麻生政権の補正予算に盛られた独立行政法人科学技術振興機構(JST)の1件90億円、30テーマの巨大最先端研究開発支援事業について私は民主党が当然のこととして全面的に反対すると思っていた。
こともあろうか麻生政権による利権に満ちた拙速なこの巨大研究補助事業に反対すると思っていた。大学の同僚の多くもそう思っていた。大学の学長はじめ多くの文科省の科学研究費取得に実績ある研究者ですら、 「何だこれ」と言う声があったからだ。
このように2700億円に及ぶJST所管の当該事業には、多くの研究者が疑問を呈していた。しかし、民主党は当該予算に賛成し、政権交代前に審査が行われていたのだ。
2009年8月30日、民主党が衆院議員選挙で308議席をとり政権交代が実現した。
民主党は麻生政権の補正予算の全てを対象に凍結あるいは減額するとして補正予算から2.5兆円をぶんどり返した。
しかし、一端民主党が麻生政権下で賛成した文部科学省系予算である2700億円については、結果的に700億円を減額するだけで事業の凍結を解除していたということが分かった。
そもそも、1テーマ90億円、30テーマの研究資金を大学などに補助するというわが国発の試み自体に、研究者等は極めて利権に満ちいかがわしいと感じていた。
調べれば調べるほど、このJSTの巨額補助事業は、きわめて短期間かつ不明朗な選定過程のなかで拙速にテーマ及び研究者(グループ)が選定されていることが分かった!
松本氏の論考を読めばそれがよく分かる。
たとえば、今回の審査を担当したワーキングチームの構成員には東レ代表取締役社長(経団連副会長)、トヨタ自動車技監、株式会社日立製作所取締役が含まれているという。
そして採択された研究には、東レ水処理・環境事業本部、トヨタ自動車技術統括部(共同提案者)、日立製作所フェローが含まれている。
穿った見方をすれば、採択されたトヨタ、日立、東レには、周知のように民主党政権の主要ポストにいる議員がいるのである。
・川端達夫文部科学大臣(東レ研究開発部出身)
・直嶋正行経済産業大臣(トヨタ自動車、自動車総連出身)
・大畠章宏国家基本委員長(日立製作所、電機労連出身)
そもそも審査を担当したワーキングチームと採択先が同じ企業であること自体トンデモではなかろうか?
これはまさに「李下に冠を正さず」の格言からすると、??ではあるまいか?
関連ブログ
◆松本慎一:JST所管最先端研究開発支援プロジェクト凍結解除
JST研究開発事業に関するプレスリリースの概要(麻生政権時)
今年度の補正予算で急きょ浮上した総額2,700億円の「世界最先端研究支援プログラム」(仮称)に対し、どのような科学技術に期待するかを国民に問う意見募集を内閣府が始めた。
申し込みサイトにある用紙に環境エネルギー、医療・健康・介護などと分野と実現を希望する科学技術を書いて、内閣府政策統括官(科学技術政策・イノベーション担当)へ、7月12日までに返送を求めている。
世界最先端研究支援プログラムは、世界最高水準の研究を強力に支援することを目的としており、30程度のプロジェクトを選び、3-5年間、1プロジェクトあたり平均90億円の研究資金を投入する。規模、性格ともにこれまでにない大規模な研究支援策だ。
研究者の不満が大きい単年度主義予算制度の制約、研究助成金の申請、執行、研究成果の評価などにかかる過大な雑務から研究者を解放し研究に専念してもらえるよう研究費の使い方について自由度の高い多年度運用を保障している。
2,700億円は基金として日本学術振興会に設けられるが、研究費の配分先の選定は首相主導で進めることになっており、内閣府総合科学技術会議有識者議員が実質的に大きな役割を果たすと見られる。この機会に国民にももっと科学技術への関心を深めてもらい科学技術と国民の距離を縮めたい、という野田聖子・科学技術政策担当相の意向で国民の声を募集することになった。
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