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我々は負けていない!

大津地裁仮処分決定は

住民の指摘を認めている


海渡雄一
 (脱原発弁護団全国連絡会 共同代表)

掲載月日:2014年11月28日
独立系メディア E-wave



2014年11月27日
我々は負けていない!
大津地裁・大飯・高浜原発差し止め仮処分決定は住民の指摘を認めている

                   海渡 雄一
                   (脱原発弁護団全国連絡会 共同代表)

差し止め請求却下の決定

 関西電力の高浜原発3、4号機(福井県高浜町)と大飯原発3、4号機(同県おおい町)の地震対策は不十分だとして、滋賀県の住民らが再稼働差し止めを求めていた事件について、大津地裁(山本善彦裁判長)は11月27日に、申請を却下する決定をした。

 関西電力が2013年7月、再稼働に向けて、規制委員会に対して新規制基準への適合性審査を申請し、原子力規制委員会が審査を進めていた。

 この事件は、滋賀県の住民が大津地裁に提訴していたが、弁護に当たっていたのは吉原、井戸弁護士らであった。

 今回の決定は、結論こそ却下であるが、その理由を「規制委員会がいたずらに早急に、新規制基準に適合すると判断して再稼働を容認するとは考えがたい」と説明している。つまり、再稼働が目前に迫っているわけではないからまだ差し止め決定を出す必要性がないといっているのだ。

 住民の側は、若狭湾の周辺には多くの活断層があり、想定を超える地震や津波が起こる可能性が高いこと点を差し止めを求める理由として主張してきた。原発の耐震設計の基準となる基準地震動が過小に評価されており福島原発事故と同じような事故が起き、琵琶湖が汚染され、住民の生命と健康に深刻な危険が生じることをと訴えてきた。

 決定はこのような住民側の指摘を否定していない。むしろ否定していないどころか、これを認めていると評価できる。

原発事故の取り返しのつかない重大性を明確に認めている

 まず、第1に、「事故の重大な結果に照らせば,本件各発電所の再稼働後に,いったん重大な事故が発生してしまえば,文字通り,取り返しのつかない事態となり,放射能汚染の被害も甚大なものとなることが想定される」ことを認めている。

新規制基準の合理性について関西電力は説明していない

 第2に、新規制基準の合理性について、関西電力が何ら説明を加えていないとし、「自然科学においてその一般的傾向や法則を見いだすためにその平均値をもって検討していくことについては合理性が認められようが,自然災害を克服するため,とりわけ万一の事態に備えなければならない原発事故を防止するための地震動の評価・策定にあたって,直近のしかも決して多数とはいえない地震の平均像を基にして基準地震動とすることにどのような合理性があるのかに加えて,研究の端緒段階にすぎない学問分野であり,サンプル事例も少ないことからすると,着眼すべきであるのに捉え切れていない要素があるやもしれず,また,地中内部のことで視認性に欠けるために基礎資料における不十分さが払拭できないことなどにも鑑みると,現時点では,最大級規模の地震を基準にすることにこそ合理性があるのではないか。」と判示している。

 このような考え方は今年5月21日の福井地裁の大飯原発差し止め判決と共通する見方である。さらに、「自然科学においてその一般的傾向や法則を見いだすためにその平均値をもって検討していくことについては合理性が認められようが,自然災害を克服するため,とりわけ万一の事態に備えなければならない原発事故を防止するための地震動の評価・策定にあたって,直近のしかも決して多数とはいえない地震の平均像を基にして基準地震動とすることにどのような合理性があるのか」という部分は、浜岡原発訴訟や川内原発仮処分など、全国の裁判所で脱原発弁護団が一致して訴えてきたことを明確に認めたものであり、画期的な判示である。

避難計画すら立てられていない段階で規制委員会が再稼働を容認するとは考えがたい

 第3に、決定は住民の避難計画にも言及し、「原発事故に対応する組織や地元自治体との連携・役割分担,住民の避難計画等についても現段階においては何ら策定されておらず,これらの作業が進まなければ再稼働はあり得ない」としたのである。そして、結論として、「このような段階にあって,同委員会(原子力規制委員会のこと)がいたずらに早急に,新規制基準に適合すると判断して再稼働を容認するとは到底考えがたく,上記特段の事情が存するとはいえない。」として、住民の訴えを却下した。

決定は再稼働が切迫すれば司法はストップをかけるという警告だ

 このように、この決定は原発の安全性を認めたものでないことはもちろんのこと、規制委員会が再稼働を容認するとは到底考えられないとしたのであり、むしろ、住民の指摘をかなりの程度までみとめた決定であると評価できる。つまり、いまより再稼働が現実のものとなったときには司法はこれを差し止めるべきだとする考え方を含んでいると理解することが許されるであろう。

川内の仮処分で必ず勝利を!

 我々は負けていない。原発再稼働を許さない闘いは、ここまで裁判所を追い込んできた。次は川内原発だ。規制委員会の結論が出ている川内については、司法は逃げられない。我々は、鹿児島地裁で、川内原発の再稼働を差し止める司法の審判を勝ち取ろう。