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スウェーデン原発事故と
日本のメディア・NGO

青山貞一

2006年8月13日


 本ページ転載大歓迎!

 2006年8月5日付けで独立系メディア「今日のコラム」が報じたスウェーデンの原発事故(10基中4基が停止)は、ニューヨークタイムズ、タイム、ガーデアンなど欧米の主要メディアが大々的に報ずるなか、日本のマスメディアはまったく報ぜず、その後も日本の主要新聞の記事が皆無(青山が確認した限り)という異常な事態が続いている。

 どういうわけか、日本のマスメディア(主に新聞、テレビ)はこの種の原発事故や核廃棄物再処理事故に係わる問題に押し黙っている。

 もっぱら、これは今に始まったことではない。

 筆者(青山貞一)が6回に分け詳報した英国の核廃棄物再処理工場セラフィールドで起きた大事故ですら、ごくごく小さなベタの記事が通信社経由ででたたけだ。

 膨大な量のプルトニウムが流出した大事故にもかかわらず、日本の大マスコミは一様に押し黙ったのである。

 これは河野太郎衆議院議員(自民党所属)が自身のブログ(以下参照)で明言するように「電力会社の広告宣伝費がそれだけマスコミにとっておいしいという」ことなのだろうか? 

○英セラフィールド再処理施設から漏れ出る放射能汚染
1)河野太郎議員の問題提起
2)その位置と施設の概要
3)プルトニウム30kgを紛失
4)莫大な放射性物質の漏洩
5)環境汚染の実態
6)今回のコラム執筆で分かったこと

 日本のメディアにとって電力会社、電気事業者連合会、原子力産業会議傘下の企業は、自動車、家電関連企業同様、大きなスポンサーであることに間違いない。

 だからといって、この種の事故、事件に目をつむるとするなら、日本のメディアは、メディアとしての機能を喪失しているといわざるをえないだろう。

 いずれにしても、まったく信じられないことであり、情けないことである。

 ※本件に関し、メディア関係者からの意見を募集します。
   ただし、実名、所属を明記してください。情報提供者の
   守秘は必ず対応します。そのうえで、ペンネームなど
   による意見公開が可能な場合は、その旨を明記下さい。


 一方、日本のこの分野に関連するNPO/NGOはどうか?

 事件当初からそうであったが、グリーンピース・ジャパン(GPJ)はなぜか、この事件について今ままで何の対応もしていないようだ。

 この分野で世界有数のNGO/NPOであるグリーンピース(GP)だが、どういうわけか、日本のグリーンピース(GPJ)の反応がきわめて鈍い。まさかこれも河野太郎さんが指摘することと関係はあるまい。

 私たち(独立系メディア)がスウェーデン原発事故についての第一報を出してから1週間以上が経過した。しかし、日本のグリーンピースのホームページを見てもこの事件についての情報が未だ掲載されていない。

 ※本件に関し、NGO/NPO関係者からの意見を募集
   します。ただし、実名、所属を明記してください。
   情報提供者の守秘は厳守します。そのうえで、ペンネ
   ームなどによる意見公開が可能な場合は、その旨を
   明記下さい。


 一方、Web上では多くのブロガーが私たち独立系メディア「今日のコラム」の第一報を引用し、喧しく記事を書いている。

 彼らはさらに世界の新聞記事や現地スウェーデンから情報を入手するなどして、記事を書いている。また専門家からも私たちのところに事故の詳細を日本語にされ送られてきている。
 
 以下は、グリーンピース英国(UK)のホームページに2006年8月4日に掲載された記事の和訳(津田秀一氏)である。
スウェーデン、安全性が
確認されるまで原発を閉鎖
原題:Sweden closes nuclear plants over safety fears

