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民主連立政権は
取り調べ可視化法を

制定すべきだ!

青山貞一 Teiichi Aoyama 
掲載日:17 Jan 2010

初出:独立系メディア「今日のコラム」


 私は2009年3月の小沢一郎大久保公設秘書の突然の逮捕に始まった東京地検特捜部に「情報操作による世論誘導、自滅の東京地検特捜部」という論考を2009年4月1日に執筆した。 その最後に以下を記した。

■検察、警察も政権交代に怯えている!?

 そういえば、政権交代が恐怖なのは何も利権でがんじがらめの自民党だけでない。霞ヶ関の省庁も同じだ。実は警察、検察にとってもそうなのだ。さらに言えば「政」「官」「業」だけでないはずだ。私達が「政」「官」「業」「学」「報」といっている分野全体が政権交代に怯えているのだ。

 民主党は常々、警察、検察の捜査、取り調べの可視化の法制化を提案している。自民党政権なら99.9%この可視化法案はないだろう。

 もし民主党が中心となって政権を取り、可視化法案を通したら、いままでの杜撰な誤認逮捕、見込み捜査、誘導尋問、供述強要など、まるで戦前の公安警察並みの日本の警察、検察の捜査実態が白日の下にさらけ出されることになる。ひょっとしたら警察、地検にとっても政権交代は恐怖なのかも知れない。

 これは決して穿った見方ではない。

 昨年末からはじまった小沢一郎元秘書石川衆議院議委員らに対する東京地検特捜部の一連の捜査とそのリークによる大メディアの垂れ流し報道でも、大久保秘書問題とまったく同じ構図が繰り返されている。

 「関係者」によるととして、あることないことを連日、まことしやかに国民に垂れ流している。そんな中、石川議員に自殺が懸念されているという。

★石川知裕議員に懸念される自殺の恐れ 日刊ゲンダイ

 民主連立政権は、今国会でぜがひでも警察、検察の捜査、取り調べの可視化の法制を実現しなければならない!

 たとえば刑事事件訴訟法の改正により可視化条項を入れることには、東京地検やその大メディアへのリークで政権交代の転覆をもくろむ自民党、霞ヶ関官僚組織に絶大な影響力を行使することになる。

 この法制化には戦前、特高や公安警察の取り調べのトラウマを持つ日本共産党も拒否はできないいはずだ。

 さらに、検察側が自分たちに都合の悪い部分を隠す現在の<公判前整理手続>も米国並みに改正しなければならない。

 これら刑事事件訴訟法の改正により政治とカネ問題はもとより、痴漢事件に至るまで一連の冤罪事件も防止できるだろう。

 というより、民主連立政権は、このときこそ衆参両院の過半数を活用すべきであり、自民、公明両党が反対する場合には、強行採決してでも制定すべきである。


 以下は、2009年4月1日に執筆した「情報操作による世論誘導、自滅の東京地検特捜部」である。ご一読いただきたい。

情報操作による世論誘導
自滅の東京地検特捜部


青山貞一 Teiichi Aoyama 1 April 2009

独立系メディア「今日のコラム」

■検証ないまま検察リークを垂れ流す大メディアの犯罪性

 総選挙、政権交代前夜に、東京地検特捜部が小沢代表の公設第一秘書を突然逮捕することではじまった今回の一件は、2009年3月24日、大久保秘書の拘留期限ぎりぎりのところで、大久保秘書を「起訴」した。

 大久保公設第一秘書の起訴を発表した東京地検の佐久間達哉特捜部長は、捜査の正当性を強調したが、逮捕後2日間で地検には約100件のメールが寄せられ、その8割近くが東京地検に批判的な内容だったという。

 ところで今回の一件がきわめて異例、異常であったことは、東京地検による大メディアへの連日の捜査情報のリークでも分かる。東京地検特捜部は、まさに連日連夜、逮捕され取り調べられている西松建設社長などの供述内容をあたかもそれが100%事実であり、真実であるかのごとく、大メディアに垂れ流し続けた。

 今回の逮捕、起訴がいかに常軌を逸したものであるかについては、元東京地検特捜部の検事、現在、桐蔭横浜大学法科大学院教授の郷原信郎氏の発言からも、今回の一件が従来の東京地検捜査の常道からもかけ離れたものであったことがよく分かる。

 郷原信郎教授の発言内容については、「ガダルカナル」化する特捜捜査、「大本営発表」に惑わされてはならない Nikkei Businessなどをお読み頂きたい。

 ここでの最大の課題は東京地検の検事らが、匿名とはいえ実質的に法を犯してまで捜査情報をリークしたことに加え、それをもらい受けた大メディアが何ら自ら検証することもないまま、地検のリークの情報を新聞の一面、テレビニュースのトップで連日連夜垂れ流したことだ。


