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日本の「政官業」による
焼却炉マレーシア売り込み問題

 使節団への対応 
青山貞一 池田こみち 鷹取敦
環境総合研究所
掲載月日:2014年6月30日  
独立系メディア E−wave

無断転載禁


 日本が「政官業」でタッグを組み、日本の重厚長大メーカー各社が大型焼却炉を激しく東南アジア諸国に売り込んでいる問題に関連し、マレーシアから野党系議員を含む4名の使節団が6月26日に来日し、6月27日午前9時から12時まで環境総合研究所側からのレクチャーとそれへの質疑応答、情報提供を行った後、来日された4名のうちアテンド者を除く3人にインタビューを行いました。

 環境総合研究所側からのレクチャー(プレゼンテーション)は、ともに詳細なデータ、解析結果、図などをもとに池田こみちが主に廃棄物管理の政策、施策、建設予算、維持管理費、入札方式、内外価格差、さらに大気、水、土壌などへの環境影響、規制基準、モニタリングなど、ほぼありとあらゆる実態と課題を1時間半ほど話しました。


池田こみちのプレゼンテーション 
出典:(C)環境総合研究所

 池田は毎年、米国のテンプル大学日本校からの依頼(業務)でインドネシアから来られる官僚、地方職員、研究員らを相手にほぼ同じ内容の講義と東京都23区の焼却炉や処分場視察のアテンドをしていますので、今回は、そのマレーシア版ということで、担当してもらいました。産廃焼却炉が集中して立地した複合的・広域的汚染については所沢市のシミュレーション等の事例を詳細に紹介しました。

 その後、鷹取敦が廃棄物焼却にともなう大気汚染の影響、シミュレーション結果などを20分話しました。さらにすでに4回ほど現地調査し、現地で講演しているカナダのノバスコシア(ハリファックス)の実例を池田こみちが話しました。

 シミュレーションでは、今や有名となった渋谷清掃工場の大気拡散の具体例も見せています。マレーシア政府と与党議員の視察団はこの渋谷工場も視察していますが、ここはまさに、住民の激しい反対運動と訴訟がおきた現場であることを知っていただきたいものです。


渋谷清掃工場裁判でも用いた日本各地の環境アセスメントの非現実性
についての環境総合研究所の比較シミュレーション
出典:(C)環境総合研究所

 平坦地形を前提として簡略化されたプリュームモデルと地形を考慮した3次元流体モデルにより地上に落ちる汚染はこんなに違うなど、また全国各地の一般廃棄物焼却炉、産業廃棄物焼却の地形を考慮したシミュレーションの事例について詳細に説明しています。


茨城県城取清掃工場裁判で用いた環境総合研究所の2次元流体シミュレーション
出典:(C)環境総合研究所

 使用言語はすべて英語でしたので、逐次通訳を入れる場合に比べて時間が半分となり効率的でした。話しの最中に随時、質問を受けましたが、マレーシア使節団は非常に熱心に質問をされていました。最後に1時間ほど全体で議論をしました。

 環境総合研究所にはこの分野の独自調査、住民団体からの依頼に基づく調査など、膨大な調査結果や情報がそろっており、それらの主要な事例について視察団が来る前に英文のパワーポイントを作成、印字し当日お渡ししました。10年以上市民参加で続けている松葉ダイオキシン調査や重金属調査などについてもお話ししました。汚染の実態を市民が知ることは、問題解決の第一歩となるからです。


市民参加で行った東久留米柳泉園清掃工場周辺の土壌中重金属汚染調査結果
焼却炉周辺地域でカドミ、鉛などの重金属類が高濃度となっていることが
分かった。
出典:(C)環境総合研究所


東京23区南部での市民参加の松葉ダイオキシン調査結果
プレスチック焼却後、明確にダイオキシン類濃度が上昇していることが分かった
出典:(C)環境総合研究所

 これまで、日本政府、東京23区清掃一部事務組合、メーカー等がADB、JICAルートを含め、大型焼却炉の東南アジア諸国への地ならしをしてきたこと、またマレーシアについては住民側の激しい反対で荏原製作所の焼却施設建設が途中で中止され、最終的にマレーシア政府が、数10億円の賠償金を荏原に支払うことになったことなどもあり、使節団は相当この分野について勉強しており、真剣に話しを聞かれ、質問され、議論が白熱しました。


