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菅総理も「米追随」

沖縄問題封印・先送り

青山貞一
June 2010
独立系メディア「今日のコラム」
無断転載禁


 鳩山前総理が辞任したのは、いうまでもなく普天間飛行場の代替施設を辺野古周辺に立地することを骨子とした「日米共同声明」を出したことにある。
 鳩山政権では、大山鳴動しネズミ一匹も出ず、結局、利権まみれで米国追随の自民党政権の辺野古案に舞い戻っただけといえる。

 なぜそうなったか? 

 これにはいくつかの理由があるが、まぎれもなく民主党の中に旧態依然の冷戦構造時代並みの外交・防衛論者がいて、それらの閣僚や政治家が官僚(そのOB)らと連携し、自民党案に回帰させたからだ。

 岡田、北沢、前原などの鳩山内閣の閣僚や長島ら政務三役は、いずれもそのA級戦犯であるといえる!

 そもそも鳩山総理が学んだ(嗤い)という「抑止力」論など、およそ時代錯誤で間違った稚拙なものだ。

★孫崎享(元外務省国際情報局長):在沖米海兵隊の抑止力とは何なのか

★田畑光永:「抑止力」で鳩山首相は何を学んだのか?

 沖縄県民、名護市民、辺野古住民、それに一貫して県外、海外移設を主張し続けてきた社民党が激しく反発したためだ。鳩山総理(当時)は、同声明を出すことを拒否した福島瑞穂大臣(当時)を罷免し、社民党は罷免を理由に連立政権を離脱した。

 もとより、政権交代前から鳩山氏は、普天間飛行場の代替施設は少なくとも県外、できれば海外へ移設したいと公言してきた。政権交代後も、県外そして海外への移設をほのめかした。私には「腹案」があると、言い続けたのもそのひとつだ。

 だが、この5月、総理自らが設定したデッドラインにおいて、鳩山氏は連立政権の相手方である社民党との協議を打ち切り、また沖縄県と事前協議することもなく、辺野古回帰の「日米共同声明」に合意してしまったのである。

 「日米共同声明」そして福島大臣の罷免直後から、20%近くに下落していた内閣支持率は10%台に下がった。内閣支持率調査そのものは、大マスコミの自作自演による世論誘導であり、信頼できないが、少なくとも鳩山内閣の支持率が10%台に落ちたのは、間違いなく普天間問題での鳩山総理の裏切りによるものといえる。



 まじかに迫った参議院議員選挙の候補者から、これでは到底参議院議員選が戦えないと激しく党内で反発される。

 また野党が参院で出す問責決議案に民主党議員も同調し、問責決議案が通過する可能性が出てきた。そんなこともあって、さすがのノー天気な鳩山氏も、辞任を切り出さざるを得なくなったのである。

 鳩山総理の辞任直後に、菅直人副大臣が立候補を表明し、前原、岡田、野田らの現在の閣僚ないし政務三役級の政治家がすぐさま菅支持を表明した。

 新聞報道的にいえば、菅氏は代表選で、前原誠司国土交通相、岡田克也外相、野田佳彦財務副大臣ら「非小沢系」の実力者の支持をいち早く取り付け、勝利の流れを決定的にしたのである。

 さらに、菅氏は内閣や党役員人事でも、自分をいち早く支持したひとたちを要職で起用する可能性が高い。

 しかし、いうまでもないことだが、前原、岡田、野田の各氏は、普天間基地の辺野古移設をはじめから容認してきた政治家であり、県外移設、海外移設などはじめから眼中になかった政治家である。そのなかには、辺野古周辺の土地を買いあさっていた政治家もいるはずだ。

◆青山貞一講演要旨 D政治家と利権 - 土地

◆辺野古を買っていた「政界9人リスト」が問題化!日刊ゲンダイ

 菅氏は、今回、当初から小沢色一掃を明言し、民主党の代表選挙当選後も、小沢色排除をことある度に言明した。

 この1、2年、異常なまでに反小沢のスタンスをとり小沢氏をことあるたびにバッシング、攻撃してきた大メディアは、菅氏のそのような小沢一郎前幹事長の影響力排除の姿勢を歓迎した記事を次々に配信している。

 そのなかで、参議院議員選挙を控えた政治家もこの間の菅氏の対応を歓迎しているようだ。

 しかし、果たして、そんなことでこの先、民主党はどうにかなるのか? 

 民主党は展望が開けるのであろうか?

 とりわけ鳩山総理が辞任するきっかけとなった普天間基地代替施設問題について、菅直人首相は鳩山由紀夫前首相から外交課題として、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題と「東アジア共同体」構想の具体化を引き継ぐとしている。

普天間合意堅持で一致=菅新首相、米大統領と初電話会談

 菅直人新首相は6日未明、首相官邸で、首相指名後初めてオバマ米大統領と電話で約15分間会談した。両首脳は、日米同盟の一層の深化・発展に取り組むことを確認。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題について、同県名護市辺野古周辺を移設先とした日米共同声明を堅持することで一致した。

 会談で大統領は、菅氏に祝意を伝達した上で、「これからも対等なパートナーシップで協力を強化することが必要だ」と表明。菅氏は「社会活動家としての大統領の経歴は、自分が市民活動から政治活動を始めたことと共通点を感じる。

 カナダで話し合うことを楽しみにしている」と応じ、25日からカナダで開催される主要国首脳会議(サミット)の際の日米首脳会談を調整することで一致した。

 一方、普天間問題で大統領が「日米合意を基に対応していこう」と呼び掛けたのに対し、菅氏も「合意を踏まえ、しっかりと取り組んでいく」と述べ、共同声明に沿って協力していくことを申し合わせた。 

 電話会談では、韓国哨戒艦沈没事件で日米韓3カ国が連携して対処することで一致。イランの核問題に関する懸念を共有し、国連安全保障理事会で協力していくことで合意した。

時事通信(2010/06/06-01:53)

 だが普天間問題では「県内移設」を明記した日米合意に沖縄側の理解がまったく得られない。今年秋には沖縄県知事選挙があり、急先鋒の宜野湾市長の伊波氏が知事に立候補することがほぼ間違いない。

 おそらく伊波氏が立候補すれば当選することは間違いないから、法的手続、行政手続的にも辺野古立地はとん挫せざるを得ない。また当然のこととして、この問題については党内の意見対立も根強い。

 日米合意を踏襲するとして菅氏は首相となったものの、このようなやり方は、沖縄問題、外交防衛問題を先送りしただけで、何ら本質的な問題解決にはならないばかりか、自民党がしてきたこととあまり変わらず、沖縄県民をさらに翻弄することになりかねない。

 いうまでもなく前原、岡田、野田の各氏らが菅氏を支持したのは、もともと理念や政策が一致するからではなく、反小沢のスタンスを取り続けてきた彼らが、次期首相に反小沢色を強めさせるためにすぎない。

 理念も政策の合意、調整もないまま、その神輿に安易に乗った菅氏は、結局、一番重要な外交・安保政策、とりわけ普天間基地代替施設問題で日米共同声明を踏襲せざるをえなくなってしまったのである。

 そもそも市民派出身の菅氏が、沖縄県民よりも米国の意向、それもさまざま利権にまみれた意向を優先するという政策判断をしているとすれば、そのことがまずもって問題である!

 菅氏自身、9年前には以下のブログにある発言をしていたが、それも変節したのだろうか?

★菅直人: 沖縄の海兵隊 (2001年8月19日)