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ここが変だよ菅政権

C鳩菅の安易な北朝鮮犯行説の追認

青山貞一
16 June 2010
独立系メディア「今日のコラム」
無断転載禁


 鳩山前総理だけでなく菅総理も、外交・防衛については、北朝鮮との関連において東アジアの安定の重要性から沖縄に海兵隊を置くことの重要性を力説し、日米同盟、日米声明を追認してきた。 とくに鳩山前総理も菅総理も会見や演説の中で、韓国哨戒艇「天安」の沈没に関しては、北朝鮮の魚雷発射が原因と決めつけた。

 たとえば先の国会での菅総理の所信表明演説では「
北朝鮮については、韓国哨戒艦沈没事件は許し難いものであり、韓国を全面的に支持しつつ、国際社会としてしっかりと対処する必要があります」と述べている。
 
 周知のように、本件、すなわち韓国哨戒艇沈没事件に関しては、独立系メディアでは、外交ジャーナリスト、田中宇氏や河信基氏が当初から疑義を呈してきた。 以下はエントランスにある特集であり、内外の情報収集をしてきた。

●特集:韓国軍艦「天安」沈没の深層と真相
★天安艦 沈没直前まで 韓-米対潜水艦訓練 カン・テホ,クォン・ヒョクチョル
★米国物理学教授、「天安艦は座礁か衝突で沈没」 レーバーネット
★参与連帯(韓国NPO):依然として証拠が不十分、8つの疑問点 朝鮮日報
★田中 宇:韓国軍艦沈没事件その後
★調査官レポート『爆発も魚雷もなかった』〜クリントン国務長官への手紙
Urgent Fwd from Korea: A Letter to Hillary Clinton, U.S. Secretary of state: There was no Explosion. There was No Torpedo.
★東本高志:韓国・天安艦沈没事件について
★河信基 :天安艦事件検証 @「座礁→沈没」主張の調査委員を公安捜査
★田中 宇:韓国軍艦「天安」沈没の深層
★韓国:北朝鮮関連専門家が合調団の「1番」に疑問を提起 レーバーネット

 もちろん、北朝鮮が過去、拉致問題、核問題を中心に数々の問題を起こしてきたことは認める。しかし、鳩山前総理や菅総理が普天間基地問題との関連でことさら東アジア情勢、とりわけ北朝鮮の魚雷が韓国の哨戒艇を沈没させたと決めつけていることには、大いに疑義を感じざるを得ない。

 とってつけたように、北朝鮮魚雷説を利用し、国民に国防上の危機を煽り、結果的にその抑止力として沖縄に海兵隊を置くことが必要だと言っていたのである。

 だが、当然のこととして、一国の総理が、一方だけの主張を聞き、韓国政府が顕示した事実を真実であるかのように、自分の政治的宣伝に使うのは極めて問題であると言わざるを得ない。

 日本政府は、この事件の調査には一切関与していないし、検証もしていない。にもかかわらず北朝鮮犯人説を安易に追認する鳩山、菅氏の基本姿勢に大いに疑問を感じるのである。6月15日深夜のBSフジでは、自衛隊上がりの評論家が、見てきたように北朝鮮犯行説について解説していた。しかしその評論家も当然のこととして現地調査などをしていない。

 危機をことさら煽り、防衛利権や米国追随をするのが日本の外交・防衛をめぐる「政官業学報」のペンタゴンである。

 まして上記の特集の記事や情報を読めば読むほど、見れば見るほど、本件に関して北朝鮮犯行説を安易に追認できないことが分かる。結局、前総理も菅総理も、ろくに自分なりに検証もせず、安易に北朝鮮魚雷説を追認し、利用したのである。

 ちなみに、鳩山前総理は東大工学部、菅総理は東京工大工学部卒の歴とした理工系の人間である。その総理が伝聞だけで、北朝鮮魚雷説を信じて「許しがたいもの」などと述べてよいものだろうか? 