環境総合研究所訪問記念撮影 

 今回の一件は、青山の知人との昨年来来のメールのやりとりで、議論してきましたが、具体的な来日の話しは、マレーシアの政府と与党に対する安倍首相らのトップセールスに加えて、東京23区清掃一部事務組合と焼却炉メーカがタッグを組んでの激しい売り込みが行われたことを受け、危機感を感じた野党系国会議員や地方自治体幹部、NGO等が急遽来日し意見を聞きたいということで実現しました。

 今回のマレーシアの一件では、M重工のストーカー炉がはじめから名指しされていたこともあり、内外価格差についてはプランドの畔上さんがその昔調査した実例、すなわちM社が東南アジア、台湾などで落札した価格と日本での価格の差が2〜3倍もあること、さらに仙台市松森のM社ストーカー炉の導入が裁判となったとき、青山が証人として話した具体的内容などを話しています。

 また青山からは、NGO価格でクアラルンプールの立地予定地(窪地)を対象とした3次元流体シミュレーションをしてあげたいと提案し、すごく喜ばれました。このシミュレーション調査を実現する場合には、マレーシアに行き現地を見てきたいと思います。とりあえず、地形データと気象データを整備しておくように伝えました。

 なお、研究所にこられたのは6月27日午前中ですが、前日はアテンドの女性ジャーナリストが世田谷区長と知り合いだったことで、区長に連絡したところ、すぐに東京23区清掃一部事務組合に連絡が行き、使節団は世田谷区の千歳工場の見学を行うこととなりました。

 27日午後は、M社のストーカー炉が導入されている東京23区清掃一部事務組合の有明工場を見学(池田が通訳などを兼ね同行)したあと、環境省で記者会見を敢行しました。


池田こみちのプレゼンテーション 
出典:(C)環境総合研究所

UFOと見間違える?有明清掃工場から熱供給されている江東区スポーツセンター
撮影:池田こみち


マレーシア使節団の質問に答える有明清掃工場の
工場長で通訳案内士 二階堂氏
撮影:池田こみち

 マレーシア政府と与党議員団が同じ週の前半に日本を訪れ、足立工場、杉並工場、渋谷工場などを視察し、日本の焼却炉技術の導入に前向きな発言をしていたことから、同じ国からの野党系議員や自治体、市民団体の見方を是非ひろく日本の市民にも伝えたいという趣旨で記者会見をセットしましたが、結果的にそうした視点を取り上げるメディアはなかったのがいかにも日本の記者クラブの限界というか、問題意識の欠如と言われても仕方がないところだと感じます。

 翌28日、一行は世田谷区にある23区南生活クラブ生協本部を訪問し、市民参加の松葉調査はじめ市民レベルでの5Rの取り組みについて情報交流と議論を行いました。

 以下は、独立系メディア E-wave Tokyoによるインタビューの動画です。池田がインタビューアーとなり20分ほど行ったものです。

◆独立系メディア E-wave Tokyo 独占インタビュー動画

英語版
◆政官業による大型焼却炉のマレーシアへの売込問題インタビューYou Tube

英語・日本語版(ただしインタビュー内容な英語)
◆Issue of Sales Campaign of Japanese Incinerator to MalaysiaYou Tube


独立系メディア E-wave Tokyo 独占インタビュー
インタビューアー 池田こみち

 上記はすでにマレーシア側に送ってあります。なお、英語版と日英Mix版はいずれもインタビュー内容が英文となっていますが、そのうち日本語版もリリースする予定です。

 日本では住民側がいくら記者会見をしても、大メディアはまったく伝えず、御用新聞(都政新報など)や毎日新聞が日本メーカーの焼却炉の売り込みをアシストするような、事業者側の言い分を書いています。

 そんな中、以下のインタビュー動画はじめ、今後、青山、池田、鷹取が書く報告、コラムなどは日本政府、東京都23区清掃一部事務組合側にとって大きなインパクトを与えると思います。

 なお、27日午前中の英語のプレゼンテーション3時間分も録画しているので、そのうち英語のままYouTubeにより全世界に日本の実態と課題を情報公開しようと思っています。