グリーンピース英国 翻訳:津田秀一

 「炉心溶融に至らなかったのはまったく幸運だった。」と、先週フォルスマーク原子力発電所で起きた過酷事故の後、同原子力発電所の前幹部職員の一人は言った。現在、スウェーデンでは、原子力発電所の欠陥が発見されたために、10基のうち4基が停止している。スウェーデンで起きた発電機の故障は英国でも容易に起こりえるものだ。

 原子力発電所停止によって、スウェーデンの電力供給の約20%が減少した。フォルクマーク原子力発電所への主電力供給が途絶えたときに、緊急電力供給システムが20分間にわたって作動しなかった。もし、電力が復旧しなかったら、数時間のうちに重大事故が起こっていた可能性がある。

 「炉心溶融融に至らなかったのはまったく幸運だった。必要なときにネットワークからの電力供給が途絶えたら、破局事故が起こっていたよ」と、先週起きた深刻な事故の後、フォルスマーク原子力発電所の前幹部職員の一人は言った。

 電力バックアップシステムの故障原因は1993年に導入された新しい装置に由来していると思われる。炉心溶融を防止する主要装置であるこの欠陥装置は、完全に品質保証されないまま、13年間見過ごされてきた。今や欠陥装置と認定された、この装置と同じものは他国の原子力発電所にも導入されている。

 ドイツではすでに、同じ欠陥が同国の原子力発電所に影響を及ぼさないか、調査を開始している。英国では、スウェーデンで起きた発電機の故障は容易に起こりえる!!そして、その結果、炉心溶融が起こりえる。炉心溶融によって、スリーマイル島のような事態が起こると予想されるが、より悪い場合のシナリオでは、放射性ヨウ素が、スカンジナビア半島、ドイツ、そしてヨーロッパの他の地域にも飛散する可能性があるのだ。

停電

 原子力発電所事業者の宣伝では、原子力は将来の停電を防止するために必要だ、と言ってきた。しかし、実際には原子力発電所は停電に脆弱である。すべての原子力発電所はそれ自身を制御するために電力が必要なのだ。もし、主電力が失われたときには、バックアップ電力が炉心の制御のために必要である。この電力はバックアップ発電機によって供給されるが、この発電機が故障したり、嵐や洪水によって影響をうけたという多くの事例が発見されてきた。このことが米国やその他の国で原子力発電所の一時的な稼動停止をもたらしてきた。

 風車発電装置やソーラー発電装置に電力供給が途絶えて、ネットワークへの発電をやめてしまったときにも、炉心溶融の恐れはない。原子力発電所は旧式の、非効率的な集中電力ネットワークに依拠していて、このネットワークは停電に対して脆弱である。クリーンな再生可能エネルギー源は、電力消費地の近くで発電することで、より効率の良い分散型の電力を作り出すのに役立つ。気温が上昇したときには原子力発電所は稼動を停止する。

このスウェーデンの原子力発電所トラブルによって、暑くて乾燥した今夏は、ヨーロッパ中の原子力発電所の足元にも火がついた格好だ。ドイツの二つの原子力発電所は最近、原子炉冷却のための川の水が不足したために、出力を下げざるを得なかった。旱魃が続けば、冷却水を川に依存している多くの原子力発電所が操業停止に追い込まれるだろう。

 幸いなことに、スウェーデンはここ数年のうちに、原子力発電所を漸次使用停止にする計画である。不幸にもごく少数のヨーロッパの他の国-フランス、フィンランド、英国-は、危険で、汚く、費用がかかり、停電時に危険な故障を起こし、旱魃によって停止する、原子力発電所への依存を決定しているようだ。

  これら最近の事例によって、産業界が原子力は信頼の置けるエネルギー源である、という嘘をついていることが分かった。

 安全で再生可能なエネルギーとエネルギー効率化政策の組み合わせが、唯一の、安心で合理的な発電問題の解決策だ。

 行動を起こそう!

 国会議員に手紙を出し、原子力発電所反対、エネルギーの効率化と再生可能エネルギー賛成を表明しよう。