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読売新聞の二階側立件記事
と郷原発言
青山貞一 
29 April 2009
独立系メディア「今日のコラム」


 まずは、2009年3月30日付けの読売新聞の記事を見て欲しい。

 「
二階氏側を立件へ、事務所無償提供疑惑で東京地検」とある。

二階氏側を立件へ、事務所無償提供疑惑で東京地検

 準大手ゼネコン「西松建設」側が二階俊博・経済産業相の関連政治団体に事務所を無償提供していたとみられる問題で、東京地検特捜部は、二階経産相の政治団体側を政治資金規正法違反の疑いで立件する方針を固めた。

 同社が2006年以降、事務所の年間家賃約280万円相当を負担していたことが、同法が禁じる企業からの寄付に当たる疑いが強いと判断したとみられる。西松建設の違法献金事件は、小沢一郎・民主党代表の公設第1秘書の起訴に続き、自民党側にも波及する見通しとなった。

 西松建設関係者などによると、同社関西支店は1999年ごろ、二階経産相の実弟が実質的に運営している政治団体「関西新風会」に対して事務所を提供するよう、実弟から依頼を受けた。報告を受けた同社前社長・国沢幹雄被告(70)(政治資金規正法違反罪などで起訴)は、事務所の無償提供を決定。関係設計会社「オーエーエンジニアリング」(東京都港区)にマンションを購入させるよう部下に指示した。

 オーエー社は大阪市西区にマンションの一室を購入し、購入費用の約4000万円は西松建設が融資。西松側が部屋を事務所用に改装した。オーエー社と関西新風会は年間約280万円で賃貸する契約を結び、今年2月末まで、同会が使用していた。

 一方、西松建設は家賃分を負担するため、少なくとも06年以降、二階経産相が代表を務める自民党和歌山県第3選挙区支部に、社員ら60人の名義に仮装して毎年300万円を送金。同支部からは関連政治団体「二階俊博新風会」(和歌山県御坊市)を通じ関西新風会へと資金が流れ、同会から家賃分として年間約280万円がオーエー社に支払われていた。

 特捜部は、マンション提供の経緯や家賃を巡る資金の流れなどから、西松建設が関西新風会に事務所の無償提供を行ったとの見方を強めており、二階経産相側には、同法で禁じられた政治資金収支報告書の虚偽記載(罰則は禁固5年、罰金100万円以下)や企業献金受領(同禁固1年、罰金50万円以下)などの疑いがあるとみている。二階経産相は国会答弁などで、個人献金を仮装した毎年300万円の受領について、「個人献金として納めてもらっており、家賃の補填(ほてん)という認識はない」と述べている。

(2009年3月30日03時05分  読売新聞)

 しかも、記事では、準大手ゼネコン「西松建設」側が二階俊博・経済産業相の関連政治団体に事務所を無償提供していたとみられる問題で、東京地検特捜部は、二階経産相の政治団体側を政治資金規正法違反の疑いで立件する方針を固めた。と断定的に書かれている。

 さらに、同社が2006年以降、事務所の年間家賃約280万円相当を負担していたことが、同法が禁じる企業からの寄付に当たる疑いが強いと判断したとみられる。西松建設の違法献金事件は、小沢一郎・民主党代表の公設第1秘書の起訴に続き、自民党側にも波及する見通しとなった。と記事は続く。いずれも断定調である。

 天下の読売新聞が「東京地検特捜部は立件する方針を固めた」と断定する記事を出したのだ。

 当然のことだが、この記事は、あちこちでさまざまな憶測を呼んだ。

 というのも、東京地検特捜部の突然の小沢代表秘書の逮捕と、怒濤のごとくリークされた小沢代表側の情報にもかかわらず、実質的には小沢代表以上に西松建設との間に個別具体に問題がある二階側は、何らおとがめどころか情報リークがなく、まさに政権交代間近の野党党首への「国策」ではないかという国民感情が煮えたぎっていたからである。

 小沢代表は野党の党首であるのに対し、二階はいやしくも運輸大臣を歴任した後、現在、経済産業大臣と職務権限があるある大臣にいる国会議員である。形式上は小沢代表よりはるかに政治とカネにかかわる責任は重いはずだ。

 読売新聞の上の記事では、もちろん情報リークの出所はないが、当然、司法当局、すなわち東京地検特捜部であろう。事実、記事中では、随所に「東京地検特捜部は」とか「特捜部は」という記述がある。

......

