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ある小泉チルドレン

青山貞一

2006年12月2日


 とかしき・なおみ(本名、渡嘉敷直美)氏は、東京都の杉並区議を2期つとめ、昨年夏(2005年7月3日)に行われた東京都議会議員選挙に転出した。

 私は杉並区議時代から彼女のことをよく知っている。彼女は私が主催した環境問題の海外視察や会合によく参加していたからだ。


中華民国環境保護署にて
左から黄局長、青山貞一、張環境大臣、渡嘉敷杉並区議(当時)氏

 彼女がとくに関心を持ちがんばったのは、いわゆる「杉並病」問題である。東京都民が出す大量のプラスチック容器を破砕、圧縮、梱包するための中継基地が杉並中継所である。その施設の周辺住民が次々と原因不明、病名不明の病気にかかった。その「杉並病」に彼女は杉並区議として、ひとり敢然とたちむかっていた。

 そんな彼女だが、あるとき杉並区議から転出をはかりたいと言い出した。

 そして2005年7月に行われた東京都議選では、以下の開票結果があるように、こっぴどい目にあうことになった。なぜなら彼女は単なる落選ではなく、法定得票数に達せずの落選であったからである。当然のこととして供託金は没収される。

■杉並区(6−13)開票終了
氏名 年齢 所属 得票数 新旧 当選回数
松葉 多美子 42 29,799 1
田中 良 44 22,928 4
早坂 義弘 36 22,283 1
吉田 信夫 55 18,924 3
門脇 文良 50 17,425 1
福士 敬子 66 17,337 3
大泉 時男 63 15,600 0
堀之内 敏恵 32 10,732 0
木梨 盛祥 55 8,285 0
長谷川 英憲 67 7,977 1
渡嘉敷 奈緒美 42 6,249 0
千葉 昇 62 4,738 0
  中川 修 33 588 0
出典:東京新聞都議選挙速報

 東京都議選で法定得票数も取れずに落選した渡嘉敷氏だったが、その直後、郵政民営化法案の賛否をめぐり行われたあの衆議院議員選挙に突如、大阪7区から小泉チルドレンの一人として出馬、立候補。何と当選したのである。しかも、5期当選している民主党の藤村氏を抑え、小選挙区で当選した。

■2005年衆院選 小選挙区 大阪7区 開票終了
当選 氏名 党派 新旧 重複 得票数 当選回数
渡嘉敷奈緒美 98,151 1
藤村  修 84,373 5
  有木  茂   27,573  
  山口 克也   16,256  

 これには私や彼女を知る者は一様におどろいた。

 私たちのおどろきの内容は、次のようなものである。

(1)なぜ、都議選で法定得票数にも達しなかった彼女、がこともあろうか大阪から衆議院議員選挙に出ていきなり当選したのか、

そして

(2)今までずっと無党派市民派で環境問題をライフワークとしてきた彼女が、何で自民党、それも大阪から出たのか

である。

 もっぱら、昨年のあのすさまじい状況から考えれば、誰がどこの選挙区で立候補し当選しても別に驚くに値しないだろう。

 だが、直前の東京都議選で法定得票数にも達せずに落選した彼女が、こともあろうか国政、それも衆議院議員選挙で当選するとは誰一人想像だにしなかったことは間違いない。

.....

 ところで、小泉チルドレン、渡嘉敷氏は、衆議院議員に当選のはるか前から、知る人ぞ知る「ひと」であった。

 たとえば世間では、「東京にもいられなくなったのか、大阪へ行ってまさか衆議院とは二度驚き」と言う論評もあった。東京にいられなくなったという理由?がそれである。

 そういう私自身、以下のスキャンダルを知ったのは、彼女が都議選候補として出馬する直前であった。

 彼女が某知事に都議選候補としての自分に選挙応援をして欲しいと私に依頼してきた。そこで環境派都議を出すのは当然、良いことだと考え、その某知事に連絡した。

 すると、某知事は、複数の新聞と週刊誌の記事をPDF化し、私に転送してきた。曰く、「青山さん、これ知ってる?」と。それらの記事を見てびっくりした。私はそれらをそのときはじめて知ったからである。

 当然、某知事からの応援の話はおじゃんとなった。

 肝心なスキャンダルの内容だが、それは渡嘉敷氏が杉並区議会議員時代、山田区長との間の不倫騒動、それも、渡嘉敷区議(当時)、山田区長、渡嘉敷氏のご主人K氏(その後、両者は離婚)の3人の間で信じられない泥沼そしてドロドロの騒動があったからだ。渡嘉敷氏とK氏は某私塾の一期生。その塾で知りあい、その後結婚している。