 
そんななか、案の定というべきか、中国、ロシアだけでなく、肝心な米国国防省も北朝鮮犯行説に疑問符をつけ始めたのである。

韓国哨戒艦沈没事件、どうなってんの?
米国国防省も逃げを打ち始めた
2010-06-12 (日刊ゲンダイ2010/6/11)

◇急に「事故説」「衝突説」に言及

 案の定、韓国の哨戒艦「天安」沈没事故の雲行きが怪しくなってきた。韓国と歩調を合わせ、これまで「北朝鮮犯行説」をとってきた米国が、なんと“逃げ”を打ち始めたのだ。

 日本のメディアはほとんど伝えていないが、AP通信が5日(現地時間)、「天安事件」に関してこんな記事を配信した。

 「匿名の米国防総省当局者が『天安事件は意図された攻撃というよりも、北朝鮮のハネ上がり分子の仕業か、単なる事故、もしくは訓練の不手際で起きた可能性がある』と語った」

 ビックリではないか。天安事件当時、韓国海軍と共同訓練をしていた米軍の元締の当局者が、「事故説」や「衝突説」を口にしたのだ。AP通信の配信だからウソではあるまい。

 米政府の豹変の裏には、ロシアや中国の影響がある。先月31日から韓国で天安沈没事件を調査していたロシアの調査チームが、具体的反証を挙げながら、北朝鮮魚雷説に疑問を投げかけ、ロシアの専門家は「韓国海軍はごくつぶしか」とまで語ったのだ。

 ごくつぶしとは、こういうことだ。沈没事件当時、韓国海軍は米軍と一緒になって、近くの海域で対潜水艦訓練をしていた。それなのに、北朝鮮の潜水艦に入り込まれ、魚雷まで撃たれたとすれば、間抜けのごくつぶしというわけである。

 このロシアチームの見解に、中国も追随し、共同歩調だ。さらに、韓国国内でも「北の魚雷説は捏造」「座礁か衝突か」の見方が広まり、韓国の李明博与党は地方選で惨敗した。そんな流れを受け、米政府も軌道修正を始めたというわけだ。

 この調子だと、国連安保理で北朝鮮制裁の決議は出そうにない。いまや世界でも、韓国政府の「北朝鮮魚雷説」を支持する国は少数派になっている。日本の菅新政権は、あまり前のめりにならない方が賢明だ。

 以下は上の日刊ゲンダイ記事のもととなった情報である。


 香港メディアを引用して伝えた韓国紙の京郷新聞6日付の記事は、ヤフーコリアなど主要ポータルサイトのヘッドラインニュースで大きく扱われ、地方 選与党惨敗で政治状況が一変した韓国社会で「魚雷説は捏造」「やはり座礁、衝突か」との見方が急速に広がっている。 

 それによると、香港の鳳凰衛星TVが4日の夕方ニュースで、天安事件の調査を終えて帰国したロシアの専門家チームに同行した記者が「韓国側に多く の疑問を提起した」と述べたと報じた。

 ロシア海軍の潜水艦・魚雷専門家で構成されたロシア調査団は、平沢(ピョンテク)の韓国海軍基地で天安艦や魚雷の残骸を調査した後、韓国国防部代 表に「天安を真っ二つにしたにもかかわらず、魚雷の部品(推進体部分)が残っているのはどうしてか?『1番』という文字が鮮明に残ったのは何故か?」と、 韓国の合同調査団が挙げた「決定的証拠」に疑問を呈した。

 さらに、「事件当時、西海沿岸には韓国軍だけでなく、米国の原子力潜水艦までいたのに、北朝鮮の潜水艇が沿岸警備やパトロールを担当している天安 艦を攻撃目標にするのはおかしい」と、北潜水艇説が軍事常識に反することを指摘したという。

 メドベージェフ大統領が声明で「韓国政府の調査結果以外に、一次資料を徹底的に検証する」と明らかにしていたように、ロシア調査団は一次資料を重 視し、事件現場に近いペンリョン島視察などを求めたが、韓国国防部は応じなかった。

 韓国側は調査結果を絶対化し、その受け入れを頑なに求めたが、ロシア側の不信感を強める逆効果になってしまったようだ。

 中国もロシアと同様の認識を共有しているとみられる。国営の新華通信社が3日、「韓国政府が天安艦調査結果を発表した直後(先月20日)、ロシア の専門家が『天安が魚雷で沈没したとするなら、韓国海軍は穀潰し』と述べた」と報じた。

