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東京地検特捜部リークによる
大メデイア小沢報道の奇

顕示された事実の真実性を探る

〜解明の視点(3)「現金主義経理」〜

青山貞一
13 Jan. 2010
独立系メディア



 次に、先に示した<基礎データ>を使って資金の流れ、出入りの概略を説明した論考があるので、以下に<解明の視点>の参考として紹介する。

 ただし、論考の内容は、正確さを損なわない範囲で一部推敲している。分析を行いブログ化した当人は会計の実務家のようである。引用論考中の黄色部分は、青山貞一による補足説明である。

.......引用開始

小沢一郎の「陸山会」の資金収支報告書を分析してみた
2010 年 1 月 11 日

 今更説明不要ですが、陸山会の資金収支報告を巡る一連の騒動。いちいち考えるのも面倒くさかったので、僕は今までずーっとスルーしていました。しかし先日、とあるニュースがネットから舞い込んで来ました。まさしく寝耳に水とはこの事。

 「小沢氏の平成16年の4億円が虚偽記載なんていってるけど、ちゃんと官報(の資金収支報告書)にちゃんと載ってる。ソースとなったブログはこちらです。

◆2004年度 総務省ホームページにある平成17年09月30日付けの官報にある「官報陸山会収支報告書」 162ページ(247)(注:PDFファイルである)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000047155.pdf#page=162

以下は分析者青山貞一のコメント。

 以下では借入金として小澤一郎(これは個人を意味する)に4億円とある。平成17年の政治資金収支報告書では平成16年の収支を報告しているので、以下は平成16年の収支。


出典:2004年度 総務省ホームページの平成17年09月30日付けの
官報にある「官報陸山会収支報告書」162ページ(247)
(注:PDFファイルである)

 既に2010年1月10日に放映されたテレビ朝日の「サンデープロジェクト」でも放送されたそうですが、確かに上記の官報のpdfファイルのリンクが記載されているぐらいですから、これはでっちあげの余地も殆どないのでは? そう考えながら、図書館に調べに行きました。

 おりしも絶妙なタイミングで「ゼネコンからの献金が〜」というニュースも出て来たため、平成16年度の資金収支報告書だけでなく、複数の年度で分析してみようと思い立ちました。

 ただし、4億円の記載があったからめでたしめでたし…というと、そうでもありませんでした。

 なぜなら(これは情報が錯綜していて、僕自身も十分に整理し切れていません)「借りた資金をいつ返済したのか依然不明」、「小沢氏から借り入れた資金を定期預金に預け入れ、それを担保にして4億円借りている。ならばやっぱり4億円記載漏れのままになっている」といった指摘もあり、4億円の記載の有無以外にも疑問点は大いにあるのが現実です。

 なにより、金額そのものよりも、いつ資金の受払が行われて来たのか、そしてその情報ソースは信頼出来るのか、こればっかりは新聞やウェブのニュースだけでは判断に限界があります。そこで、現時点までに論じられていた事実関係は一旦置いておいて、政治資金収支報告書の推移を分析し、自分なりにどのようなシナリオが描けるか確かめてみました。

 それぞれの年次
平成15年→官報号外203号(平成16年9月10日)
平成16年→同223号(平成17年9月30日)
平成17年→同207号(平成18年9月8日)
平成18年→同214号(平成19年9月14日)
平成19年→同202号(平成20年9月12日)
平成20年→同209号(平成21年9月30日)
の数値を基に集計し表1にしました。

(資金収支報告書は1〜12月のスパンで作成され、翌年3月末までに提出される仕組みです)