■相も変わらずの検察のダブルスタンダード

 私はここで、敢えて刑事事件は「推定無罪」であるなどというつもりはない。

 私が言いたいことは次のことだ。

 一昨年、私が勤務する大学の大学院生(中国からの留学生)が神奈川県警に突然逮捕され、逮捕から22日後に起訴された。その後を含め大学院生は実に4ヶ月間も警察の拘置所に拘留された。

 当該事件では、改正刑事事件訴訟法に新たに規定された公判前整理手続が援用された。

●神奈川県警+横浜地検の准冤罪事件
青山貞一:神奈川県警+横浜地検共作による留学生准冤罪事件@
青山貞一:神奈川県警+横浜地検共作による留学生准冤罪事件A

 この事件では結果的に神奈川県警の誤認逮捕や検察の強引な誘導捜査、取り調べなどが次々に明らかになり、横浜地裁の大島裁判長は、逮捕・起訴された大学院生に完全無罪を言い渡した。

 しかも、何と地検は控訴しなかったのである。一審で無罪が確定した。

 このようなことは、刑事事件総数の0.1%にも満たないというから、いかに神奈川県警、横浜地裁がしたことが杜撰きわまりないものであったかが分かる。

 私は7000名近くの学生、教職員がいる大学の全学リスク管理委員長をしており、本件では最初から最後まで直接関与することとなった。横浜地方裁判所で行われたすべての公判にも参加した。

 ここで問題なのは、検察側は公判前整理手続きを導入したことで、捜査、取り調べの情報を被告側弁護士にのみ提供し、マスコミはもとより、親族や私にも一切情報提供しなかったことだ。

 公判に影響を及ぼすという理由からである。大学院生の弁護士も、その旨を私に伝え、上記関連資料を見せることはなかった。

 だが、あやうく冤罪事件になりかかったこの事件で分かったことは、警察・検察側は自らの強引な捜査・取り調べ、供述強要などに係わる情報資料をすべて被告側弁護士に渡していなかったことである。

 本事件に係わったK弁護士によれば、警察や検察は公判前整理手続きが導入された後も、自分たちに都合の悪い証言や資料は弁護士側に提供しなかった。

 公判に入ってからK弁護士がそれを執拗に検察側に指摘し、やっとのことで警察や検察が隠していた情報がポロポロとでてきたと言われた。


■NHKによる大久保秘書供述の大誤報!?

 小沢代表の公設第一秘書大久保氏の逮捕、起訴に関連し、特捜部長や検事総長などは司法、検察の独立性、公平・公正性などを強調している。

 そのさなか、こともあろうかNHKは逮捕拘留されている大久保公設第一秘書が、供述をはじめたというニュースを垂れ流した。

 すなわち、3月25日午前0時にNHKは「大久保隆規氏が政治資金報告書にウソの記載をしたと起訴事実を認める供述をしていることが関係者への取材で明らかになった」と報じたのだ。

 周知のように逮捕され拘置所に拘留されている大久保秘書が供述をはじめたという情報は、大久保秘書の弁護士を除けば検察以外知るよしもないものである。

 しかも、民主党側からは大久保秘書は完全黙秘をしており、かりそめにもNHKが関係者)からの情報としていて垂れ流した上記の情報は事実ではないとしている。以下それに係わる情報を示す。

 参院議員総会で輿石東会長は「3月3日に小沢代表の大久保秘書が逮捕というショッキングな出来事に我々は驚いた。政治資金の収支報告書に虚偽記載があったかどうかというのが問題。これでは代表は辞任する必要はない。このことを役員会で確認、常任幹事会で了承した。

 大久保秘書が容疑事実を認めたかのような報道がなされているが、その事実はないと弁護士から聞いている。世論操作がないようにマスコミの皆さんも報道してほしい」と発言。

 小沢代表は、参院での第1党のとして活躍に敬意を表した後、秘書逮捕、起訴の件でご迷惑、ご心配をかけたことを陳謝した。

 そのうえで、今回のことは、針小棒大の報道によってあたかも重大犯罪が背景にあるかのような印象を与えているが、起訴事実は政治資金の収支報告書の記載が虚偽であるというものだったこと、多くの企業や多くの個人から献金をいただいていること、一つひとつの献金を私自身が精査しているわけではないが、秘書を信頼して任せていること、西松建設の社長と面識はなく深いつながりはないことなどを説明した。

 また、「収支報告書の記載に関して、献金を受けた相手方を金額とともに記載すること、寄付を受けたのが政治団体だったので資金管理団体で受けたということで、そう記載したが、そこが検察の認識との違いである」としたうえで、「この種の問題で強制捜査、逮捕、起訴はなかった。私は納得できない。これは、私個人の政治活動の問題ではなく、民主主義の根幹に関わる問題」と指摘。