 ところで、周知のように検察には東京地検特捜部に代表される地方検察庁以外に、高等検察庁(高検)、最高検察庁(最高検)がある。

 最近になって、神保さんが代表で行っている独立系メディア、ビデオニュースドットコム(Videnews.com)が、民主党が小沢代表の西松建設問題に関連し設置した第三者委員会に、東京地検特捜部OBの堀田氏を呼んで話しを聞き、委員との間で議論を行った。詳細は70分と長いが以下をご覧いただきたい。

 東京地検特捜部OB対決<堀田vs郷原> Videnews.com

 民主党の第三者委員会には、もと東京地検特捜部で政治資金規正法問題を多数扱ってきた郷原信郎名城大教授が委員となっている。

 興味深いのは、上記の第三者委員会の中でともに東京地検OBである郷原氏と堀田氏の熾烈なやりとりである。とくに郷原氏が「リークの多くは高検、最高検に案件が行ってからだ」と、述べていることである。

 なぜ、このような発言が郷原氏からあったかと言えば、堀田氏がこともあろうか郷原氏に突然、「あたなが検察情報をリークしたので幹部になれなかったという情報がある」と発言したのである。堀田氏は、郷原氏に弁明を促した。

 そこで郷原氏は、「リークしているのは自分たち地検レベルの検事ではない」さらに「最高検、高検など上層部に案件が行くとリークが増える」と述べたのである。

 事実、これを裏付けるかのような政府幹部の発言があった。そう漆間官房副長官発言である。「捜査は自民党に及ばない」と述べた記者懇談の場での発言である。まさに司法当局の上層部に漆間氏がいたからこそ、「わかったこと」ではなかろうか。

堀田力が郷原信郎に放った一言
2009/4/25 10:00

●西松事件捜査

 西松事件を検証する「政治資金問題第三者委員会」(飯尾潤座長)が21日、都内で開かれ、ゲスト有識者として元検事の堀田力・さわやか福祉財団理事長が出席。この席で、委員のひとりである元特捜部検事の郷原信郎・名城大教授と“大バトル”を繰り広げた。堀田氏は特捜部時代、戦後最大の疑獄事件「ロッキード事件」を手がけた大物OB。それだけに委員会は冒頭から緊迫感漂う雰囲気だった。

「もともと、この日の主要テーマは『検察のあり方』でした。ところが、堀田氏は1時間の会議時間のうち、延々20分近くも『小沢批判』の持論に費やした。さらに『検察は証拠があれば着手する。これは説明のしようがなく、問いの前提が違う』『検察批判を第一の問題にするのがおかしい』とまくし立てていました」(テレビ報道記者)

 堀田氏と郷原氏がとくに対立したのは、政治資金規正法をめぐる検察の「捜査手法」についてだ。

郷原氏「規正法違反は山ほどある。どういう場合であれば自信を持って罰則適用ができるのかを検察は説明すべきだ」

 堀田氏「政治浄化の手段として、規正法は効果的。透明性を欠くなら、摘発していくべきだ」

 驚いたのが、検察リークに関するやりとりだ。「マスコミに対する検察リークの有無や是非」を問われた堀田氏は、質問に対して直接答えず、突然、「検察の中で、郷原さんの捜査手法はすばらしいが、リークが過ぎる、との話があったがどうか」と逆質問したのだ。

 「つまり堀田氏は『お前さんだって覚えがあるはずだ。俺に聞けるのか』という態度がアリアリ。

 堀田氏が郷原氏にケンカを売ったのは明らかです。温厚な郷原氏もさすがに表情を変えたが、『そんな話があったのは初めて聞きました』とかわしていました」(前出の記者)

 結局、当初から疑問視されている「検察はなぜこの時期に、野党側だけ強制捜査したのか」「小沢問題ばかりリークされたのはなぜか」などの本質的な議論はかみ合わないまま。

 検察OBがここまで意見対立する今回の西松事件は、やっぱり立件にムリがあったんじゃないのか。

(日刊ゲンダイ2009年4月22日掲載)
2009/4/25 10:00 更新


.....

