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カナダ東部地域環境会議
への参加


青山 貞一 武蔵工大環境情報学部教授
池田こみち 環境総合研究所副所長

2006年4月25日



■はじめに


 昨日(2006年4月23日)遅く、カナダ東部のノバスコシア州、ハリファックス市にきた。ハリファックス市(人口36万人)は日本から北半球で一番遠い大きな都市、稚内に近い緯度にある。気温も低いうえ、昨日より雨降りで寒い。数年前の2月、最初にこの地に来たときは何とマイナス20度だった。

 今回、航空機はエアーカナダを使った。

 たまたま搭乗した航空機に、日本からカナダ政府に引き渡す司法行政関連者がおり、トロント国際空港の航空機の到着場所が通常のターミナルビルからはるか遠い場所となった。その結果、一般乗客が入国審査を受け、荷物を受け取るのに通常より20分以上時間がかかってしまった。

 私たちは、トロントで航空機をトランジット(乗り換え)し、ハリファックス国際空港に向かったが、トロント空港でのトランジット時間が限定されたこともあって、成田からハリファクスに到着した私たちとしてもう一人日本からきた旅行者の荷物がハリファックス空港に到着せず、現在ホテルで到着を待っている。

 先ほど、やっとハリファックス空港に私たちの荷物が到着したという連絡がエアーカナダから入った。しかし、実際に荷物が手元に届くまで安心はできない。

■カナダ東部地域環境会議

 今回のハリファックスを訪問した主目的は、今日から開かれるカナダ東部地域環境会議の主催者から招聘を受け、会議で講演することにある。ハリファックスは今回で4回目だ。

 カナダ東部地域環境会議は、カナダ東部のノバスコシア州を中心心とした州政府やプリンスエドワード島(PEI)、ニューファンドランド、ラブラドールなどの自治体や企業、NPOなどがハリファックスに一堂に集まり、廃棄物管理を中心に環境政策について自分たちの具体的な取り組みを報告し、議論、交流するための会議だ。

 私たちは、日本の廃棄物管理と市民参加の実態、課題について27日に講演する。会議の開催場所は、ノバスコシア州政府ビルの真ん前、以前G7などが開催されたハリファックス随一のウエスティン・ノバスコシアと言うホテルである。

 こちらノバスコシア州では、日本のようにゴミを安易に「燃やして埋める」ことから脱するため、この10数年間、どの基礎自治体も熾烈な努力をしている。

 とくにゼロウエイストを宣言し、世界のトップランナーとなっているノバスコシア州では、わずか5年間でゴミの発生量を半減させ、全州規模の法律制定により各種容器の完全デポジット制度を導入した。一般廃棄物で最も多くの割合を占める生ゴミを全面的に堆肥化するとともに、紙、タイヤ、ペンキ等を全面リサイクルすることによって、日本でいうところの一般ゴミの焼却はほとんどなくなり、埋め立て量もわずかとなっている。

 法律によって制定、施行されているデポジットでは、各種容器はノバスコシア州にメーカーがカン・ビン・ペットボトル等の飲料を卸す段階でデポジット金を一括徴収している。徴収したお金の半分を消費者が容器を持参した際に払い戻し、残り半分を固形廃棄物資源管理法と言う州法で設置された非営利法人(RRFB)経由で、環境教育などの啓発はじめ各種の廃棄物資源化プログラムに使われている。

 すでにこの地では、実質的に「脱焼却」を達成、現在「脱埋め立て」に向けて廃棄物の発生抑制、排出規制、減量化、3R→5Rに邁進している。

 この春、ノバスコシア州北部ケープブレトンのシドニーにひとつだけ残っていた焼却炉も閉鎖された。

 今後は、日本でいうところの一般廃棄物から産業廃棄物に廃棄物管理、資源化の中心が移ってゆく。

 現在、家電(e-waste)をかわきりに日本でいうところの産業廃棄物へのドイツ型のEPR(拡大生産者責任)システムを州法の制定により順次施行しているようだ。その前提に、スチュワードシップと呼ばれる、企業や市民と行政との間でのパートナーシップがある。

 カナダは連邦国家であり、今後、上記ノバスコシア州の先進的な試みを他の州、とくに大都市を抱えるオンタリオ州、ケベック州など東部各州で政策展開することを含め、4月25日からハリファックスでカナダ東部地域環境会議が開催されるわけだ。

■カナダの環境政策との出会い

 青山、池田が20数年前、最初にカナダに来たときも、大気汚染防止の国際会議への参加だった。東京の赤坂にあるカナダ大使館が私たちにカナダの研究者と会って欲しいと要請され、会って議論したのが最初だ。

 その後、研究者がカナダに帰国後、カナダ各地で開催される環境関連会議への招聘や参加要請をしてくるようになった。

 最初に招聘を受けたその大気汚染国際会議は、開催場所がアルバータ州カルガリー、当時、バンクーバーからトランスカナダ鉄道でで現地に入いった。

 そのとき発表した論文は、「日本における大気環境政策の効果と課題」で、国、自治体、企業、国民(市民)、マスコミ、研究者、弁護士(訴訟)らそれぞれが果たした役割と効果、課題について報告した。

 それ以来、カナダとのつきあいが続いている。それらはカナダ政府やカナダの日本大使館に関連とのつきあいはじめ、学会報告、NPO.NGO的なものなど多岐にわたっている。しかし、いずれも環境分野だ。さらに日本にカナダから来る留学生やモデルなどの里親引き受けなど、個人ベースの交流も行ってきた。

 カナダ最東部の州、ノバスコシア州には3年前の冬に予備調査できて以来、今回で4回目だ。

 その後、2003年の夏に30名、2005年夏に20名のNPO、NGO、行政担当者、ジャーナリスト、学生らをノバスコシア州におつれし、ノバ流の循環型社会構築のべ現場視察と交流をしてきた。

 一昨年からは、文部科学省の「特色ある大学教育プログラム」の一部にもカナダノバスコシア州循環型地域構築が位置づけられ、武蔵工業大学環境情報学部の学生、大学院生らも現地にきている。

 2回目の現地視察では、あらかじめカナダ大使館(東京都港区赤坂)にノバスコシア州から担当者を呼び、300人規模のシンポジウムを開催した。現地視察では、ハリファックスにあるシタデルという歴史的遺産の会議室で、カナダの国連環境大使、ノバスコシア州環境大臣らが歓迎レセプションを行ってくれ、私たち(環境総合研究所の青山、池田)に対し、カナダの環境政策を日本に紹介することなどについて表彰を受した。