 同日、ロシアの日刊紙・ブジュグルリャードが潜水艇専門家であるロシア海軍予備役大佐が「魚雷攻撃ではなく、弾薬、爆発の可能性が高い。水中音響 探知システムで周辺を探知するのが哨戒であり、天安が魚雷攻撃で沈没したとしたら、彼らは海軍ではなく、穀潰しだ」と述べたことを引用したものだが、「客 観的で科学的な証拠」を求めてきた中国の目には、韓国の調査結果は疑問だらけに映っているとみられる。

 李明博政権と距離を置きはじめた米側からも、韓国の調査結果を覆すような情報が漏れ始めた。

 AP通信が5日(現地時間)、「天安沈没直前、75マイル(120キロ)離れた海域で、米軍の駆逐艦2隻とその他の軍艦が韓国海軍の潜水艦を対象 にした対潜訓練をしていた。クライトン在韓米軍スポークスマンは『訓練は3月25日午後10時に始まり、翌日午後9時に終了したが、その理由は天安が爆発 したためだ』と語った」と伝えた。

 事故当時の詳しい状況について韓国国防部は一切隠していたが、意外なところから真相の一端が浮かび上がってきた。

対潜訓練の最中に北潜水艇に潜入され天安が撃沈されたとしたら、韓国海軍はロシア調査団が笑うように「穀潰し=馬鹿」ということになるが、常識的に はありえないことである。

 注目すべきは、APが「匿名の米国防総省当局者が『天安事件は意図された攻撃と言うよりも、北の跳ね上がり分子の仕業か、単なる事故、もしくは訓 練の不手際で起きた可能性がある』と述べた」と伝えていることだ。

 何のことはない、米国防総省が逃げを打ち始め、衝突の可能性まで認めているのだ。

 国際社会でも韓国の調査結果を支持する国は、現時点で22カ国と意外に少ない。朝鮮半島周辺では、中ロに加え、ベトナム、モンゴルなども疑問派 で、積極支持派は日本など逆に少数派である。

 キューバのカストロ前首相が6日の共産党機関紙・グランマで「米艦が撃沈した」と主張するなど、逆に、北朝鮮支持派が盛り返している。 国連安保 理での天安協議は来週以降に持ち越されたとの報道が先ほどあったが、李大統領の「天安優先原則外交」は破綻の様相を帯びている。

 問題は、日本のテレビ、新聞が「北朝鮮犯行説」一色に染まり、上記のような世界の動きをほとんど伝えないことである。日刊ゲンダイ(5月13日) が「米原潜と衝突か」と伝えたのがほとんど唯一の例外である。

 世界の常識とかけ離れ、特定方向に偏った日本メディアの特徴が天安報道にはそのまま現れているが、国民の知る権利に応えているとは言いがたい。 『河信基の深読み』の孤軍奮闘状況はあまりにさびしすぎる。

 菅新政権には、記者クラブ制など談合的な旧習撤廃が求められよう。

ハ ンギョレ新聞(英語版)の日本語訳

■S.Korea-U.S anti-submarine drill conducted night of Cheonan sinking(「天安沈没の夜、米韓で 対潜水艦軍事訓練を行っていた」ハンギョレ新聞英語版 2010年6月8日付)
http://english.hani.co.kr/arti/english_edition/e_national/424581.html

(全訳)
 「在韓米軍(USFK)は6月6日(日)、天安沈没の20分前に韓国軍と米軍とで、韓国の潜水艦が攻撃目標の役割を演じる対潜水艦訓練を(*沈没現場から)139km離れた場所で、行っていたことを公式に認めた。沈没以来初めて、韓米合同訓練の間に明確には何が行われるのかを具体 的に話したことになる。

 AP通信は韓国現地時間土曜日(5日)に、天安沈没の前、一隻の韓国潜水艦が敵の役割を演じてそれを米軍の駆逐艦、その他の船で追跡する 訓練をしたことを、それを話した米軍士官の名前を出して報道した。

 これに応じて、在韓米軍広報官ジェーン・クリクトン陸軍大佐は、その訓練が3月25日の午後10時に始まり、天安の船上での爆発のため、26日の 午後9時に終了したと認めた。(*訳注「船上での」に注意: ...ended at 9 p.m. on March 26 due to the blast aboard the Cheonan.)


 すでに韓国国内でも「北の魚雷説は捏造」「座礁か衝突か」の見方が広まっており、李明博与党は地方選で惨敗している。

 もし、北朝鮮犯行説がウソ、捏造だったら、鳩山前総理や菅総理はどうするつもりであろうか? 


つづく