|
||
●事の発端 2009年8月18日に告示された総選挙(衆議院議員選挙)に立候補していた新党日本の有田芳生氏(新党日本副代表)に、8月22日、中央選挙管理委員会の選挙会が参議院議員の繰り上げ当選が示された。 これはもともと参議院議員で1期2年目にあった田中康夫新党日本代表が総選挙に出馬するために鞍替え立候補したことに端を発している。そして、田中氏の参議院議員の失職に伴い、前回の参院選で比例第2位にいた有田氏が、繰り上げ当選されることを意味する。 田中氏が参院議員を辞職すれば、田中氏が8月30日投開票される衆院選での当落に係わらず有田氏が繰り上げ当選となるのは自明である。 事実、中央選挙管理委員会は8月22日に選挙会を招集し、有田氏の繰り上げ当選を認め、今後、有田氏に参議院議員の当選状を送ることとなった。 ただし、公職選挙法により中央選挙管理委員会は、有田氏に当選状を送る際に、到着後、5日以内に次の回答を有田氏に要請することになる。 それは参院議員への繰り上げ当選の権利を持つ有田氏が、繰り上げ当選を辞退し衆議院議員選挙を闘うか、それとも繰り上げ当選を受諾するかの選択をしなければならないことを意味する。、問題はいつまでに有田氏がその返事をしなければならないかだ。 というのも、もし中央選挙管理委員会から有田氏への繰り上げ当選状の送付と上記の質問が送付され、到着日から5日以内に返事する期限が、衆議院議員選挙の投開票日、すなわち8月30日以降にずれこめば、有田氏が衆院議員選挙で落選しても、その結果を見て参議院議員の繰り上げ当選を承諾することができるからだ。 仮に有田氏が参院の繰り上げ当選を受諾すれば、衆院選の立候補は自動的に取り下げとなってしまうのである。 上記は非常に複雑であり、前例がない話しだ。 東京都市大学で公共政策論を研究し、講義を持っている私としては、ぜひともこの問題や手続の詳細を知るべく、中央選挙管理委員会の事務局でもある総務省選挙課選挙管理係の担当者(小川係長)に連絡した。 この7月22日の午後5時すぎのことだ。担当係長は、実に懇切丁寧に、公職選挙法との関連で手続の詳細について説明してくれた。 以下は私が理解した流れの概要。 田中康夫氏が衆院出馬で参議院議員を失職した場合 ↓ 内閣総理大臣から中央選挙管理委員会に参議院失職についての連絡が来る ↓ 中央選挙管理委員会に選挙長により選挙会が招集される ↓ 参議院議員の新党日本の比例順位により有田氏が繰り上げ当選となり当人に通知される ↓ 同時に有田氏は対して5日以内に参議院議員の繰り上げ当選を承諾するかそれとも衆議院議員候補として選挙活動をするかかの2者択一に答えるよう中央選挙管理委員会が通知する。 ↓ もし、有田氏が上記伺い文書到着後、5日の間に通知しない場合は、自動的に参議院議員の繰り上げ当選となる。 ↓ もし、有田氏が衆議院議員選挙を選択した場合は、中央選挙管理委員会は選挙長により選挙会が招集され、参議院議員の新党日本の比例順位により平山氏に繰り上げ当選状が通知される ↓ 平山氏は5日の間に承諾するか否かを中央選挙管理委員会に連絡する。 ただし、有田氏、平山氏ともに繰り上げ当選の条件は新党日本の党員であることとなる。また、両者が参議院議員の繰り上げ当選を辞退した場合は、公職選挙法の規定により欠員となる。 ■公職選挙法 第110条 衆議院(比例代表選出)議員、参議院(比例代表選出)議員(在任期間を同じくするものをいう。)若しくは地方公共団体の議会の議員の選挙について前条各号に掲げる事由のいずれかが生じた場合又は衆議院(比例代表選出)議員若しくは参議院(比例代表選出)議員(在任期間を同じくするものをいう。)の選挙について第99条の2第1項(同条第5項(同条第6項において準用する場合を含む。)又は第6項において準用する場合を含む。)の規定により当選人が当選を失つた場合において、第96条、第97条、第97条の2又は第98条の規定により当選人を定めることができるときを除くほか、当該選挙の当選人の不足数が次の各号に該当するに至つたときは、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(衆議院比例代表選出議員又は参議院比例代表選出議員の選挙については、中央選挙管理会)は、前条の規定の例により、再選挙を行わせなければならない。 具体的には、中央選挙管理委員会は公選法の規定により、有田氏に対し23日までに上記の措置をとることになったから、有田氏は@繰り上げ当選を承諾するか、A繰り上げ当選を辞退し衆議院選挙を闘うかの判断を28日までにとらなければならなくなった。すなわち、衆議院議員選挙の結果を見て、参議院議員の繰り上げ当選を承諾することはできないことになったのだ。 公職選挙法では、通常、議員資格失効後、中央選挙管理委員会はただちに選挙会を開催し、繰り上げ当選問題について議論し、繰り上げ対象者に当選状を送付するのだが、今回はその対象者である有田氏が、衆院選挙に出馬していることから、前例のない判断を迫られることになった。 前例ない判断とは何か? それは、中央選挙管理委員会は参院議員の繰り上げ当選状を有田氏に送るだけでなく、有田氏は中央選挙管理委員会からの文書到着後、5日以内に@繰り上げ当選を承諾するのか、A繰り上げ当選を辞退するかの判断を要請されることに関連している。 具体的には、有田氏に送られる文書がいつ到着するかが問題となるわけだ。 有田氏が文書に回答し返送する期日が衆院議員選挙の開投票日以前であれば問題ない。しかし、万一以降となったとすると、有田氏は衆院選挙に落選しても、参院議員に当選することになるのである。 このような事態は、中央選挙管理委員会の事務局でもある総務省選挙課選挙管理係の小川係長にしても日本の選挙史上はじめてのことで、前例がないというい。 ●事の成り行き 周知のように、有田氏も田中氏同様、総選挙に8月18日に東京11区に立候補し、衆議院議員選挙を連日闘っている。 常識的に考えれば、有田氏が政治家として衆院選挙に立候補しているということは衆議院議員となり政治活動を行うためのことであり、中央選挙管理委員会から参議院議員の当選状が届いたとしても、それを辞退し、衆議院議員選挙に邁進するのが当然である。 ましてや中央選挙管理委員会から有田氏への当選状及び判断文書が8月23日に到着すること、すなわち衆院議員選挙の開投票日以降に回答できなくなることが判明した後なので、有田氏や新党日本は検討する余地なく、有田氏は繰り上げ当選を辞退するのが当然であろう。 ところで、この有田氏問題をメディアがどう報道したかだが、次のスポーツ報知の記事がそれを象徴している。
|