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重要最新技術情報

パソコン計算速度は一段と向上し
ハードディスクは不要となる!

青山貞一 Teiichi Aoyama
株式会社環境総合研究所所長

掲載月日:2010年11月28日

独立系メディア「今日のコラム」

無断転載禁

 2010年11月9日、首の骨(第二頸椎)を折って最終的に入院し慈恵医科大学付属病院の脳神経外科で11月19日、大手術を受けた。この間、約70名の方々が多忙中にもかかわらずお見舞いに来てくれた。この場をお借りして感謝の意を表したい!

 お見舞いいただいた方の中に、米国カリフォルニア州サンディエゴに在住するXさんがいた。Xさんはサンディエゴにある世界的な半導体分野研究開発型ベンチャー企業の技術系幹部、しかもれっきとした群馬県出身の日本人である。

 私は日本人の誇りであると思っている方だ。

 Xさんについては、数年前、サンディエゴでお会いする機会があり、独立系メディアの論考でもXさんの会社について敢えてご自宅でインタビューさせていただき論考を書いたことがある。そのときは、主に組織と経営について書かせてもらった。

 世界中のパソコンCPU(中央演算装置)製造の大部分を独占しているインテルやAMD、それに各種電子メモリーを量産している韓国のサムスンやLG、日本の東芝やNECは単に超LSIなどの電子回路設計やSDHC、フラッシュメモリーなどのコンピュータメモリーの大手企業であるに過ぎない。

 実は米国カリフォルニア州のサンディエゴにあるXさんがいる研究開発企業のーザー技術が、上記のCPU速度や集積メモリー密度に大きな鍵を握っているのである。

 技術の一点で、Xさんの会社はインテルやAMD、東芝やLG、サムソンよりはるかに上位に立っているわけだ。

 超小型、軽量、超停電力なLSIを開発するためには、それらの電子回路をナノテクから将来はピコテクレベルの回路の線幅精度でシリコンウェハーに焼き付けるための技術が不可欠である。

 現在最先端のシリコンウエハー上の回路線幅は40ナノメートル。もちろん焼き付け上でエッチング的な技術により、電気が通る部分と通らない部分、半導体部分などを実際の回路とする技術も不可欠である。

 この場合、焼き付け線幅精度が問題となる。その線の幅が低いと同一面積における回路の集積度が低くなる。インテルやAMDが毎年毎年、新たな何GHzクロック速度のCPUを世に出しているが、そのためにはインテルが設計したCPUの回路図をより安定した狭い波長の波長ブレと雑音がない鮮明なレーザー光線と光学レンズによって、シリコンウェハーに焼き付けることが不可欠となる。

 昔のパソコンのCPUと今のパソコンのCPUでは、集積度が大きく異なるが、それを可能とするために、単一周波数幅で安定したブレが少なく、雑音を出さないレーザー光線となるそうだ。

 ただしこのぶれないレーザー光線も、今やかなり限界まできていることは間違いがなく、当時、Xさんからは、将来、限界が来て自分の会社が潰れる可能性がないとはいえないとなどと物騒な話しもサンディエゴで伺ったものだ。

 マスク上の回路パターンをシリコンウエハー上に光学的に転写する場合、光源の波長が短くなればなるほど、その解像度が上がる。20年以上前は、光源として水銀ランプのg線(435nm)が使われていたが、水銀ランプのi線(365nm)に変わった。

 水銀ランプからはこれ以上短い波長の強度のある光はでないので、17年前よりKrFエキシマレーザ(248nm)に変わった。

エキシマレーザー

 エキシマレーザー(Excimer Laser)とは希ガスやハロゲンなどの混合ガスを用いてレーザー光を発生させる装置である。元々は工業用として利用されていたが、最近ではレーシックなどの視力矯正手術においても利用されている。

 希ガスはアルゴン、クリプトン、キセノンが、ハロゲンはフッ素、塩素が一般に使用される。混合ガス中でのパルス放電によって生成する励起状態希ガス原子とハロゲン原子によって形成されるエキシマからの放射光によってパルス発振する。

 代表的なエキシマレーザーの発振波長は以下のとおりである。

ArF - 193 nm
KrF - 248 nm
XeCl - 308 nm
XeF - 353 nm


参考:Wikipedia

 さらに、7前からArFエキシマレーザに変わった。今後、光源はエキシマレーザからEUV(13.5nm)に移行すると言われている。

 ※EUV光源について
 ※EUV光源研究開発動向


 Xさんの会社のレーザー光線技術をもとに、ニコン、キャノン、カールスツァイスの3社の光学、すなわちレンズメーカーがつくったレンズを通すことでナノレベルの電子回路のシリコンウェハー上への焼き付けが可能となるそうだ。

 ニコンとキャノンはレンズと露光機の両方を製造しているが、カールツアイスはレンズのみの製造を行い、露光機の製造は、オランダのASMLという会社が行っている。ASMLは昔フィリップスの子会社だったが、現在は独立している。

 この技術は、世界でニコン、キャノン、カールスツァイスの3社しかないそうで思わぬところでレンズ技術が生かされいるわけだ。たとえばニコンの売り上げの約半分から2/3はこの技術によるもので、カメラ、デジカメ、顕微鏡が約半分で、それらは何ら売り上げの主流ではないとのことである。

 キャノンは全体売り上げが大きいのでそれほどのことはないようだが(約1割)、安定した収入のベースとなっているはずだ。

 ところで、せっかくアメリカ西海岸からお見舞いにしていただいたこともあり、その後どうなったのかを伺った。

 というのも、周知のようにコンピュータのCPUもCore3,5,7など、単体のスピードは頭打ちとなり、複数のCPUの並列処理がインテル、AMDなどでここ数年行われてきた。またSDHCメモリーも16GB程度で頭打ちになっている感じがする。

 Xさんには直裁的に今後、どうなるのかを伺った。すると、Xさんからは、レーザー光線の光源はエキシマレーザからEUV(13.5nm)への移行がほぼ完成し、近い将来、日本のT社を皮切りに、韓国のサムスンやLGなどにも次々に、技術が提供されるとうのことだ。

 当然、集積度を上げるためにはCPU、メモリーともに、いかに低電圧、低電力で稼働させるかが大きなポイントとなる。電力消費を限界まで抑制させ、発熱を押さえるためだ。

 近い将来、CPUも並列処理化とは別に、単体の速度がさらに数倍向上する可能性があり、SDHCメモリーがハードディスクに代わる時代がすぐそこに来ているとのことだった。

 事実Xさんが在籍するサンディエゴの世界的な研究開発型ベンチャー企業も、最盛時の社員数(研究開発、企画管理、営業を含め)にもどっているようだ!

 私たちの株式会社環境総合研究所(ERIでは、研究所設立のひとつの重要なミッションに大型汎用コンピュータやスパコンでしかできなことをパソコンで行うことがあった。すでに3次元流体計算などでその夢をかなり現実のものとした。その上で高度な学術シミュレーションを超リーズナブルな費用で計算サービスする体制も整備してきた。

 Xさんが言われたことが近々実現するとなれば、さらに上記の私たちの夢が現実化することになる。また電力を食い、重たいハードディスクも時代に遺物となる時が近くなると思える!

 XさんそしてXさんの会社の今後に大いに期待したい!