  2001年12月、K氏は渡嘉敷氏のパソコンから山田区長との間の読むに耐えない生々しいやりとりを含む多数のメールを発見した。K氏はそれらメールから妻と山田区長とのW不倫をしていることを確信、山田区長に対し妻との関係の説明を求めたのである。そこまではよいとして、その後、事態はとんでもない方向に進む。

 区長は、K氏と、K氏の代理人として交渉にあたっていた友人の二人をこともあろうか恐喝未遂で警察に告訴してしまったのである。その結果、2002年6月、K氏とその友人は逮捕、拘留された。

 しかも、山田区長はその後、「犯人(K氏ら)がメールを偽造したと認め、謝罪(示談)した」という弁明書を区政関係者に配布した。

  思わぬ逮捕とそれに続く留置場での長期の拘束をおそれたK氏は、泣く泣く山田区長と示談、釈放された。しかし、山田区長が配布した弁明書にある主張の内容が「ウソ」であるとして、今度はK氏が2005年2月、東京地方裁判所に民事の名誉毀損で裁判を提起した。

 以下はK氏による提訴を報じる週刊金曜日の記事。執筆している横田一氏も渡嘉敷氏、K氏同様、某私塾の一期生である。横田氏は以下の週刊金曜日以外にも何本か本件で記事を書いている。

小泉チルドレン渡嘉敷奈緒美(元杉並区議)
の元夫が名誉毀損で山田・杉並区長を提訴


 山田宏・東京杉並区長を名誉毀損で訴える裁判が2005年4月13日、東京地裁で始まった。訴えたのは、杉並女性区議の元・夫のK氏。

 訴状などによると、01年12月、女性区議と区長との交換メールを見て不倫を確信したK氏が、友人を介して区長に謝罪と示談金(妻との不貞行為に対する慰謝料)を求めたが、区長の代理人の渕上貫之弁護士が途中で長期入院するなどしたため、02年5月、メールを公表するとファクスで杉並区役所区長室に予告した。

 すると区長は被害届を警視庁に出し、6月8日、K氏は友人と共に恐喝未遂で逮捕された。さらに区長は「事実無根の『偽造メール』であることを犯人は認めて謝罪」と記した文書を後援者らに配布。

 K氏は「不倫の被害者なのに恐喝未遂で逮捕され、『犯人』呼ばわりもされた。当初は徹底抗戦のつもりでしたが、『裁判になると半年は出られませんよ』と言われて泣く泣く示談にした。その内容は、区長は被害届を取下げ、私は事件を口外しない、でした」。


 当時の新聞は「杉並区長脅し 3千万要求」「山田区長は両容疑者と面識ないといい」(02年6月12日付朝日新聞)などと、見知らぬ第三者が難癖をつけて金を脅し取ろうとしたかのように報じたが、実際は、不倫をめぐり協議中の交渉相手だったのだ。

 先の渕上弁護士は「K氏の代理人(友人)から『2000万円から3000万円』と言われましたが、『相場は400万円』と話しました。首を絞められた時に手をはらいのけるのは正当防衛だが、ナイフで刺すのは過剰防衛で違法。3000万円の慰謝料請求は過剰防衛にあたる」等と説明する。 

 どう見ても民事事件だが、民事不介入のはずの警視庁は区長の被害届を受け、K氏らを逮捕。山田区長は「メールは事実無根」と争う姿勢で、今後の裁判が注目される。

週刊金曜日 ジャーナリスト横田一 

 2006年5月19日、ひとずてにK氏が山田区長と渡嘉敷前妻を名誉毀損で訴えていた上記の民事裁判が和解となったことを聞いた。

 山田区長とK氏が合意したという文書によると、山田区長はこれまでの主張を翻し、以下の2点を認めたという。

 すなわち
 (1)K氏側がメールを偽造した事実はない
 (2)K氏側を恐喝未遂の犯人呼ばわりしたことを謝罪する

 その上で山田区長は、K氏らに計500万円の慰謝料を支払うことになったのだそうだ。

 ここで誰でも疑問を感ずるだろう。

 もし、本当に山田区長と渡嘉敷前杉並区議が不倫などをしていなければ、500万円の慰謝料(和解金)など支払う必要はないからだ。

 一方、東京都議選で法定得票数に満たなかった渡嘉敷議員の方は、未だに山田区長との件は一切知らぬ存ぜぬを決め込んでいるようだ。

 以下は、今や少々古くなった記事だが、週刊フライデーに掲載されたことの顛末である。内容は、けっしで芸能人の同士の話しではない。

 それにしても、自民党は造反議員の「復党問題」でこの間、実に見苦しい、そして節操のないことをし続けている。

 そこでは、まさか郵政民営化法案に反対し、自民党を追い出されると思っていなかった議員らのぶざまな姿とともに、それら議員の対立候補としてその場限りで利用された小泉チルドレンのぶざまな末路と実像も国民の前にしっかりと見えている。

 けなげに杉並病問題でがんばっていた頃の渡嘉敷氏が、ひとたび代議士になるや、ほとんど政治家としてのプレゼンス、存在感がなくなったことを危惧するのは私だけではあるまい。

 【小泉チルドレン】女性代議士【とかしき なおみ】
に“灰色決着”不倫騒動を直撃!

