香港メディアを引用して伝えた韓国紙の京郷新聞6日付の記事は、ヤフーコリアなど主要ポータルサイトのヘッドラインニュースで大きく扱われ、地方
選与党惨敗で政治状況が一変した韓国社会で「魚雷説は捏造」「やはり座礁、衝突か」との見方が急速に広がっている。
それによると、香港の鳳凰衛星TVが4日の夕方ニュースで、天安事件の調査を終えて帰国したロシアの専門家チームに同行した記者が「韓国側に多く
の疑問を提起した」と述べたと報じた。
ロシア海軍の潜水艦・魚雷専門家で構成されたロシア調査団は、平沢(ピョンテク)の韓国海軍基地で天安艦や魚雷の残骸を調査した後、韓国国防部代
表に「天安を真っ二つにしたにもかかわらず、魚雷の部品(推進体部分)が残っているのはどうしてか?『1番』という文字が鮮明に残ったのは何故か?」と、
韓国の合同調査団が挙げた「決定的証拠」に疑問を呈した。
さらに、「事件当時、西海沿岸には韓国軍だけでなく、米国の原子力潜水艦までいたのに、北朝鮮の潜水艇が沿岸警備やパトロールを担当している天安
艦を攻撃目標にするのはおかしい」と、北潜水艇説が軍事常識に反することを指摘したという。
メドベージェフ大統領が声明で「韓国政府の調査結果以外に、一次資料を徹底的に検証する」と明らかにしていたように、ロシア調査団は一次資料を重
視し、事件現場に近いペンリョン島視察などを求めたが、韓国国防部は応じなかった。
韓国側は調査結果を絶対化し、その受け入れを頑なに求めたが、ロシア側の不信感を強める逆効果になってしまったようだ。
中国もロシアと同様の認識を共有しているとみられる。国営の新華通信社が3日、「韓国政府が天安艦調査結果を発表した直後(先月20日)、ロシア
の専門家が『天安が魚雷で沈没したとするなら、韓国海軍は穀潰し』と述べた」と報じた。
同日、ロシアの日刊紙・ブジュグルリャードが潜水艇専門家であるロシア海軍予備役大佐が「魚雷攻撃ではなく、弾薬、爆発の可能性が高い。水中音響
探知システムで周辺を探知するのが哨戒であり、天安が魚雷攻撃で沈没したとしたら、彼らは海軍ではなく、穀潰しだ」と述べたことを引用したものだが、「客
観的で科学的な証拠」を求めてきた中国の目には、韓国の調査結果は疑問だらけに映っているとみられる。
李明博政権と距離を置きはじめた米側からも、韓国の調査結果を覆すような情報が漏れ始めた。
AP通信が5日(現地時間)、「天安沈没直前、75マイル(120キロ)離れた海域で、米軍の駆逐艦2隻とその他の軍艦が韓国海軍の潜水艦を対象
にした対潜訓練をしていた。クライトン在韓米軍スポークスマンは『訓練は3月25日午後10時に始まり、翌日午後9時に終了したが、その理由は天安が爆発
したためだ』と語った」と伝えた。
事故当時の詳しい状況について韓国国防部は一切隠していたが、意外なところから真相の一端が浮かび上がってきた。
対潜訓練の最中に北潜水艇に潜入され天安が撃沈されたとしたら、韓国海軍はロシア調査団が笑うように「穀潰し=馬鹿」ということになるが、常識的に
はありえないことである。
注目すべきは、APが「匿名の米国防総省当局者が『天安事件は意図された攻撃と言うよりも、北の跳ね上がり分子の仕業か、単なる事故、もしくは訓
練の不手際で起きた可能性がある』と述べた」と伝えていることだ。
何のことはない、米国防総省が逃げを打ち始め、衝突の可能性まで認めているのだ。
国際社会でも韓国の調査結果を支持する国は、現時点で22カ国と意外に少ない。朝鮮半島周辺では、中ロに加え、ベトナム、モンゴルなども疑問派
で、積極支持派は日本など逆に少数派である。
キューバのカストロ前首相が6日の共産党機関紙・グランマで「米艦が撃沈した」と主張するなど、逆に、北朝鮮支持派が盛り返している。 国連安保
理での天安協議は来週以降に持ち越されたとの報道が先ほどあったが、李大統領の「天安優先原則外交」は破綻の様相を帯びている。
問題は、日本のテレビ、新聞が「北朝鮮犯行説」一色に染まり、上記のような世界の動きをほとんど伝えないことである。日刊ゲンダイ(5月13日)
が「米原潜と衝突か」と伝えたのがほとんど唯一の例外である。
世界の常識とかけ離れ、特定方向に偏った日本メディアの特徴が天安報道にはそのまま現れているが、国民の知る権利に応えているとは言いがたい。
『河信基の深読み』の孤軍奮闘状況はあまりにさびしすぎる。
菅新政権には、記者クラブ制など談合的な旧習撤廃が求められよう。
ハ ンギョレ新聞(英語版)の日本語訳
■S.Korea-U.S anti-submarine drill conducted night of Cheonan sinking(「天安沈没の夜、米韓で
対潜水艦軍事訓練を行っていた」ハンギョレ新聞英語版 2010年6月8日付)
http://english.hani.co.kr/arti/english_edition/e_national/424581.html
(全訳)
「在韓米軍(USFK)は6月6日(日)、天安沈没の20分前に韓国軍と米軍とで、韓国の潜水艦が攻撃目標の役割を演じる対潜水艦訓練を(*沈没現場から)139km離れた場所で、行っていたことを公式に認めた。沈没以来初めて、韓米合同訓練の間に明確には何が行われるのかを具体
的に話したことになる。
AP通信は韓国現地時間土曜日(5日)に、天安沈没の前、一隻の韓国潜水艦が敵の役割を演じてそれを米軍の駆逐艦、その他の船で追跡する
訓練をしたことを、それを話した米軍士官の名前を出して報道した。
これに応じて、在韓米軍広報官ジェーン・クリクトン陸軍大佐は、その訓練が3月25日の午後10時に始まり、天安の船上での爆発のため、26日の
午後9時に終了したと認めた。(*訳注「船上での」に注意: ...ended at 9 p.m. on March 26 due to the
blast aboard the Cheonan.)
|