される。したがって編集時にキャプチャーが不要となる。

 USBケーブルを繋ぎ、撮影した動画、映像ファイル、静止画ファイルをPCに転送するだけでよい。ビクターの製品では、動画の拡張子をMODからmpgにリネームすれば、そのままデジタル編集が可能となる。面倒なキャプチャーが一切不要なのだ。これは大きい。

 通常、DVからPCへのキャプチャーはIEEE1394ボードをつけたPCで行う。これが結構時間がかかる。それが通常のファイル転送でDVからPCに移せることになる。

 私が現在使っているのDVは、以下の写真にあるビクターの製品とソニーの超小型DVである。ビクターの製品はHDが20GBついている。光学ズームは何と16倍もある。もちろん、高機能のデジカメ機能も標準でついている。これで6万円前後だ。

現在愛用中のHDタイプのDV 

 私は大学関係の調査では数年前、50万円もするデジタル・ハイビジョン対応の以下の本格的なビクターのDVを使っていた。当時、デジタルハイビジョン対応の家庭用DVはこれしかなかった。

デジタルハイビジョン対応のDV

 だが、ここに来て各社がデジタルハイビジョン対応のDVを15万円前後で売り出した。

 ハイビジョンでなければ、6万円前後のDVでも50万円のDVでも画質その他に大きな差はない。通常の現地調査や取材なら超小型の廉価DVで十分だ。

 ところで撮影したテープあるいはファイルは、ノンリニアーのデジタル編集をすることになる。大学ではどういうわけか、一年生相手なのに、通常一本15万円前後もするアドビのプレミア・プロなる本格的なデジタル編集ソフトを使っている。

 このソフトは、アクロバット(PDF)やフォトショップ、イラストレーターなどで有名なアドビ社の製品だが、通常の編集には機能が多すぎ、初期設定等も専門的で複雑過ぎる。

 と思っていたら、アドビがプレミア・エレメントを出した。現在のバージョンは3である。後発のカノープスが軽々、さくさく、すいすい編集が可能な「超編」と言う編集ソフトを出したためか、プレミア・エレメントは何と実売価格が1万5千円以下となっている。

 ちなみに「超編」も同額以下。もちろん、HDタイプでない通常のDVテープからPCにファイルトシテキャプチャーする機能がついている(ただし、IEEEボードは別途インストールが必要)。

超編の画面
出典:http://www.canopus.co.jp/catalog/ultraedit2/ultra_edit_2_f.htm

 しかも、ともに体験版が一ヶ月無料で使える。私も両方を自宅のPCにインストールし使ってみているが、どちらも負けず劣らずで使いやすい。インターネット時代のデジタル画像編集を意識している。トランジッション・エフェクトはじめ各種機能も、よほど凝ったことをしない限り十分だ。

 これらデジタル編集は、自己流ではなく基礎をしっかり身につけた方がよい。実際、大学の一年生を相手の演習では、13回の通常の授業としている。55名ほどいる受講生は20歳前後でありながら、すばらしいビデオ作品を制作する。いずれも映像、オーディオ編集を含め基礎からやっているからだろう。

 デジタルビデオ編集を本格的に行うには、自分のPCに映像保存用に外部接続の250GBHDを2つほどつけると良い。

 デジタル・ビデオ編集ソフトは多数があるが、私が大学の授業、研究室及び最近のバージョンを体験版を含め今まで使った経験からはやはりアドビのプレミア・プロが一番だ。

 しかし、上記の「プレミア・エレメント3」や「超編」も通所のビデオ編集、DVD作成、インターネットのストリーミング動画制作には十分な機能と操作性を持っている。

 もちろん、それらのソフトはMPEG、AVIなどの動画、映像ファイル、MP3,WAVなどの音楽ファイル、JPG、GIFなどの静止画像を混在させ編集でき、MPEG2、MPEG4,AVI、WMVなどのファイルとして、またNTSCのVHS、S−VHSなどのビデオテープに出力できる。

 その他のデジタル機器としては、ICレコーダがあると良い。これは新聞記者らが取材で使っているものと同じで、実売価格2万円も出せば256MB〜1GBのメモリーがついたものが買える。

オリンパスの最新鋭ICレコーダー

 これはもちろん、編集した画像を見ながらアフレコする場合に便利である。通常、録音したMP3ファイルをUSBケーブルでPCに出力できる。

 もちろん、「プレミア」、「超編」などの編集ソフトは、MP3、WAVなどの音楽、音声ファイルに対応している。もし、電話取材内容をMP3ファイルにするには、ソニーが2千円台で売っているイヤホンマイクをつけると良い。携帯電話、固定電話問わず、明瞭度の高い音声が録音できる。


ソニー ECM-TL1

 
ソニーの通話録音マイクは、今のところ唯一のアイディア製品。イヤホンの形をし、実際イヤホンと同じように耳につける。相手から電話がかかってきた場合、携帯電話であれ、固定電話であれすべて鮮明な音で録音が可能である。ICレコーダーによってはMP3ファイルとして転送可能となる。上の写真のソニー ECM-TL1は、 わずか2000円程度で市販されている。
 

 私は長野県に特別職、非常勤で行っていたとき、話もしないことが記事になっていた。そこでこのソニーのイヤホンマイクを購入し、サンヨーのICレコダーにつないでメディアの取材に対応した。

 言わないことを翌日の朝刊に書かれるのを防止するためだ。通話録音を入れているとブログに書いたとたん、乱暴な取材、インチキ取材が激減した(笑い)。

 ■青山貞一:いつまで続く「言った・言わない」論争
http://eritokyo.jp/independent/nagano-pref/aoyama-col3011.html

 以上、簡単にデジタル取材、編集機器とソフトの最前線について話してきた。裁判用の証拠にも使える。

 それなりの力があるPCさえあれば、あとは上記すべてそろえても10万円もかからない。ただし、PCのメインメモリーは1GB程度に増設しておく必要がある。これはかなり重要。あらゆる処理の待ち時間を減らすためだ。

 まさに本格的な映画、ビデオ、DVDがさくさく、すいすいと制作できる。20年前、いや10年前には到底考えられなかったことが実現している。 

 私が20年前、池田こみちさんとフジテレビの研究所にいたとき、社長がアメリカから数千万円もするノンリニアーのデジタル編集ハード、ソフトを買ってきた。それとほぼ同じことが10万円以下でできることになっている。

 後はデジタル時代の「ジャーナリスト魂」と現場に行く「足」だけである。ぜひ、皆さんも試して欲しい。