大メディアはほとんど報道していませんが、熊本大地震を強震動(最大地震加速度)で測っていたデータを見ると驚愕します!
最大地震加速度(単位:ガル)
・強震観測網(K-NET、KiK-net)により観測された地表での最大加速度
出典:防災研究所 NIED
下のデータは、防災科学技術研究所が発表した熊本大地震の強震動波形、速度・加速度応答スペクトルとともに、最大加速度です。
注目すべきは、表1にあるように熊本県益城において最大加速度1580ガル(gal)を観測したことです。
図1はその強震動波形図、図2は速度・加速度応答スペクトルです。
◆強震動とは
建築物や構造物に被害を及ぼす強い揺れ。微弱な揺れを高感度に測定できる地震計では測れないので、強い揺れを確実にとらえる特殊な地震計で観測する。各地点の揺れ方は、震源の大きさや岩盤の破壊の進行方向、地震波が伝わる経路、観測点の地盤などによって大きく変わる。
◆基準地震動とは
原子力発電所の耐震設計において基準とする地震動。地質構造的見地から、施設周辺において発生する可能性がある最大の地震の揺れの強さのこと。単位はガル。 |
表1 観測点最大加速度上位10件
No |
観測点名 |
最大加速度 |
画像リンク |
1 |
KiK-net益城(KMMH16) |
1580gal |
強震動波形 図2 速度・加速度応答スペクトル 図1
|
2 |
K-NET矢部(KMM009) |
669gal |
強震動波形 速度・加速度応答スペクトル |
3 |
K-NET熊本(KMM006) |
604gal |
強震動波形 速度・加速度応答スペクトル |
4 |
K-NET砥用(KMM011) |
491gal |
強震動波形 速度・加速度応答スペクトル |
5 |
KiK-net豊野(KMMH14) |
357gal |
強震動波形 速度・加速度応答スペクトル |
6 |
K-NET宇土(KMM008) |
339gal |
強震動波形 速度・加速度応答スペクトル |
7 |
K-NET大津(KMM005) |
236gal |
強震動波形 速度・加速度応答スペクトル |
8 |
K-NET高森(KMM007) |
215gal |
強震動波形 速度・加速度応答スペクトル |
9 |
KiK-net三角(KMMH07) |
173gal |
強震動波形 速度・加速度応答スペクトル |
10 |
KiK-net菊池(KMMH03) |
172gal |
強震動波形 速度・加速度応答スペクトル |
出典:防災科学技術研究所 NIED
防災研究所の調査報告
図1 益城における強震動波形図
・K-NET・KiK-net観測点の中で最大加速度(1580gal、
三成分合成値)を記録したKiK-net益城(KMMH16)観測点の
速度・加速度応答スペクトル。
出典:防災科学技術研究所 NIED
図2 益城における速度・加速度応答スペクトル図
・K-NET・KiK-net観測点の中で最大加速度(1580gal、
三成分合成値)を記録したKiK-net益城(KMMH16)観測点の強震動波形。
出典:防災科学技術研究所
ところで、つい最近福岡高裁宮崎支部で出された川内原発稼働禁止差し止め事件では原子力規制委員会の新基準をもとに、再稼働を認める決定(判決)を出しています。周知のように、九州電力の基準地震動はSs1は540ガル、Ss2
は620ガルであり、全国の原発に比べて明らかに低いことが問題となっています。その低い基準地震動を高裁は合理的と判断したのです。
しかし、川内原発における原発の耐震性能基準は、620ガルです。大地震後、丸川環境大臣は「今回の地震で川内原発において観測された地震動は最大で12.6ガルとなっている」から川内原発を停止させる必要はないとコメントしています。
鹿児島県の隣の県である熊本県益城において最大加速度1580ガル(gal)を観測したにもかかわらずです。
近くで巨大地震が起きれば交通機関であれ、最低限でも余震がおさまるまで停めて点検するのが当然でしょう。「今、最大で12.6ガルだから止める必要がない」という発想は、到底、予防原則的な思考がないだけでなく危険極まりない発想です。
図3は熊本県から大分県にかけての地震活動の状況です。図の左下側に川内原発があることからしても、いったん川内原発を停止させ状況をみるだけの余裕がない行政や電力会社に、この種の原発の管理を任せておくのは、まさに危険極まりないといえます。
図3 熊本県から大分県にかけての地震活動の状況
出典:朝日新聞