表1 陸山会の平成15年〜平成20年の政治資金収支概要<単位:千円>
平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年
2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年
収入 379,048 580,024 339,099 151,609 103,854 163,035
 寄付金 320,285 177,143 334,386 128,981 86,504 52,590
 (うち政治団体) 307,146 157,100 309,060 111,640 70,000 37,020
 借入 56,500 400,000 0 0 0 0
 *一新会からの寄付 0 0 0 17,023 0 0
 その他 2,262 2,880 4,713 5,605 17,350 110,445
支出 387,627 121,202 679,964 342,414 115,060 170,616
 経常経費 111,253 44,766 429,030 74,123 56,182 36,094
 (うち事務所費) 99,119 38,355 415,254 58,351 46,505 26,085
 政治活動費 276,373 76,436 250,933 268,290 58,878 134,522
差引 -8,580 458,821 -340,865 -190,805 -11,207 -7,582
前年繰越 159,808 151,229 610,051 269,186 78,382 67,176
次年繰越 151,229 610,051 269,186 78,382 67,176 59,594
出典:出典は総務省公式ホームページにある官報
*一新会からの寄付17,023千円は、平成18年度の報告書への記載が漏れており、後に訂正報告したものと推定されます(確認中)。

 ちなみに同じ官報で開示された一新会の政治資金収支報告書には、陸山会宛に同額の寄付が記載されています。記載漏れの理由は不明ですが、いずれにしても平成19年の前年繰越残高は当該記載漏れを合算した金額と一致するので、訂正報告が適切になされている限り虚偽記載による瑕疵は治癒したと考えられます。

 ここで、平成15・17年の政治団体からの寄付金収入、ならびに平成17年の事務所費に注目してみて下さい。それぞれ収入が3億、支出が4億と突出している事がお分かりだと思います。また、前後する平成16・18年もそれぞれ1億円も政治団体からの寄付金収入が計上されています。

 ちなみに平成15・17・18年の政治活動費も2億円以上と多額に挙がっていますが、これはそれぞれ平成16年の総選挙及び平成19年の参議院選挙に関連したもの、並びに自由党から民主党に合流し活動が活発になったことと関係がありそうです。

 更に、資産の明細についても表にまとめました(表2)

表2 陸山会の平成15年度〜平成20年度の資産報告 <単位:千円>
平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年
土地 612,677 612,677 955,317 955,317 941,551 831,551
建物 40,659 510,959 534,185 534,185 563,039 453,039
自動車 14,390 14,288 14,288 13,506 12,088 12,436
預金等 71,500 471,500 265,500 56,500 56,500 56,500
小沢借入金 118,549 491,478 263,939 35,928 7,452 2,674
銀行借入金 52,573 47,263 41,866 36,399 30,887 24,679

 ちなみに各年の増減については以下の表3の通りです。

表3 陸山会の平成16年度〜平成20年度の資産対前年増減 <単位:千円>
平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年
土地 0 342,640 0 -13,767 -110,000
建物 470,300 23,226 0 28,854 -110,000
自動車 -103 0 -783 -1,419 348
預金等 400,000 -206,000 -209,000 0 0
小沢借入金 372,929 -227,540 -228,011 -28,477 -4,778
銀行借入金 -5,310 -5,398 -5,468 -5,512 -6,209

 ここでちょっとだけ補足。Wikipediaでは「土地・建物等の所有が禁じられている」旨が政治資金規正法にありますが(第19条の2の2)、本条文が施行される平成19年8月6日以前に取得した物件ちついては対象外とされています(平成19年7月6日法律第107号・附則第2条1号)

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO194.html target=_blank>http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO194.html

 ちなみに平成19年(12月末)時点で陸山会の所有する土地・建物で最新のものは平成19年4月11日のもので、ギリギリですがこれもセーフです。

 ところで建物が平成16年に急増していますが、こちらは今回の4億円に関連するテーマから外れるので、場を分けて調べたいと思います。ただ増加した建物はすべて平成6〜15年にわたって取得されたものなので、新規に購入したのではなく、他の資金管理団体を合併したものと考えるのが自然でしょう。