フライデー2006年06月02日

〈夢のようなひと時でした。大好きな貴方に私の料理を振舞うことも出来て、貴方の膝枕でゆっくりして(本当は逆にしてあげる予定だったのに先に甘えてしまってました、失礼!)、熱く激しい○○○もして初めて二人だけの語らいの時が持てて…最高に幸せでした〉(原文ママ)

 読んでいるだけで赤面してしまいそうな文面である。実はこのメールは、自民党の一年生議員・とかしきなおみ衆院議員(43)が、山田宏杉並区長(48)に送ったとして、法廷で争われたものだ。このメールが発端となって勃発した政界のドロドロ不倫裁判が先日、両者の和解によって決着した。

 この裁判は、とかしき氏の夫だったK氏('02年7月に離婚)が山田区長を名誉毀損で訴えていたものだ。

 K氏の主張によれば'01年12月、K氏は当時杉並区議を務めていたとかしき氏のパソコンから、妻子ある山田区長とやりとりしたメール約70通を発見。その多くが二人のダブル不倫関係をうかがわせる内容だった。

 K氏はこれらのメールをもとに、山田区長に対し妻との関係を説明するよう求めた。しかし区長は、K氏と、K氏の代理人として交渉にあたっていた友人の二人を恐喝未遂で告訴。'02年6月、K氏らは逮捕されてしまった。その後、山田区長は「犯人(K氏ら)がメールを偽造したと認め、謝罪(示談)した」という弁明書を区政関係者に配布した。

 一方、留置場での長期拘束を恐れて泣く泣く示談したK氏は、山田区長の主張がウソであるとして'05年2月、東京地裁に名誉毀損で提訴していたのである。

 この名誉毀損裁判は5月19日、和解した。両者が合意した文書によると、山田区長はこれまでの主張を翻し、以下の2点を認めている。

(1)K氏側がメールを偽造した事実はない

(2)K氏側を恐喝未遂の犯人呼ばわりしたことを謝罪する

 その上で山田区長は、K氏らに計500万円の慰謝料を支払うことになった。

 山田区長は、メールが「K氏による偽造ではない」ことを認めた。であれば、メールは「本物」だとするのが、ごく自然な見方だろう。では、とかしき氏と山田区長の“不倫”も本物だったのでは? だが、本誌が山田区長を直撃すると、やや意味不明な主張をまくし立てた。

「今回の和解はK氏らの偽造を疑い、犯人呼ばわりしたことに対する謝罪です。ただ、メールは偽造です。どこかの誰かが(自分を陥れるために)メールを作り、K氏らが利用されたのかもしれません。とかしきさんとは、あくまで区長と区議の関係でした。連絡をとるような関係ではありません」

 とかしき氏はどう答えるのか。本誌は彼女も直撃した。

――山田区長が和解したが。

「(特に驚く様子もなく)裁判のことは全然聞いていませんから」

――区長から和解について連絡はあったのか?

「何もないです。一度もありません」

――メールが偽造という主張は今も変わらないか?

「ええ。誰が作ったものかはわかりませんけれど」

――区長との関係も認めないのか。

「うん、はい」

――選挙区の皆さんに一言。

「……(笑顔のまま無言)」

 最後はタクシーに乗り込み、記者とカメラマンに会釈して去っていった。

 山田区長、とかしき氏ともに、メールがまったくの第三者によって偽造されたものだという可能性に言及している。仮に第三者による偽造だった場合、その第三者はとかしき氏の自宅に侵入し、彼女のパソコンにメールを紛れこませたことになる。彼らに心当たりの人物はいるのだろうか。

 K氏は和解前、本誌の取材に応じ、とかしき氏に対する憤りを露にしていた。

「彼女は、山田区長が私を恐喝未遂犯に仕立て上げようとするのを止めませんでした。夫婦間でも信頼を築けない彼女が、国民のために汗をかいて働くとはとても思えないのです」

 選挙民の付託を得て区長や代議士という職にある以上、彼らの主張にウソがないと信じたいのだが。