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上山市民団体が
ガス化溶融炉建設見直しを
求め講演会開催
青山貞一
環境総合研究所顧問、東京都市大学名誉教授
掲載月日:2013年4月15日
独立系メディア E−wave Tokyo
無断転載禁


 土日は、山形県かみのやま温泉にでかけてきました。

 山形市、上山市、他2町がつくる一部事務組合が日量150トンもの大型ガス化溶融炉をすばらしい里山で歴史文化の宝庫、さらにたくさんのさくらんぼ農園がある風光明媚な上山市に立地を計画してきました。

 しかも、同じ上山市では、2010年に一部事務組合が上山市内に決めた溶融炉の立地候補地が、さくらんぼ農家などの大反対にあい、また、土地所有者の反対もあって頓挫しました。

 その後、組合は同じ上山市内の次の候補地を決めましたが、これも農家などの大反対で頓挫しました。

 そのあげく今回、事務組合が決めた候補地が上述の新幹線の車窓からも見えるすばらしい希有な里山の谷間の場所です。しかも明治11年に出来たというめがね橋がガス化溶融炉の真ん前にあります。


クラフト社、遠くに蔵王連山を望む
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8


クラフト社、里山とクラフト社の間を山形新幹線が走る
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8


クラフト社の藤棚(左側)の上側を山形新幹線が通過しているところ
毎年5中旬、200m以上に及ぶこの藤棚が藤で咲き乱れ、地域住民
による花見が行われるとのこと
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8


クラフト社の敷地に隣接する里山
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8


クラフト社に隣接する一部事務組合の溶融炉建設予定地
道路一本を挟んで、まさに目と鼻の先
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8


明治11年につくられためがね橋
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8

◆山形県内に現存する明治時代の石橋群

 薩摩藩出身で、初代山形県令「三島通庸(みちつね)」の政策により山形の石橋は建設されはじめました。九州地方は肥後の石工をはじめとする架橋技術によって、多数の石橋が建設されています。このことが、山形での石橋の建設に影響を与えています。また、薩摩出身の山形県土木技官である奥野忠蔵も石橋を設計しています。(瀧ノ岩橋、瀧ノ小橋、吉田橋、綱取橋、常磐橋など)

 初代県令の三島通庸は、県内の幹線道路や隣接する各県へつながる道路網を整備するために石橋(アーチ橋)や隧道(トンネル)、洞門などの建設を推進したため、現在でも数多くの建造物が現存しており、貴重な土木遺産となっています。(栗子隧道(米沢市)、関山隧道(東根市)、片洞門(小国町)、石橋群など)

出典:山形県内に現存する明治時代の石橋群

 しかも、今回は生活環境影響調査(アセスに準ずる調査、手続き)の前に、土地所有者に路線価格の25倍(地元での話)という法外な値段で買収を持ちかけ、一軒以外の農家の合意を得るという、トンデモな方法で候補地を決めたそうです。

 実は、上山市の一回目の候補地の農家や住民から2010年2月に青山と広田弁護士が呼ばれ、現地調査後、講演しました。

◆青山貞一:山形・上山事務組合による巨大ガス化溶融炉計画勉強会

 今回図らずも、立地候補地のすぐ隣、敷地と敷地の関係で言えば、20mも離れていない溶融炉の建設予定地の隣に、10年以上前に環境関連企業(クラフト社)が立地しており、その社長夫妻から講演の依頼がありました。

 現地に行ってびっくりしたのは、その候補地のすばらしい里山の自然景観です。クラフト社は、もともと山形市にあった本社を移転する際、市内の10カ所以上の候補地から選んだ理由も、そのすばらしい里山景観に見せられてのことであると社長夫妻は言っていました。 

 結城室長は、美術大学を出て山形歴史たてもの研究会の会長をするほど歴史文化や景観、とりわけ里山文化、里山景観に造詣が深いかたです。

 下はクラフト社の武田社長と結城デザイン室長。


クラフト社の武田元裕社長と結城玲子デザイン設計室長
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8

 
武田社長と青山貞一          結城室長と青山貞一
撮影:結城玲子氏            撮影:武田元裕氏

 予定されているガス化溶融炉は、なぜか流動床炉タイプの日量150トン、予定価格は150億円だそうですが、1トン当たりの事業費は1億円でありおそらく過去の日本での価格の最高値です。

 私達が過去行った焼却炉価格調査では、日本の場合談合価格で1トン当たりの建設費は約5000万円ですので、談合価格のさらに2倍となります。

 ちなみに三菱重工が東京都内と台湾の台北県で受注したストーカータイプの焼却炉の1トン当たりの価格は東京では約5000万円、台湾では約2000万円となっています。ともに土地代は含まれず、他方、バグフィルター、ゴミ発電装置などはともに含まれています。

 私は172枚のパワーポイントを使い、前半、後半で実に3時間にわたって焼却炉とガス化溶融炉に係わる技術の問題点、それに環境・健康への影響、ダイオキシン類や重金属類による環境汚染や毒性、建設コスト、維持管理費、事故発生の可能性、さらに複雑な地形・気象を考慮した汚染の3次元の拡散問題に至るまでじっくりとお話ししました。

 さらに、先進国の都市でありながら、ゴミを一切燃やさない、ほとんど埋め立てないカナダのノバスコシア州に何度も現地調査してきました。ノバスコシア州では、生ゴミを堆肥化さえすれば、巨額を投入するガス化溶融炉などまったく不要となっています。

 講演では敢えて「脱焼却」を実現し、脱埋立に向かうノバスコシア州、ハリファックス広域自治体の具体例もお話ししました。下図は、ノバスコシア州の廃棄物処理の流れです。どこにも焼却という文字はありません。左が生ゴミの堆肥化、中央が廃棄物のリユース、リペアー、リサイクル、右が現状でどうしても資源化が困難なものを仮置きするという、処理の流れです。日本のように、ノバスコシア州では燃えるゴミという概念がありません!



 上記の前提として、日本のゴミ政策、廃棄物処理法が、単にゴミを集めて燃やすことを主眼としたものであること、日本は世界で一番ゴミを大量に焼却している国であること、1999年次点では世界一ダイオキシン類を排出していたことなど、この一年早稲田大学理工学部で講義した内容を分かりやすくお話ししました。

 何と言っても、現在、ドイツではゴミ溶融炉はもとより、ゴミ焼却炉を立地するということは、小さな原発を立地するのと同じ意味があるとのことです。地価もドーンと下がるとドイツの知人が国際ダイオキシン会議でベルリン工科大学で発表したときに言っていました。


講演会の模様   撮影:主催者


講演する筆者    撮影:主催者

 その後、質疑となりました。
 
 当日は、候補地直近のクラフト社の会議室で私の講演会が開催され、直近集落の住民、土地所有者、社員、朝日新聞、山形新聞、山形テレビの記者らがあつまりました。下は翌日に出た記事です。

 なお、講演内容について別途、紹介する予定です。

つづく


山形新聞 2013年4月14日


 朝日新聞 2013年4月14日