 読売新聞の記事が、3月30日に東京地検特捜部によればと断定調で出した二階関連の捜査は一体どうなったのか?

 その後、まともな二階側捜査にかかわる記事は、毎日新聞と日経新聞それぞれに1本ずつあったものの、ほとんどないのである。

 3月4日以降、約1ヶ月怒濤のように垂れ流された小沢民主代表公設第一秘書関連の記事と比べれ雲泥の差、月とすっぽんである。

 もし、郷原教授がビデオニュースドットコムで述べられたことが事実だとすれば、読売の上記の記事をリークしたのも、その後、リークをぱたりとやめたのも検察の上層部、幹部であることになる。

 これは単純に選挙が近くなったので、捜査を止めたというような話では済まないことである。

 ひょっとすると、小沢氏側とバランスをとるため東京地検特捜部は、二階側の捜査を行い立件に着手したものの、政府、政権中枢からの圧力で立件を見送ったというのが事実ではないだろうか?

 そんななか、友人の横田一さん(フリージャーナリスト)が二階大臣の新たな疑惑をスクープした。

二階俊博経産相の地元で新疑惑浮上
日刊ゲンダイ 2009.4.25号
http://octhan.blog62.fc2.com/blog-entry-640.html

 大山鳴動……で終わった西松建設疑惑の二階ルート。国民はまったく腑に落ちないが、そうこうしている間にも、二階の大臣の地元、和歌山で見過ごせない新疑惑が浮上している。

「グリーンピア南紀」の不可解取引

 年金保険料200億円が投じられた年金保養基地「グリーンピア南紀」(那智勝浦町、太地町)を巡る不可解取引だ。
 
 グリーンピアは経営不振から小泉政権時代の01年12月に閉鎖が決定。地方自治体に格安価格で払い下げられ、その後、05年12月に二階の友人の中国人実業家・蒋暁松氏(ボアオ代表)と実質的な売却契約が結ばれた。

 ボアオが10年間、賃貸料を払い続けると所有権が移転するという中身だ。しかし、その際、約束されたホテル再開などの開発計画はいつになっても実行されず、しびれを切らした町議会は契約解除の決議を採択、ボアオとの契約は白紙になった。ところが、あろうことか、ボアオは投資金額以上の巨額解約金を手にしたのである。

 この問題を国会で追及した保坂展人衆院議員(社民党)はこう言う。「契約では、町に非がある場合、ボアオ側は支払金額の倍を受け取ることになっていた。しかし、今度のケースは、再開発を実行しなかったボアオ側に非があるのは明らかです。通常ならボアオが支払った1億6000万円は没収される。ところが、ボアオは投資金額以上の1億7000万円を解約金として受け取ったのです」

 この売買を巡っては、二階大臣の口利きが随分報道されたものだ。町の担当課長(当時)が作成した備忘録には、ロコツな関与の具体例がたくさん出てくる。

 たとえば、04年1月23日、初めて現地見学をした蒋氏が那智勝浦町長と懇談、「また来てみたい。帰ってから二階先生と話をして何かをやりたい」と話すと、6日後の29日には、二階事務所の長田氏が蒋氏を伴い、「年金資金運用基金」を訪問。そして4日後の2月2日には、二階事務所が「那智勝浦町長に上京してほしい」と電話で要請、2日後に那智勝浦町長がかけつけ、二階氏とともに「年金資金運用基金」を訪問……という具合だ。

 内部文書に記された一連の経過をたどっていくと、二階氏の口利きが発端となって、蒋氏を最優先に扱う随意契約のレールが敷かれたことが読み取れる。二階は「町が判断したこと」と、関与を否定しているが、こうした“口利き”の結果、友人の中国人実業家は広大な敷地と施設を2年間占有できたのは明らかだ。そのうえ、投資金額以上の解決金を懐に入れたことになる。

 不可解な話はまだある。ボアオとの契約が白紙になり、町は再び、跡地利用の業者選定に入ったが、何と最有力業者は現在、二階後援会「和歌山新風会」会長の「湊組」(笹本誠昭会長=前社長)なのである。まさにやりたい放題ではないか。

(取材協力・横田一)