周知のように世界中で起きている地震の約10%が日本およびその近海で起きています。にもかかわらず、狭い日本国土に54基もの原発を立地させてきたこと自体無謀であると言わざるをえません。まして、官僚、学者、電力会社などの原子力村の一大過失により過酷な福島第一原発事故を起こして5年後に、かくも無責任きわまりない担当大臣しかおかない安倍政権にも大きな憂慮を感じます。
安倍政権が経済優先で原発の再稼働をしているという人がいますが、福島第一原発事故以降、これは間違いです。原発の立地、稼働、
事故後の放射性廃棄物の処理、廃炉そのものがまったく経済性がないからです。
このような丸川氏が環境大臣となっていること自体、国民的リスクの種といえます。
追記
NHKニュースに「地震の発生場所が次第に南西方向に移動している」のではないかとありました。ということは川内原発に近く移っているともいえます。熊本を中心に今回、すでに400回を越える地震が発生してますから、危険であることは間違いなく、早く止めなど予防原則を徹底すべきです。もちろん、一時的に停止させたから安全ではありませんが。
下の図4,、図5および図6は周知の中央構造線の位置ですが、今回の一連の熊本地震は、この中央構造線に沿っておきています。益城町、南阿蘇町もオンザラインにあります。しかも、その南西はまさに鹿児島県の川内市方向に延びています。
図4 中央構造線の概括位置
出典:グーグルマップの日本地図をもとに筆者(青山貞一)が作成
図5 中央構造線の概括位置
出典:Wikipedia
中央構造線は愛媛県では伊方原発がオンザラインにあることが分かり。
図6 九州地方の中央構造線の概括位置
出典:Wikipedia
出典:青山貞一、環境総合研究所(東京都目黒区)
◆中央構造線の概略
関東から九州へ、西南日本を縦断する大断層系で、1885年(明治18年)にハインリッヒ・エドムント・ナウマンにより命名されました。
※ハインリッヒ・エドムント・ナウマン(Heinrich Edmund Naumann、1854年9月11日
-
1927年2月1日)は、ドイツの地質学者。いわゆるお雇い外国人の一人で、日本
における近代地質学の基礎を築くとともに、日本初の本格的な地質図を作成。
またフォッサマグナを発見したことや、ナウマンゾウに名を残すことで知られる。
中央構造線を境に北側を西南日本内帯、南側を西南日本外帯と呼んで区別しています。一部は活断層です。
構造線に沿って南北に分布する岩石は、北側(内帯側)は領家変成帯(中生代ジュラ紀の付加体が同白亜紀に高温低圧型変成を受けたもの)、南側(外帯側)は三波川変成帯(白亜紀に低温高圧型変成を受けたもの)です。
長野県には、領家変成帯と三波川変成帯が直に接しているのを確認できる北川露頭があります(#観光関連を参照)。しかし四国においては領家変成帯は和泉帯に覆われがちとなり、構造線は和泉帯と三波川変成帯の境界となっています。
領家変成帯には白亜紀の花崗岩も見られます。中央構造線は、糸魚川静岡構造線(糸静線)より東のフォッサマグナ地域では、フォッサマグナの海を埋めた新第三紀の堆積岩に覆われています。
第四紀に大きく隆起している関東山地では古第三紀以前の基盤岩が露出し、その北縁の群馬県下仁田町に中央構造線が露出しています。
関東平野では新第三紀や第四紀の地層に覆われています。
九州中部でも新第三紀後期以後の火山岩や阿蘇山をはじめとする現在の火山におおわれています。
近畿南部から四国にかけては、中央構造線に沿って約360kmにわたり活動度の高い活断層(中央構造線断層帯)が見られ、要注意断層のひとつとされています。
以下は近世以降におきて地震です。
1619年(元和5年) 八代 - M 6.0
1649年(慶安2年)3月13日 伊予灘 - M 7.0前後
1703年(元禄16年) 大分県湯布院・庄内 - M 6.5
1718年(元禄16年) 三河、伊那遠山谷 - M 7.0前後
1723年(享保3年) 肥後 - M 6.5
1725年(享保10年) 高遠・諏訪 - M6.0から6.5
1889年(明治22年) 熊本 - M 6.3
1894年(明治27年)1895年(明治28年) 阿蘇 - M 6.3
1916年(大正5年) 新居浜付近 - M 5.7
1916年(大正5年) 熊本県中部 - M 6.1
1975年(昭和50年) 阿蘇北部 - M 6.1
1975年(昭和50年) 大分県中部 - M 6.4
2016年(平成28年) 2016年熊本地震 - M 7.3
出典:Wikipedia |
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