 となれば、天下のNHKは検察からガサネタをつかまされたか、捏造したかしかないことになる。

 これに関連し、3月25日に開催された衆院総務委員会におけるNHK21年度予算審議では、衆院総務委員会の原口筆頭理事がこの大久保秘書に関連したNHK報道について質問した。

 NHKの理事者は情報源の守秘を言い、鳩山総務大臣及び法務副大臣は、検察がメディアに捜査中の情報を漏洩することは断じて有り得ない、と述べていた。


 だが、当事者側である民主党の幹部議員が否定している大久保秘書の供述に対し、 報道されたNHKのニュースが100%事実に反するとしたなら、NHKは情報をどこから得たのか、それとも捏造したのかを明確にしなければならないだろう。

 東京地検ないしその関係者が敢えてウソ情報を流したかも知れない。一体どうなっているか? 

 さらに検察は公判前整理手続きやこの春からはじまる裁判員制度でも捜査情報の漏洩には厳罰で対応することを口にしている。

 しかしながら、今回の事件で東京地検特捜部が現実に行なっていることを考えあわせると、裁判員制度でまともな審理が出来ると思えない。裁判員に検察が選択的に情報を提供することが十分考えられるからである。

 それは事実であるか否かにかかわらず検察がリークしたい特定の情報をあらゆる手段でメディアに垂れ流すという事実ではないだろうか


■検察リークによる情報操作と世論誘導

 今回の一件では、どうみても東京地検特捜部は、連日連夜、記者らに捜査情報をリークしていたのである。さらに問題なのは、検察に飼い慣らされた大メディアの記者である。

 彼らは飢えた犬が餌をもらったときのように、与えられたリーク情報を金科玉条に一面トップに掲載してきた。およそ報道機関にあるまじき対応に終始してきたのである。

 もし、警察・検察が刑事事件の捜査情報を特捜部長らが言うように徹底的に守秘するのであれば、なぜ、顕示された事実が真実であるかどうかわからない情報、すなわち最高裁まで行かなければ最終判断できない情報をこともあろうか大メディアにリークするのであろうか?

 これでは、情報操作による世論誘導と言われても致し方ない。

 同時に、リーク情報をありがたくもらい受け、何ら自らの検証もせず、第三者のコメントもないまま一方的に垂れ流すNHKや民法テレビ局、大新聞は、およそメディアとはいえない。

 彼ら数ある大メディアは司法権力による情報操作による世論誘導に加担していると思われても仕方ないだろう。今回の一件でも大メディアはいずれも恥を知れと言いたい。


■公平・公正を著しく欠く検察捜査

 さらに言えば、特捜部長らは捜査の公平、公正性について主張している。しかし、これとてチャンチャラ笑わせる話しではないか。

 なぜ、二階経済産業大臣はじめ自民党の幹部代議士には一切手を付けないのか?最近になってやっと二階ルートにも捜査が及んだようだが、それが事実だとすれば、民主党からだけでなく国民からも地検がしていることは不公平、不公正きわまりないという批判が噴出したからに他ならない。 

 周知のように自民党が得ている企業からの政治献金額の総額は、確か民主党より4〜5倍も多いはずだ。今回の西松事件では公表された単一の額では、小沢代表関連が一番多かったが、件数では圧倒的に自民党が多い。そのなかでも二階議員は突出していた。

 フリージャーナリスト、横田一氏らの現地調査によれば、二階大臣はいろいろカネにまつわる話が取り沙汰されている。

 なぜ、東京地検はこの時期に、突然、政権交代間近だった民主党代表の側だけをことさら大仰に責め立てたのか? これでは政府・自民党の意向を受けた「国策調査」と言われても仕方ないだろう。

 いずれにせよ、今回、東京地検がしたことは、民主党に対してだけでなく、国民に対しても大きな疑問を投げかけたことは間違いない。こんな司法当局が関与する裁判員制度でまともな刑事事件の審理ができるわけがない。


■検察、警察も政権交代に怯えている!?

 そういえば、政権交代が恐怖なのは何も利権でがんじがらめの自民党だけでない。霞ヶ関の省庁も同じだ。実は警察、検察にとってもそうなのだ。さらに言えば「政」「官」「業」だけでないはずだ。私達が「政」「官」「業」「学」「報」といっている分野全体が政権交代に怯えているのだ。

 民主党は常々、警察、検察の捜査、取り調べの可視化の法制化を提案している。自民党政権なら99.9%この可視化法案はないだろう。

 もし民主党が中心となって政権を取り、可視化法案を通したら、いままでの杜撰な誤認逮捕、見込み捜査、誘導尋問、供述強要など、まるで戦前の公安警察並みの日本の警察、検察の捜査実態が白日の下にさらけ出されることになる。ひょっとしたら警察、地検にとっても政権交代は恐怖なのかも知れない。

 これは決して穿った見方ではない。