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iPodの影響?
目立つ若者の大声

青山貞一 17 April 2009

独立系メディア「今日のコラム」


 大学にいて気になることは沢山あるが、ここ数年、学生がとんでもなく大きな声でキャンパス内を歩いているのもそのひとつである。

 友人らとワーワー、キャーキャー騒ぐのは今の学生が幼稚化していることの表れであると思うが、それにしても発する声のレベルが著しく高い。

 私の研究室のそばで学生が友達と話す音声レベルも異常に高いのである。

 どうも、この傾向は年々すさまじくなっているようだ。

 研究室や環境総合研究所には立派なデジタル騒音計があるので、今後、本格的に計測してみようと思っているが、それはさておき、なぜかくも学生ら若者の発する声のレベルが高くなったのか、その原因こそ重要である。

 ......

 ところで、今の若者文化のひとつにiPodがある。

 誰も彼も、学生はiPodをもっていて、ワーワーキャーキャー話しているとき以外は、iPodをイヤホンで聞いているか、携帯を使っているときぐらいと言っても過言ではない。さすがに授業中聞いている者はいないと思うが、ひょっとしたら後ろの席で聞いている者がいるかも知れない。

 もっぱら、その携帯も、メールの送受は別とし、携帯で電話している声は馬鹿でかい。馬鹿でかい声で携帯で電話するのは、それなりの理由があるが、いずれにしても若者の話し声が異常に高いのである。

 なぜ日常的に発する声が大きなレベルになるかだが、まず明らかなことは、難聴気味になればなるほど発する声が大きくなることだ。たとえばお年寄りにこの手の方々が多いのは周知のことである。

 ...... 

 学術的、客観的な調査に基づくことではないが、私はひょっとしたらiPodの蔓延と若者のバカ高い声とに相関があるのではないかと思っている。

 今のところ仮説の域を脱しないのだが、私が大学に着任したのは6年前だが、それ以降、どんどん学生の声が大きく間違いない。

 そこでiPodについて調べてみた。iPodは、当初2001年10月23日に発表され、2001年11月17日に発売された第1世代以降、現在までに第6.5世代(iPod classic)までが売られている。

 以下は、iPodの累計販売台数・累計出荷台数の推移である。累計の出荷台数は、2008年秋時点で、実に約17,300万台, すなわち1億7千万台に及んでいることになる。もちろん、これは全世界における台数である。

期間 四半期毎の出荷台数(万台) 累計出荷台数(万台)
2003. 7- 9月 33.6
2003.10-12月 73.3
2004. 1- 3月 80.7
2004. 4- 6月 86.0
2004. 7- 9月 201.6
2004.10-12月 458.0 約1,000
2005. 1- 3月 531.1 約1,500
2005. 4- 6月 615.5 約2,150
2005. 7- 9月 645.1 約2,800
2005.10-12月 1,404.3 約4,200
2006. 1- 3月 852.6 約5,050
2006. 4- 6月 811.1 約5,900
2006. 7 -9月 872.9 約6,700
2006.10-12月 2,106.6 約8,800
2007. 1- 3月 1,054.9 約9,850
2007. 4- 6月 981.5 約10,800
2007. 7- 9月 1020.0 約11,800
2007.10-12月 2212.1 約14,000
2008. 1- 3月 1064.4 約15,100
2008. 4- 6月 1101.1 約16,200
2008. 7- 9月 1105.2 約17,300
出典:Wikipedia


iPodの累積出荷台数の推移    出典:基本数値データはWikipedia

 上記の出荷台数データと私が大学で学生の声の大きさが着任以来、間違いなく大きくなっていることとの間には、かなり相関があるように思える。

 もちろん、iPodの爆発的な普及以前にもソニーのウォークマンなど携帯型の音楽プレーヤーが若者を中心に流行っていた事実はある。もちろん、ウォークマンについても妥当すると思えるが、上記のデータを見ると、おそらく若者、学生へのiPodの急速な普及は、ウォークマンの比ではないのではないかと思える。

.......

 ところで、米国ではiPodが難聴を引き起こす原因ではないかをめぐり論争さらに訴訟が起きているという。以下は、その概要である。

米国における難聴論争

 アメリカ合衆国ではiPodが難聴(音響難聴)を引き起こす原因になるという論争が持ち上がり、訴訟に発展している。

 件の訴訟はルイジアナ州の男性によって2006年1月31日に起こされた。訴状によれば、iPodは115デシベル以上の音量を再生することが可能であり、この音量で1日28秒以上聴き続けると、難聴を引き起こすおそれがあるとのこと。iPodには「115デシベル以上を再生できるという、設計上の致命的欠陥」があり、これにより正常な聴覚を失う可能性に関してアップルは適切な警告と対策、補償を十分に行なっていないとされている。

 この訴訟は集団訴訟と認定されることが請求されており、被害に対する賠償と、iPodを安全なものにする改善を要求している。

 但し、件の男性は2005年にiPodを購入したとされているが、実際にiPodで難聴になったかどうかは訴状では明らかにされていない。男性の弁護士によると、実際にiPodで難聴になったかは重要ではなく、iPodが取り返しのつかない難聴を引き起こす可能性が問題なのだという。

 ただ、iPodの騒音性難聴を引き起こす「性能」が他のプレーヤーと比較して高いかに関しては疑問の余地が残る。同様の問題点はウォークマンなど携帯音楽プレーヤーが普及し始めた1980年代より言われていた問題で、他の携帯音楽プレーヤー全てに対して言えることでもあり、危険性はユーザー次第、ユーザーが用いる音量次第であり、自己責任との声もある。

 現在iPodには、「イヤホンやヘッドホンを大音量で使用すると、聴覚を損なうおそれがあります」という警告文が添えられ、アップルからは最高音量の半分以下で使用することが推奨されている。なお、他プレーヤーでもこのような警告文が添えられている。また、最新版のソフトウェアでは、第五世代iPod、iPod nano、iPod shuffle向けに、ある一定以上の音量が出ないように設定する機能が提供されている。但し、この機能は旧世代機(第四世代以前のiPod、iPod mini)には提供されておらず、旧世代機のユーザーに対する補償が不十分である。

 ちなみに、米国のとある大学で行われた調査によると音量を80パーセント以上で1日90分以上イヤホンやヘッドホンで音楽を聴くと難聴になりやすくなり、音量を100 パーセントで1日5分以上聞くと難聴になる危険性が高いとの結論となった。逆に、音量を10パーセントから50パーセントで1日90分以上聞く場合は難聴になる問題は無いとされている。

出典:Wikipedia


 上記にある115デシベルという音のレベルは、近くをジェット戦闘機が通過する場合のレベル、世に言う爆音であって尋常でないものだが、そこまで行かない90−100デシベルでも常用すれば難聴や突発性難聴になる可能性はあるはずだ。

 私の学部には音響の専門家もいるので、今後、iPodと若者の難聴問題について本格的に研究に乗り出せればと思っている。