 資金収支報告書は領収書など証憑の添付も義務づけられているので、ここで余りに見え透いた虚偽記載を行うのは、ちょっと考えにくいです。

 平成17年の土地342百万円及び建物23百万円が、一番の争点となっている世田谷の秘書宿舎となっている物件です。

 同時に預金及び小沢氏の借入金が2億円ずつ、翌年の平成18年も、それぞれ減少している事がお分かりでしょう。

 あくまで僕の勝手な仮説ですが、資金収支報告書が虚偽でない限り、以下のような流れを読み取る事が出来ます。

1)平成16年以前から秘書宿舎の取得のため動いていた。
  それに向けて他の小沢氏関連の団体から資金があてがわれていた。

2)しかし候補物件はいずれも高額で、かつ総選挙の資金がかさんだ関係で
  足が出てしまい、見つけられずにいた。

3)そこでやむを得ず、平成16年に小沢名義で銀行より4億円を借入れた。
  (陸山会は法人ではないので、代表者である小沢氏の名義によらざるを得ない)

4)平成17年に土地購入代金342百万円及び宿舎の建設費用23百万円を
  支払い、「事務所費(経常経費)」として処理した。

5)更に返済原資として、同年に小沢氏関連の団体から3億円、更に翌年に
  1億円を捻出した(これの元が小沢氏個人の相続遺産?)

6)上記の寄付金を用いて、平成17・18年に2億円ずつ返済した。
  (選挙に関係が〜と前述したけど、仮に「政治活動費」として処理されて
  いたなら、金額もぴったり一致します)

 もちろん、報道によると「土地の代金が支払われたのは平成16年10月」とか「4億円の定期預金を組んで、これを担保に銀行から4億円借り入れた」という情報もありますので、以上だけで全てが説明がつくとは言えません。

 言うまでもありませんが、これらの資金収支報告書が真っ赤な嘘でしたら、今までの分析も全部パーです。

 もしこれが事実だとしたら、99%は自分の秘書のためにここまで必死こいて、疑惑の目を向けられながらやってきている事になるのではないのでしょうか?

 よくよく考えてみて下さい。わざわざ秘書達を自宅の近くに寝泊まりさせるために、大変な労力を割いているのです。

 秘書の利便性という事で政治活動には間接的に有益ですが、これ自体小沢氏の票に直接つながるものではありません。同じ資金があったら、経団連か消費者金融業界(?!)の買収にでも使った方がまだ実益につながるってもんですよ。

 ちなみに乱暴に総括すると、そもそも現金主義で経理を行っているから、物やお金の動きが把握しづらくなり、それが疑惑を助長してしまったのではないのかって気がします。

 資金管理団体の会計のルールも、もっと一般的な企業会計に近いやり方に変えて、実体を把握しやすい形式にすれば、無用の混乱も生じたりしないのではないのでしょうか。

 政治資金規正法自体もイギリスとアメリカの制度が混在しててつぎはぎ状態という指摘もあるので、この点からも改正の余地はあると思います。

追記

 DM様よりご指摘を頂いたので、補足致します。

 まず仮説の3)と4)は時系列は逆であり、3)の土地代金の支払いにあたって「相続遺産」の4億円を用いたとのことです。

 これを前提に仮定をアレンジすると、このようなシナリオでしょうか。

(1)平成16年に土地を購入したが、あくまで小沢氏個人の取引として処理した。

(2)その後、平成17年に土地の登記が完了し、小沢氏個人→陸山会へと所有権が移転した(仮に陸山会が法人であれば、ここで小沢氏と陸山会との間で契約書が交わされる)ので、土地342百万円の取得が初めて資金収支報告書に計上された。

(3)平成17(及び18年?)に、@の時点の土地購入代金相当額を、を正式に陸山会への寄付として処理した。

 要するに、早い話が小沢氏が自分のポケットマネーで買った3億4千万円の土地を陸山会に贈与したと考えるのが自然ってことではないでしょうか。

 だとすると、小沢氏は私腹を肥やすどころか、私財をなげうって秘書宿舎の土地を自ら購入したという形式になります。

 また、借入金の返済ですが、やはり「政治活動費」として処理されていました。平成18年度の資金収支報告書のpdfファイルが総務省HPより閲覧出来ますので、ご参照下さい。

http://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/contents/000021329.pdf

 ちなみに、一新会から1,702万円を受け取ったように申し上げましたが、実際には陸山会→一新会への寄付金支払額が取り消されていた(支払いのマイナス)ものであり、こちらについても同報告書で確認出来ます。

.......引用終了


つづく