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山形・上山事務組合による
巨大ガス化溶融炉計画勉強会

青山貞一

10 March 2010
独立系メディア「今日のコラム」
無断転載禁


 2010年2月27日(土)〜2月28日(日)、山形県上山市に立地が予定されている約300トン、約300億円規模のガス化溶融炉計画に反対する地元住民団体(山形市、上山市、他2町による広域環境事務組合)に友人の広田次男弁護士(いわき市在住、ゴミ弁連副代表)と一緒にでかけてきた。


山形新幹線の車窓から見る米沢近くの風景

 広田弁護士は都合で講演会当日(2/28)のお昼に山形駅に到着されたが、私は土曜日(2月27日)の昼に山形駅に山形新幹線で行った。

 そして山形駅に待っていてくれた主催者らと山形駅から上山温泉の立地予定地まで車で行き、立地予定地を約15人の住民の皆さんと2時間ほど視察した。立地域にはご多分に漏れず中山間地のすばらしい自然、景観があり、近くには多くの果樹園があった。


上山市の立地予定地の現地視察
 
 以下は、立地予定地。この予定地の中に反対派住民の共有地が多数あることが分かってきた。現在、裁判で確認中である。


立地予定地 

 立地に反対している住民団体の中心には、これらすばらしい果樹園の経営者がいた。

 ただ立地域周辺にはすでに産業廃棄物の中間処理施設が3〜4カ所が稼働しており、その施設ひとつひとつを皆で視察し、施設を見ながら社長などの責任者に私がいろいろと質問した。


立地予定地の道路をハサミ反対側にある産廃施設

 現地視察終了後、上山市本庄の公民館で約3時間にわたり住民団体の方々との間で質疑応答を行った。

 その後、私の宿泊先ともなっていた上山温泉のホテルで懇親会(30名ほど)があり、懇親会には議員、弁護士、立地反対派の地権者らも参加し、食事をしなが活発な議論を行った。

 翌2010年2月28日(日)、午後2時過ぎから山形市中心部にある公民館で、福島県いわき市から駆けつけられた広田次男弁護士と青山が講演を行った。参加者は、約200名の市民、議員、マスコミ、熱心に私たちの話を聞いてくれた。


日曜午後に集まった市民

 青山は約200枚のパワーポイントを使い、まず環境、健康、財政、自治、技術などの観点から廃棄物「焼却主義」の課題を話した。

 主に環境総合研究所が全国各地の生協などと一緒に過去10年行ってきた松葉調査など具体的な事例をもとに話した。さらに現在、東京など大都市で大きな問題となっている「廃プラ焼却問題」も話した。事業者は溶融炉なら何でも燃やせることを強調しているからだ。講演時間は1時間30分。

 下のパワーポイントは、1999年度に実施した全国松葉調査のうち、東京でとくにダイオキシン濃度が高かった大田第二清掃工場近くの汚染濃度マップ。実はこの太田第二では、東京23区部の廃プラを焼却していたことが当時分かっている。東京羽田空港に近く、航空法により高い煙突がたてられないこともあり、比較的近くに非常に高濃度のメッシュが集中していた。

 以下の調査結果では国の甘い大気中ダイオキシン類の環境基準ですら超えていたことが分かっている!この調査ではPCDD+PCDFでコプラナーPCBは含めていないので含めればさらに高濃度となっていたものと推察できる。


出典:環境総合研究所(東京都目黒区)

 講演では環境、健康以外に国から市町村への補助金、地方交付税の流れのメカニズム、間違った国の中央集権的政策が一方で地方自治を破壊するとともに、他方で重厚長大メーカーの大きな利権となっていることについても詳細に話した。

 正当性に乏しい一部事務組合や広域連合による不透明な立地選定、入札問題についても具体的事例をもとに話した。

 さらに環境時代に未だ燃やして埋める日本の「焼却主義」の代替政策であるゼロウエイスト政策についてもカナダ・ノバスコシア州と日本の徳島県上勝町など具体例を話しました(これは本題でなかったので今回はほんの少しだけ)。

 ただ、以下の毎日新聞の記事では本題のガス化溶融炉の問題点には一切触れられておらず、信じられないことだが講演ではわずか3分しか話さなかったゼロウエイスト政策を強調していた!

山形・新ごみ焼却場:反対派がごみ問題勉強会
毎日新聞
 2010.2.29

 上山市柏木地区のごみ焼却場建設計画に反対する山形、上山両市の住民3団体が28日、ごみ処理問題に詳しい弁護士や大学教授を招いた学習会を山形市内で開いた。焼却場建設の差し止めを求めた訴訟で勝利した例や、焼却に頼らない欧米諸国のごみ処理方法などが報告された。

 福島県の広田次男弁護士は、郡山市三穂田町の焼却場建設差し止め訴訟で、市民33万人中22万人分の反対署名を集め、「建設取りやめ」の和解を勝ち取った例を説明。「ごみ問題では地域における民主主義が問われている」と呼びかけた。

 ごみ処理問題に詳しい東京都市大環境情報学部の青山貞一教授(環境科学)は「日本の年間ごみ焼却量は、人口が3倍弱の米国を上回る。たい肥化や資源化により脱焼却を進めるべきだ」と持論を紹介した。

 「柏木新清掃工場の再考を求める会」(上山市)の川口俊雄代表は「住民がごみ処理について正しい知識を共有することが大切」と学習会の狙いを話した。

【細田元彰】


 そして最後に大型溶融炉が抱える問題点を技術、構造、建設費、維持管理、ダイオキシン・重金属処理、事故などについてこれも個別具体例をもとに話した。

 これが下のパワーポイントにもあるように私の講演のメインである!200枚使ったPPTの一部である。



 




















出典:環境総合研究所(東京都目黒区)

 広田弁護士は福島県内で過去手がけられた多くの廃棄物処理処分施設の反対運動及び訴訟について具体的に話した。大部分は産廃処分場立地に伴う紛争、裁判の事例だが、その上で住民団体が留意すべきこと、この種の問題では裁判も、いわゆる表技(おもてわざ)だけでなく、裏技(うらわざ)が極めて重要なものとなることを力説された。

 というのも山形の場合も、立地域は中山間地の山奥であり、事業者が立地域を公募し、応募した人たちの用地の近くに後でしらべたら反対派住民らの所有地(共有地)がたくさん含まれていたことがわかりつつあるからだ。

 こらについて広田弁護士の知り合いの地元弁護士ら3名の弁護士が所有者確認訴訟(民事)を担当していた。もし、それらの共有地が反対派のものでであることが分かれば、それらの共有地は事業予定地の真ん中にあり面積も大きいことからして計画は頓挫することになる。

 また本件では、事業者(事務組合)が立地選定に困り、途中から公募方式を採用したのだが、いろいろ調べると、どうもデキレースだった可能性があると思える。

 溶融炉の型式・構造が資料にあったたが、その型式・構造に対応できる企業は日本では2、3社しかない。

 事業者資料にある入札業者3グループのなかには、1社しかその型式・構造に対応できる企業がないことから、形式上は3グループによる指名競争入札をとりながら、実質は官製談合でその1社を含むグループが落札する可能性もあるように思えた。これらはあくまでも青山の推察だ。

 もっぱら先週金曜日のNHKの定時ニュースで日本を代表する環境設備企業が今後環境分野から撤退すると報じていた??

 このように本件では、まさに広田弁護士の裏技が威力を発揮する可能性が大であると感じる(笑い)。

 また現地にはゴミ弁連会員ではないようだが、人権派の有能な弁護士がおり、何としても時代錯誤の巨大なガス化溶融炉計画を中止させるようがんばれればと思う。